☆梅雨の月参り
さて、六月。梅雨の季節で雨がシトシト、そういう毎日。
今日は土曜で学校は休み、生徒会長宅に来ている毎度の面々。
シロエ 「梅雨ですねえ…。雨が続くと、ウンザリしますよ」
サム 「だよなあ、何処かに行くって話が特に無くてもよ」
キース 「月参りも梅雨は大変なんだ。特に俺はな」
一同 「「「へ?」」」
どの辺が、と首を傾げる御一同様。
スウェナ「月参りなんて、いつでも同じコースでしょ?」
シロエ 「夏よりマシだと思いますけど、違うんですか?」
キース 「お前たち、俺の条件が分かっているのか?」
マツカ 「副住職ですよね、元老寺の」
他にも何かありましたっけ、とマツカ君の問い。
マツカ 「ぼくには思い付きませんけど、プロの事情が?」
シロエ 「あー、そういうのはあるかもですね」
アドス和尚とは違いますから、とシロエ君。
シロエ 「梅雨の季節はノルマが増えるとか、そんな感じで」
ジョミー「ありそうだよねえ、アドス和尚がサボリでさ」
雨だと車を出すのも面倒そうだし、とジョミー君の推測。
ジョミー「今日はお前が行ってこいとか、ドタキャン並みに」
サム 「うわー、当日になって丸投げかよ!」
それはキツイぜ、とサム君、ガクブル。
サム 「予定は全部狂っちまうし、マジでキツそう」
シロエ 「悲惨ですよね、心の準備も無いでしょうから」
キース 「もちろん、それもあるんだが…。それ以上にだ…」
俺には悲しい事情があって…、と副住職。
キース 「いいか、坊主の月参りには何が要るんだ?」
シロエ 「お経本でしょうか?」
キース 「もっと切実なアイテムなんだが」
その辺の道路で気付かないか、という質問。
シロエ 「道路って…。そういえば騒ぎがありましたっけ?」
スウェナ「あらっ、お坊さんが事故でも起こしたの?」
シロエ 「そうじゃなくって、ツイッターですよ」
一同 「「「えっ?」」」
ツイッターで何が、と誰もがキョトン。
お坊さんが炎上しましたか?
2019/06/01 (Sat)
☆呟いても安全
梅雨の季節で雨がシトシト、月参りで困るらしいのが副住職。
切実に必要なアイテムがどうとか、道路で気付くという話で。
ジョミー「ツイッターで騒ぎって…。お坊さんが炎上とか?」
サム 「俺は知らねえけど、ありそうだよなあ…」
スウェナ「生臭坊主ってよく言うものねえ、失言かしら?」
余計なことを呟いたとか…、とスウェナちゃん。
スウェナ「パルテノンのお茶屋で遊んでますとか、現場から」
キース 「いや、その程度なら、あるあるだ」
一同 「「「あるある?」」」
キース 「普通にあるから、特に炎上することはない」
一般人が気付いていないだけだ、と恐ろしすぎる発言が。
シロエ 「そ、そうなんですか!?」
キース 「ああ。坊主同士なら、誰が坊主か分かるんだが…」
ブルー 「素人さんには、全く判別不可能だしねえ…」
自分で坊主と言わない限りは、まずバレない、と生徒会長も。
ブルー 「だから何処からツイートしたって、安全なんだよ」
一同 「「「うーん…」」」
それはそうかも、と誰もが納得。
サム 「そうかあ、言わなきゃ安全なのな…」
マツカ 「でもですね…。騒ぎになったというのは何です?」
シロエ 「お坊さんが被害者だったんですよ」
一同 「「「被害者?」」」
いったい何が、と一同、キョトン。
ジョミー「追突されたとか、そんな感じで?」
スウェナ「煽り運転ってこともあるわよ」
シロエ 「いえ、反則切符を切られたんですけど…」
サム 「それの、どの辺が被害者なんだよ?」
道交法違反は犯罪なんだぜ、とサム君の指摘。
サム 「加害者までは行ってねえけど…」
シロエ 「その件については、被害者なんです」
後に取り下げられましたから、とシロエ君。
シロエ 「ツイッターで騒ぎになったお蔭で、謝罪つきで」
ジョミー「謝罪って…。まさか警察が謝ったわけ?」
シロエ 「そうなんですよね、全面的に」
誤認逮捕に近いものが…、と言ってますけど。
反則切符で?
2019/06/02 (Sun)
☆多発ゲリラ的に
梅雨はシトシトと雨が降る季節、月参りで困るらしい副住職。
切実に必要なアイテムがあるとか、そこから道路の話へと。
サム 「誤認逮捕って、穏やかじゃねえよな…」
シロエ 「逮捕されたっていうわけじゃないですけれど…」
あくまで反則切符ですしね、とシロエ君。
シロエ 「でも、そのくらい騒がれたんですよ。全国区で」
スウェナ「リツイートの嵐だったのかしら?」
シロエ 「いえ、この場合はハッシュタグです」
一同 「「「ハッシュタグ?」」」
拡散希望というヤツだろうか、と誰の頭にも浮かんだモノ。
ジョミー「えっとさ…。拡散希望だとリツイートだよ?」
マツカ 「そうなりますよね。そのままでも、引用でも」
サム 「でもってバズるって展開だよなあ、リツイート…」
何万回もリツイートされて、とサム君が言うのがバズった人。
サム 「反則切符を切られた話が、バズったのかよ?」
シロエ 「違いますってば、ハッシュタグの方ですよ」
ジョミー「検索ワードのトレンド入りとか?」
シロエ 「それに近いんですけどね…。ちょっと違います」
ただのトレンドではないんですよ、とシロエ君が立てる親指。
シロエ 「もっとアクティブに、多発ゲリラ的に」
一同 「「「はあ?」」」
なんのこっちゃ、と誰もが傾げる首。
サム 「多発ゲリラって、どんなんだよ?」
マツカ 「アクティブというのも分かりませんよね…」
シロエ 「全員参加型が近いかもです、あえて言うなら」
一同 「「「全員参加?」」」
いったいどんな現象なんだ、と謎としか思えない言葉。
ジョミー「ハッシュタグで全員参加って…。つける時の話?」
シロエ 「そうです、そうです! つけてツイートで!」
スウェナ「アクティブってことは、何かしたってことかしら」
シロエ 「ええ。その名も『僧衣でできるもん』でした!」
一同 「「「僧衣でできるもん…?」」」
何をやったというのだろうか、と一同、ポカーン。
僧衣でですか?
2019/06/03 (Mon)
☆反則切符の理由
シトシトと雨が降り続くシーズン、月参りで困るのが副住職。
切実に必要なアイテムがあるそうですけど、今は道路の話。
サム 「僧衣でできるもん、っていうことはよ…」
ジョミー「アレを着て何かをやるってこと?」
メチャクチャ動きにくいんだけど、とジョミー君が顰める顔。
ジョミー「棚経で自転車に乗る時だって、苦労するんだよ!」
キース 「普段に練習していないからだ、お前の場合は!」
サム 「だよなあ、お盆の前の特訓だけでも違うぜ、それ」
俺は普通に乗れるもんな、と頷くサム君。
サム 「アドス和尚についていくには、必須のスキルだぜ」
スウェナ「容赦なくスクーターだものねえ、アドス和尚は」
ジョミー「ぼくは絶対、そっちは無理!」
今年もキースのお供でいいや、とブツブツブツ。
ジョミー「それはともかく、僧衣でできるって、何を…?」
シロエ 「半端ない芸ってヤツですよ」
一同 「「「芸?」」」
どういう意味だ、と顔を見合わせる御一同様。
マツカ 「あのですね…。反則切符を切られたんですよね?」
シロエ 「そうですよ?」
マツカ 「どうして芸の方へ行くんですか、反則切符から」
シロエ 「事情が事情だったからです」
その人は運転していただけです、とシロエ君の説明が。
シロエ 「スピード違反も、信号無視もしていないんですよ」
マツカ 「それなのに反則切符ですか?」
シロエ 「ええ。僧衣で運転していたから、と」
一同 「「「へ?」」」
それは普通のことなのでは、と一同、ビックリ仰天。
ジョミー「僧衣で運転って…。それってアルテメシアだと…」
スウェナ「当たり前よね、あちこちで走りまくっているわよ」
お寺が多い町だものね、とスウェナちゃん。
スウェナ「違反じゃないと思うけど…」
サム 「だよなあ、捕まったって話も聞かねえし…」
シロエ 「そこなんですよ、騒ぎの発端になったのは」
反則切符を切られた話が…、と言ってますけど。
どうなったと?
2019/06/04 (Tue)
☆僧衣でできるもん
雨がシトシト続くのが梅雨、月参りで困るらしいのが副住職。
切実に必要なアイテムがどうのと、道路で気付くという話で。
サム 「反則切符を切られたトコから、騒ぎなのかよ?」
シロエ 「そうです、有り得ないという話になりまして…」
アルテメシアでなくても普通ですから、とシロエ君。
シロエ 「僧衣で運転するのは違反、と言われてもですね…」
スウェナ「誰も捕まっていないわよ、此処じゃ」
シロエ 「ええ。ですから本人も納得がいかなくて…」
ツイートしたというわけです、と説明が。
シロエ 「そしたら全国で即反応で、ハッシュタグですよ」
マツカ 「僧衣でできるもん、っていうヤツですか?」
シロエ 「はい。それをつけてツイートしたのが芸です」
一同 「「「芸…」」」
半端ない芸というヤツか、と誰もが生唾をゴクリ。
ジョミー「あのさあ…。それって、どんな芸だったわけ?」
キース 「自転車でも文句なお前には絶対無理なヤツだ」
シロエ 「あっ、キース先輩も見てたんですね?」
ブルー 「ぼくも見てたよ、流行ってたからね」
みんな、なかなか芸達者だよ、と銀青様も。
ブルー 「一番凄いと思ったのはさ、バク転かな」
一同 「「「バク転?」」」
シロエ 「そうなんですよ、僧衣でバク転です」
一同 「「「ええっ!?」」」
僧衣でバク転が出来るのか、と一同、仰天。
サム 「マジかよ、アレでバク転なのかよ?」
シロエ 「正真正銘バク転でしたね、それも本堂で」
ブルー 「あれは本当に見事だったね、場所のチョイスも」
御本尊様の前でバク転だから、と銀青様。
ブルー 「リツイート数も一番多かったような…」
シロエ 「あれだけ凄いと、そうなりますよね」
他にも色々ありましたよ、とシロエ君の笑顔。
シロエ 「キース先輩には、あの手の芸は?」
キース 「あっても披露すると思うか?」
一同 「「「あー…」」」
アドス和尚の目があるしね、と頷く面々。
しかし、芸とは…。
2019/06/05 (Wed)
☆バク転できそうな人
梅雨の季節は雨がシトシト、月参りで困っているのが副住職。
切実に必要なアイテムがあるとか、道路で気付くそうでして。
シロエ 「じゃあ、キース先輩にも、ああいう芸はあると?」
キース 「さあな、試してみたことはないが…」
俺もバク転できるかもな、と副住職。
シロエ 「マジですか!?」
キース 「俺を誰だと思っているんだ、柔道部のくせに」
シロエ 「あー…。バク転くらいは楽勝ですよね、普通なら」
僧衣はともかく…、とシロエ君、納得。
シロエ 「先輩なら他にも出来るかもですね、僧衣で色々」
サム 「かもなあ…。んで、その話はどうなったんだよ?」
ハッシュタグをつけた騒ぎの後は、とサム君の問い。
サム 「謝罪があって取り下げはマジかよ、反則切符」
シロエ 「ええ。僧衣でも運転できると警察が認めました」
一同 「「「おおー…」」」
ツイートが警察を動かしたのか、と誰もが感動。
スウェナ「凄いわねえ…。バカッターも馬鹿に出来ないわね」
シロエ 「そうなんですよ、普段はバカッターですけどね」
ジョミー「バイトテロとかの温床だしね…」
同じ炎上でもいい話だよ、とジョミー君。
ジョミー「お坊さんを少し見直したかな」
サム 「おっ、修行する気になったのかよ?」
ジョミー「それは別! ところでキースの月参りはさ…」
その話と何か関係あるわけ、と質問が。
ジョミー「道路で気付くって言っていたけど、運転の話?」
キース 「まあな。俺にとっては夢物語というわけで…」
一同 「「「夢物語?」」」
何が、と首を傾げる御一同様。
シロエ 「あのう…。僧衣でバク転、出来るんですよね?」
キース 「恐らくな」
シロエ 「だったら、何が夢物語だと?」
夢というのは何でしょうか、とシロエ君、不思議そうな顔。
シロエ 「他に決めたい技があるとか?」
キース 「そっちではなくて、運転の方だ」
まずはそっちが問題なんだ、と言ってますけど。
運転って…?
2019/06/06 (Thu)
☆副住職のマイカー
雨がシトシトな梅雨のシーズン、月参りで困るという副住職。
切実に必要なアイテムがどうとか、道路を見れば気付くとか。
シロエ 「運転が問題って…。さっきの僧衣の話でしょうか」
ジョミー「僧衣で運転、かまわないことになったんだよね?」
反則切符の件は取り下げなんだから、とジョミー君。
ジョミー「だったら、何が夢物語になるってわけ?」
キース 「俺にとっての夢物語だと言った筈だぞ」
シロエ 「えっと…。僧衣でキメたい技とは違うんですね?」
キース 「そのハッシュタグの原因は、そもそも何なんだ?」
そこをよくよく考えてみろ、という指摘。
キース 「それで気付くと思うんだがな」
スウェナ「僧衣で車を運転してたら、反則切符なのよね?」
サム 「普通に運転してるぜ、誰でも」
シロエ 「ええ。そのせいで炎上だったんですしね」
自分も運転している人たちが決起しました、とシロエ君。
シロエ 「いくらなんでも酷すぎる、ということですよ」
ジョミー「キースは運転してても、元から捕まらないよ?」
アルテメシアで走るんだから、とジョミー君が傾げる首。
ジョミー「アドス和尚も、普段、車で走ってるよね」
キース 「まだ気付かんのか、お前たちは!」
切実に必要だとまで言ったのに…、と副住職の眉間に皺が。
キース 「俺の車を誰か見たのか、一度でも!?」
一同 「「「えっ?」」」
キース 「だから車だ、俺のマイカーというヤツだ!」
見たというヤツは手を挙げろ、とグルリ見回す部屋の中。
キース 「軽自動車でも何でもいいから、俺の車を!」
シロエ 「キース先輩、実は車を持ってましたか?」
持ってるんなら乗ればいいのに、とシロエ君。
シロエ 「学校はマイカー禁止でしょうけど、此処とかは…」
ジョミー「来ればいいよね、駐車場も広いし」
サム 「俺たちに合わせる必要はねえぜ」
キース 「わざとか、それは!」
誰が好き好んでバスで来るか、と吊り上げる眉。
なら、車は…?
2019/06/07 (Fri)
☆車なら出します
梅雨のシーズンは雨がシトシト、月参りで困るらしい副住職。
切実に必要なアイテムがあるそうで、道路で気付く話から…。
シロエ 「でもですね…。好き好んでバスで来るんでしょう」
スウェナ「そうよね、私たちは車で来られないから…」
ジョミー「マツカの場合は、その気になったら出来るけどさ」
運転手つきの高級車でさ、とジョミー君。
サム 「それをしねえのが、マツカのいい所だぜ」
マツカ 「あの…。よろしかったら、車、回しましょうか?」
梅雨の間は送迎用に…、と御曹司の申し出。
マツカ 「大型車は目立って嫌だと言うなら、普通車でも」
サム 「あー! 普通車でも五人はいけるよな!」
マツカ 「はい。運転手さん以外に、五人乗れます」
ぼくが助手席に座りますよ、と御曹司の笑顔。
マツカ 「それならキースも、自分の車で来られますしね」
一同 「「「イイネ!」」」
次からマツカ君にお願いしよう、と誰もが乗り気。
スウェナ「車さえあれば、土砂降りになっても安心だわよ」
シロエ 「ちょっとした荷物も乗せて貰えますしね」
ジョミー「うん、玄関先まで送迎だよね!」
そしてキースも元老寺から自分の車…、とジョミー君の笑顔。
ジョミー「これで文句は無いと思うよ、キースもさ!」
サム 「だよなあ、それこそ法衣で走って来られるぜ」
バスに乗るのはアレだけどよ…、とサム君も。
サム 「車だったら、別に普通の風景だしよ…」
シロエ 「ええ、アルテメシアじゃ日常ですよ」
次から自分の車でどうぞ、とシロエ君。
シロエ 「なにしろ学校じゃないですから」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 駐車場に停めていいからね!」
遠慮なくどうぞ、という声が上がってますけど。
キース 「お前たち、本当にわざとだろうが!」
ジョミー「えっ、何が?」
キース 「俺の車の話なんだが!」
シロエ 「ですから、来ればいいでしょう?」
ぼくたちも車にしますから、とシロエ君。
次回から、送迎つき…?
2019/06/08 (Sat)
☆見てのお楽しみ
雨がシトシトな梅雨のシーズン、月参りで困るという副住職。
切実に必要なアイテムがどうとか、そこからズレて車の話に。
シロエ 「マツカ先輩、車、お願い出来るんですよね?」
マツカ 「もちろんです。明日からお迎えに回りますよ」
一同 「「「やったー!!!」」」
明日は日曜、予報は雨なだけに誰もが歓声。
ジョミー「玄関先まで送迎かぁ…。嬉しいよね!」
サム 「マジで助かるよな、昨今の雨は半端ねえしよ」
スウェナ「降る時は、思い切り土砂降りだったりするものね」
シロエ 「そうなんですよね、特に梅雨末期が怖いですよ」
被害が出ないといいんですけど、とシロエ君。
シロエ 「下手をすると、お坊さんの出番になりますから」
一同 「「「あー…」」」
昨今の豪雨は恐ろしいから、と頷く御一同様。
マツカ 「災害回避も、キースに祈って貰いましょう」
サム 「だよなあ、そのための毎日のお勤めだしよ」
シロエ 「車で来られるようになる分、心をこめてですね…」
朝のお勤めをよろしくお願いします、という注文。
シロエ 「バスより、ゆっくり出られるでしょうし」
サム 「うんうん、しっかり祈ってくれよな」
キース 「おい、お前たち…」
本当の本当に、わざとなのか、と副住職の低い声。
ジョミー「えっ、わざとって…。何が?」
キース 「だから、車だ! 俺の車というヤツをだな…」
いったい誰が見たと言うんだ、と聞いたようなセリフ再び。
シロエ 「見てませんってば、ぼくたちは」
サム 「乗って来ねえものは見られねえよな」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 明日のお楽しみーっ!」
駐車場まで見に行こうね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
ぶるぅ 「どんな車かな、カッコいいのが来るといいよね!」
サム 「いやいや、そこは軽なんじゃねえの?」
ジョミー「アドス和尚より、いい車ってことはないよね」
キース 「あのな…」
ちゃんと話を聞いているのか、と言ってますけど。
どの辺が…?
2019/06/09 (Sun)
☆聞いていない話
梅雨のシーズンは雨がシトシト、月参りで困るらしい副住職。
切実に必要なアイテムがどうのと、そこから今は車の話に。
シロエ 「話だったら、ちゃんと聞いてると思いますけど」
キース 「とてもそうとは思えないが?」
俺の車の話というのが…、と副住職の渋面。
キース 「車があったら、今の話にはなっていないぞ」
一同 「「「へ?」」」
キース 「梅雨の季節は、月参りで困ると言った筈だが」
シロエ 「ええ、その話は聞きました」
それで道路の話ですよね、と応じたシロエ君。
シロエ 「道路でお坊さんと言ったら、例のヤツですよ」
サム 「さっきの「僧衣でできるもん」だよな?」
シロエ 「そうです、そうです! 運転ですから!」
スウェナ「この国って、ホントに広かったのねえ…」
僧衣で運転は普通だと思っていたのにね、という声が。
スウェナ「梅雨でなくても、アルテメシアじゃ日常だわよ」
シロエ 「キース先輩だって、もちろん運転するでしょう?」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 明日は衣で来てくれていいよ!」
みんな衣は慣れてるもんね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
ぶるぅ 「法要の時は衣で来るから、お馴染みだも~ん!」
一同 「「「シーッ!!!」」」
今、その言葉は言わなくていい、と皆が唇に指を。
ぶるぅ 「んとんと…。なんで?」
シロエ 「とても危険だからですよ! 今の台詞は」
サム 「だよなあ、反応されたら怖いぜ」
特に誰とは言わねえけどよ、とサム君、ブルブル。
サム 「だからキースも、衣で来るのはやめとけよな」
キース 「それ以前の話をしているんだが!」
さっきからずっと…、とブチ切れそうな副住職。
キース 「衣で運転して来るも何も、俺にはどうにも…!」
シロエ 「出来ないっていうのは分かりますけどね、アレ…」
ジョミー「手に負えないしね、自己中でさ」
キース 「その話ではないと…!」
何度言ったら分かるんだ、と握り締める拳。
違うんですかねえ…?
2019/06/10 (Mon)
☆必要なアイテム
雨がシトシトな梅雨のシーズン、月参りで困るという副住職。
切実に必要なアイテムがどうとか、そこから車の話ですけど。
キース 「あの馬鹿野郎の話ではなくて、その前にだな!」
一同 「「「シーッ!!!」」」
その名を出すな、と誰もが唇を指で押さえて警告。
キース 「す、すまん…。しかし本当に、俺の話を…」
シロエ 「聞いてますってば、ですから明日は衣でですね…」
サム 「来てもいいって、ぶるぅも言ってるじゃねえか」
スウェナ「食べこぼしたって安心よ? ぶるぅがいるもの」
お菓子も料理も、ドンとお任せ、とスウェナちゃん。
スウェナ「それこそケチャップをぶちまけたって、大丈夫!」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ しみ抜きも任せてね!」
サイオンがあるから即日仕上げ、と元気一杯な声が。
ぶるぅ 「アドス和尚に叱られる前に、元通りだよ!」
シロエ 「良かったですねえ、明日は衣で来て下さいよ」
キース 「それが出来たら、月参りごときで誰も困らん!」
俺の話をどう聞いたんだ、と副住職が吊り上げる眉。
キース 「切実に必要なアイテムが無い、と言ったんだが!」
シロエ 「えーっと…。ガソリンが切れましたか?」
サム 「あー…。でもって金欠で、入れられねえ、と…」
それはキツイぜ、と頷くサム君。
サム 「アドス和尚じゃ、前借りとかは無理そうだしよ…」
ジョミー「出来ても、利息が半端ないよね…」
シロエ 「闇金も真っ青な感じでしょうね」
そうなると車は走りませんね、とシロエ君、納得。
シロエ 「確かに話が切実ですよ、ガス欠だなんて」
スウェナ「雨の日こそ、車の出番だわよねえ…」
私たちも明日から車で送迎なんだから、とスウェナちゃん。
スウェナ「そうだわ、マツカに借りなさいよ、ガソリン代!」
シロエ 「いいですね!」
マツカ 「お貸ししますよ、いくらでしょう?」
キース 「だからだな…!」
本当に話を聞いていないな、と怒ってますけど。
ガス欠ですよね?
2019/06/11 (Tue)
☆ガス欠もお任せ
梅雨のシーズンは雨がシトシト、月参りで困るらしい副住職。
切実に必要なアイテムがどうとか、どうやらガソリンな模様。
シロエ 「話だったら聞いていますよ、アイテムが無いと」
サム 「だよなあ、でもってガス欠なんだろ?」
スウェナ「ガソリンが無いと、車は走らないものねえ…」
マツカ 「それは確かに切実ですから、ガソリン代なら…」
お貸ししますから入れて下さい、と御曹司の申し出。
マツカ 「返せるアテが無いというなら、差し上げますけど」
ジョミー「流石はマツカ! ガソリン代くらい、楽勝だしね」
マツカ 「いえ、キースにもプライドがあるでしょうから…」
シロエ 「どうするんですか?」
まさか現物支給だとか…、とシロエ君の疑問。
シロエ 「でもって、キース先輩が家で自分で入れるとか?」
サム 「おいおい、それは危ねえんじゃねえの?」
ガソリンなんだぜ、とサム君が震わせる肩。
サム 「いくら梅雨でも、引火しちまったらえらいことに」
一同 「「「うわー…」」」
火事になるか、ドカンと爆発するか…、と誰もがガクブル。
シロエ 「マツカ先輩、現物支給は危険ですよ!」
マツカ 「分かってますよ。ですから、ガソリンスタンドへ」
一同 「「「へ?」」」
マツカ 「父の会社の直営の所がありますからね」
其処へ行って入れて貰えれば…、と御曹司の笑み。
マツカ 「店員さんに言っておきますから、タダになります」
サム 「おー、太っ腹! 洗車もつくとか?」
マツカ 「ご希望だったら、そちらの方もお付けしますよ」
どうぞ、いつでも行って下さい、とマツカ君、ニッコリ。
マツカ 「それならキースも、遠慮しないで済みますし…」
シロエ 「良かったですねえ、キース先輩! もう早速に!」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ガソリン入れて、明日は車だね!」
キース 「どうしてそういう話になるんだ、お前たちは…!」
わざとだろうが、と言ってますけど。
ガス欠は解決しそうですよね?
2019/06/12 (Wed)
☆車が無いんです
雨がシトシトな梅雨のシーズン、月参りで困るという副住職。
切実に必要なアイテムの方は、ガソリンみたいですけれど…。
シロエ 「わざとも何も、ぼくたちは心配してるんですよ!」
サム 「そうだぜ、マツカはガソリンの手配まで…」
キース 「だから、どうしてそうなるんだ! 車の話に!」
俺の車は存在しない、と副住職、ブチ切れ。
キース 「俺が持っているのは自転車だけだ!」
一同 「「「えっ?」」」
愕然とする御一同様。
サム 「マジかよ、軽自動車も持ってねえのかよ?」
キース 「前から何度も話していると思うんだがな…」
スクーターの許可が出ない話を…、と副住職の苦い顔。
キース 「棚経を自転車でやってる時点で、気付いてくれ!」
シロエ 「でもですね…。切実に必要なアイテムって…?」
キース 「そいつが車というヤツなんだ!」
梅雨の季節の月参りには欠かせないぞ、とブツブツブツ。
キース 「檀家さんの家には停められなくても、近所まで」
ブルー 「あー…。そうだね、そういう人は多いね」
シロエ 「そうなんですか?」
ブルー 「うん。法衣は濡れると厄介だからさ、色々と」
乾きにくいし、洗濯だって大変だし…、と銀青様。
ブルー 「なるほど、キースも車が欲しい、と」
キース 「親父に言うだけ無駄とは分かっているんだが…」
それでも欲しいと思うんだ、とフウと溜息。
キース 「しかし買おうにも、先立つものが…」
ジョミー「軽自動車なら安いんじゃあ?」
キース 「俺は小遣いしか貰っていないのに、どうしろと?」
一同 「「「あー…」」」
マツカ君とは違うもんね、と誰もが遠い目に。
サム 「アドス和尚だと、小遣いだって少なそうだよな…」
スウェナ「マツカのお小遣いとは、二桁くらい違いそうよね」
キース 「恐らく、そんな所だろうな」
ジョミー「貯金は?」
キース 「あると思うのか?」
あったら使っていると思うが…、という指摘。
それは確かに…。
2019/06/13 (Thu)
☆法衣が濡れると
梅雨の季節は雨がシトシト、月参りに行くのも大変だそうで。
キース君が欲しいアイテムは車、けれど資金が全く無い悲劇。
シロエ 「貯金するにも、バイトもしていませんからね…」
キース 「ああ。小遣いだけでは無理がありすぎるんだ」
車を買えるような金は貯まらん、と副住職の嘆き節。
キース 「副住職とは名前ばかりで、給料が無いしな…」
サム 「高校生なのが裏目に出るよな、その辺はよ…」
スウェナ「学費は全くかからないのに、ケチな話よねえ…」
ジョミー「特別生はタダだもんねえ、ウチの学校」
アドス和尚の懐は痛まないのにさ、とジョミー君も。
ジョミー「その分、お小遣いを値上げしてくれたって…」
キース 「俺も言ってはみたんだが…。愚か者めが、と」
一喝されて終わりだった、とキース君、肩をガックリと。
キース 「それに法衣が濡れる話も、親父に言わせると…」
シロエ 「どうなるんですか?」
キース 「洗濯するのはおふくろだろう、とバッサリだった」
一同 「「「あー…」」」
それは確かに、と誰もが納得。洗濯はイライザさんのお仕事。
ジョミー「そう言われたら、どうしようもないよね」
シロエ 「あれっ? でもですね、それならキース先輩…」
悩む必要はないのでは、とシロエ君の問い。
シロエ 「濡れた法衣は、イライザさんが洗うんでしょう?」
キース 「その通りだが?」
シロエ 「だったら先輩は、困りはしないと思いますけど」
イライザさんに丸投げですし、と鋭い指摘が。
シロエ 「ずぶ濡れだろうが、何も問題ないですよ?」
キース 「いや、檀家さんに対して御迷惑なんだ、濡れ鼠は」
そんなので家に上がられてみろ、と副住職。
キース 「玄関から雫がポタポタと落ちて、仏壇の前まで…」
サム 「濡れるってわけかよ、通ったトコが」
キース 「座布団も、中までグッショリだな」
一同 「「「うわー…」」」
それは嫌かも、と一同、ドン引き。
檀家さんだって嫌ですよね?
2019/06/14 (Fri)
☆切実に欲しいもの
雨がシトシトな梅雨のシーズン、月参りで困っている副住職。
濡れ鼠で檀家さんの家に行ったら、御迷惑がかかるのだとか。
シロエ 「座布団がグッショリは最悪ですよね、ソレ…」
スウェナ「今の季節は乾きにくいし、大変だわよ」
サム 「布団乾燥機にかけるにしたって、なんだかなあ…」
思いっ切り余計な手間ってヤツで…、とサム君も唖然。
サム 「車が無いとそうなるのかよ、月参りって?」
キース 「いや、それではあんまりすぎるしな…」
シロエ 「何か対策を講じるんですか?」
キース 「とても大変だが、傘に加えて雨合羽だな」
裾までカバーできるヤツを…、と副住職。
キース 「それなら濡れんし、御迷惑はかからないんだが…」
スウェナ「だったらいいんじゃないかしら? その方向で」
キース 「しかし、脱ぎ着が大変なんだ!」
檀家さんの家に着く度、脱いで、また着て、とブツブツブツ。
キース 「その点、車があった場合は、サッと拭くだけで」
ジョミー「済むってわけだね、タオルとかで?」
キース 「そういうことだ。だから切実に車が欲しい!」
車さえあったら楽になるのに…、と仰ぐ天井。
キース 「なのに先立つものが無いから、どうにもならん!」
シロエ 「宝くじとかはどうでしょう?」
キース 「当たるより前に、余計な金が飛ぶと思うが」
一同 「「「あー…」」」
当たらなかったら、パアになるのが宝くじ。
シロエ 「厄介ですねえ、車は安くはないですし…」
マツカ 「お譲りするのは簡単ですけど、嫌ですよね?」
キース 「俺にもプライドがあるからな…」
正当な稼ぎで手に入れたいんだ、と副住職の溜息。
キース 「せめて割のいいバイトでもあれば、助かるんだが」
ブルー 「坊主の場合は、稼ぎのいいバイトは限られるしね」
シロエ 「いわゆる葬祭センターでしょうか?」
キース 「正直、そのくらいしか思い付かんしな…」
だが、高校生では務まらないぞ、と顰める顔。
そうなんですか?
2019/06/15 (Sat)