☆憂鬱になる季節
さて、六月。雨がシトシトな梅雨のシーズン、そういう毎日。
けれど生徒会長宅なら快適、休日に集ったシャン学メンバー。
シロエ 「よく降りますねえ…。ホントに毎日、雨ばかりで」
サム 「だよなあ、たまには暑くても晴れて欲しいぜ」
キース 「まったくだ。特に俺には切実でな…」
この時期になると憂鬱になる、と副住職の深い溜息。
ジョミー「憂鬱って…。何かあったっけ?」
スウェナ「ほら、例の境内猫の話じゃないかしら?」
マツカ 「そういえば、いるんでしたっけね」
境内猫ではないそうですけど…、と御曹司。
マツカ 「常連の猫がいるそうですから、泥足で来るとか…」
シロエ 「そうなると、本堂に入らなくても足跡ですね」
外の廊下や階段とかに…、とシロエ君も納得な野良猫の被害。
シロエ 「朝っぱらから拭き掃除だとか、そんなのですね?」
ジョミー「あーあ…。なんで、ぶるぅのバイトをさ…」
サム 「頼んでおかなかったんだよ?」
あの馬鹿野郎が譲ったのによ、とサム君、副住職をジロリと。
サム 「あそこで頼めば、格安で通ったんだぜ、料金」
キース 「それはそうだが、あの馬鹿がだな…」
妙な理屈で断った後に頼むのは…、と副住職。
キース 「それにだ、俺が憂鬱な理由は、足跡ではない」
シロエ 「違うんですか?」
キース 「いいか、相手は野良猫なんだぞ」
雨の日に出歩くと思うのか、と指差す窓の外の雨。
キース 「毛皮は濡れるし、泥がはねたら汚れるし…」
一同 「「「あー…」」」
泥足以前の問題だった、と誰もが気付いた野良猫の事情。
ジョミー「確かに、出歩かないよね、ソレ…」
シロエ 「それじゃ、どうして憂鬱なんです?」
卒塔婆書きには、まだ早いでしょう、とシロエ君の問い。
キース 「いや、そっちも、そろそろではあるが…」
サム 「別件かよ?」
キース 「そうだ、坊主の宿命なんだ」
卒塔婆書きも宿命ではあるが…、と溜息再び。
宿命ですか…?
2020/06/01 (Mon)
☆休めない月参り
雨がシトシトな梅雨ですけれど、生徒会長宅に集う御一同様。
快適な休日を満喫な中で、キース君だけが憂鬱な表情でして。
キース 「まったく、どうして月参りは休めないんだろうか」
一同 「「「へ?」」」
キース 「坊主の宿命だと言っただろうが、憂鬱になる、と」
雨でも行かなきゃいけないんだぞ、と副住職が眺める外の雨。
キース 「シトシト雨なら、まだマシなんだが…」
サム 「あー…。土砂降りの日でも、行くしかねえのな」
シロエ 「行く日が決まってますからねえ…」
雨天順延は無いんですね、とシロエ君の相槌。
シロエ 「でも、その辺は裁量で何とかなりそうな気が…」
ジョミー「そうだよね、あらかじめ言っておけばさ…」
スウェナ「それより、スマホで連絡じゃない?」
今日は中止、と朝イチで送ればいいじゃない、という声が。
スウェナ「その日の分は纏めて中止で、次の日に、って」
シロエ 「いいですね! 次の日も雨なら、また振り替えで」
そういう方法はどうでしょうか、とシロエ君も。
シロエ 「何かアプリが要るんだったら、作りますよ?」
一同 「「「え?」」」
シロエ 「既成のヤツより、元老寺専用アプリですってば」
便利ツールを色々つけて…、とニッコリと。
シロエ 「檀家さんの方にも、何かと都合があるでしょうし」
サム 「振り替えの日を、好きに選べるとかかよ?」
シロエ 「そうです、そうです! 空き時間を表示で」
この日の何時に、とスマホで申し込みですよ、と立てる親指。
シロエ 「キース先輩、どうですか?」
ジョミー「でもさあ、相手はキースだよ?」
ぶるぅのバイトの話の時にも、懐具合が…、とジョミー君。
ジョミー「開発費なんか、払えるとは思えないけどなあ…」
スウェナ「そうだったわねえ、赤貧なのよね」
シロエ 「そこは無料でかまいませんよ、趣味ですから」
一同 「「「イイネ!」」」
タダなら安心、と誰もがアプリに賛成。
さて、キース君は…?
2020/06/02 (Tue)
☆アプリがあれば
雨がシトシトな梅雨のシーズン、キース君を悩ませる月参り。
お坊さんの宿命だそうで、雨でも休めないのが辛い所で…。
サム 「キース、これって渡りに船だぜ、専用アプリ」
ジョミー「そうだよ、タダで作って貰えるんだしさ」
元老寺専用アプリだったら、檀家さんも安心、という声が。
ジョミー「怪しいアプリじゃないんだからさ、ご高齢でも…」
シロエ 「安心して使って頂けますよ、そこの所は」
セキュリティ対策も万全に…、とシロエ君の太鼓判。
シロエ 「そこまでやってもタダです、出血大サービスです」
サム 「うんうん、ぶるぅのバイト料金とは大違いだぜ」
ジョミー「あっちは分給だったもんねえ、設定が…」
いくら、ぶるぅが万能でも、えげつないよね、とジョミー君。
ジョミー「分単位でバイト料だなんてさ、キツすぎだよ」
ブルー 「そうかな、ぶるぅにピッタリだと思うけど…」
サム 「それ以前によ、限界まで毟ろうとしていたぜ」
シロエ 「ええ、ぼくが交渉してましたからね」
出せる限界までという意向でした、とシロエ君の証言。
シロエ 「その点、ぼくは、そんな発想、ありませんから」
スウェナ「素敵よねえ…。これは頼むしかないわよ、キース」
ジョミー「えげつない誰かとは大違いだしね」
ブルー 「…引っ掛かるけど、まあ、お得だよね」
シロエに作って貰ったら、と生徒会長も推すアプリ。
ブルー 「月参りだって、時代に合わせていいと思うよ」
サム 「どういう意味だよ?」
ブルー 「檀家さんの方でも、事情は色々あるからね」
その日になって都合が悪いということも…、と銀青様。
ブルー 「だけど、お寺に連絡するのは…」
シロエ 「なんだかハードル高そうですね」
急病だったら仕方ないですけれど…、とシロエ君も納得。
シロエ 「そういう時でも、アプリさえあれば…」
ブルー 「簡単に日時を変更できるし、便利だよね」
ぼくもアプリに賛成するよ、と銀青様の仰せ。
アプリですか…。
2020/06/03 (Wed)
☆抹香臭いアプリ
梅雨のシーズンは雨がシトシト、キース君が困るのが月参り。
たとえ土砂降りでも休めないわけで、お坊さんの宿命でして。
シロエ 「キース先輩、会長のお許しも出ましたよ、アプリ」
サム 「作って貰えよ、シロエによ」
うんと渋いのがいいんじゃねえか、とサム君の提案。
サム 「如何にも寺っていう感じでよ、抹香臭いの」
シロエ 「抹香臭いアプリですか…。どんなのでしょう?」
ジョミー「お線香とかかな、匂いは再現できないけどさ」
スウェナ「そうねえ、お線香もいいし、お経もいいかも」
連絡が完了したら、鐘がチーンというのもいいわ、との声。
サム 「あー、鐘は月参りでも叩くよな」
ブルー 「お仏壇のある家は、もれなく鐘があるからね」
チーンがいいかも、と生徒会長、いえ、銀青様。
ブルー 「それなら合成音でなくても、ウチので録れるし」
シロエ 「いいですね! 採用が決まれば、お願いします」
ぶるぅ 「オッケー! 毎日、お手入れしてるしね!」
いい音がする鐘なんだよ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」の笑顔。
ぶるぅ 「金でできてるわけじゃないけど、音は最高!」
ジョミー「そういえば、金の鐘ってあるよね」
スウェナ「アレ、いい音がするのかしら?」
ブルー 「うーん…。正直、オススメしないかな」
鐘の音は素材だけでは決まらないから、と銀青様の仰せ。
ブルー 「どちらかと言えば、職人さんの腕が大事なんだよ」
シロエ 「そうなんですか?」
ブルー 「熟練の職人さんになったら、腕前は機械以上だね」
ミクロン単位の仕事が出来るそうだよ、とニッコリと。
ブルー 「でもって、ぼくの家にある鐘は、そういう鐘!」
ぶるぅ 「職人さんのこだわりなの!」
素人さんには、分からないかもだけど、と胸を張るお子様。
ぶるぅ 「だから録るなら、いい音をね!」
一同 「「「へ?」」」
ブルー 「叩き方も大切なんだよね」
そっちにもコツがあるんだよ、という話ですけど。
本当ですか…?
2020/06/04 (Thu)
☆コツがあるそうです
雨がシトシトな梅雨のシーズン、キース君を悩ませる月参り。
土砂降りの日でも休めないわけで、お坊さんの辛い宿命で…。
シロエ 「叩き方にコツって、チーンとする鐘で、ですか?」
マツカ 「ゴーンと鳴らす大きい鐘なら、分かりますけど…」
下手に撞いたら鳴りませんよね、と御曹司が言う、お寺の鐘。
マツカ 「まるで鳴らないわけじゃないですけど、こう…」
サム 「ボコーンってぇのか、ズレた音だろ?」
マツカ 「ええ。ゴーンの代わりに、ボワーンみたいな…」
けっこう難しいですよ、アレ、と御曹司。
マツカ 「ですから、あちらの鐘なら納得なんですが…」
シロエ 「お仏壇にある鐘の方なら、誰でも鳴らせますよ?」
ジョミー「小さい子供でも、チーンとやるよね?」
スウェナ「お仏壇がある家の子供なら、鳴らせる筈よ」
お菓子ゲットには必須なんでしょ、とスウェナちゃんも。
スウェナ「食べる前にはお供えするとか、あるらしいもの」
サム 「うんうん、頂き物の美味い菓子とかよ」
ジョミー「チーンをしないと、下げられないしね…」
だから子供でも鳴らせるんだよ、とジョミー君の見解。
ジョミー「誰が叩いてもチーンと鳴るしさ、コツなんかさ…」
サム 「特にねえ筈だぜ、璃母恩院でも習ってねえし」
夏休みの子供向け修行体験コースな、と経験者なサム君。
サム 「ジョミーも習った覚えはねえだろ?」
ジョミー「無いよね、それにアドス和尚も…」
棚経の時に、何も言わないよ、と言うジョミー君も僧籍。
ジョミー「そりゃ、ぼくたちは鐘は鳴らさないけど…」
サム 「一応、心得事だしよ…」
あるんだったら教えるんじゃねえの、と言ってますけど。
ブルー 「まあ、一般的な作法としては、さほどはねえ…」
キース 「宗派によって違うというのも、特に無いしな」
シロエ 「それでもコツがあるわけですか?」
ブルー 「こだわるならね」
いい音で鳴らしたいじゃないか、と銀青様。
そうなんですか?
2020/06/05 (Fri)
☆こだわりの音色
梅雨のシーズンは雨がシトシト、キース君を困らせる月参り。
休むわけにはいかないだけに、宿命が辛いという話でして…。
シロエ 「いい音で鳴らすと、いいことがあるんですか?」
ジョミー「今日は一日ラッキーだとか、そんなヤツかな?」
ブルー 「まさか、おみくじじゃないんだからさ」
これも功徳の一つかもね、と生徒会長、いえ、銀青様。
一同 「「「功徳?」」」
ブルー 「そう。善行を積むって感じかな、うん」
音もお供え物の一種なんだし、と解説が。
ブルー 「どうせだったら、喜んで頂ける音がいいよね」
シロエ 「なるほど…。そういう理由なら分かりますけど…」
サム 「コツって何だよ、どんなのだよ?」
ブルー 「百聞は一見に如かずだからね、ぶるぅ、鐘をさ…」
ぶるぅ 「オッケー!」
取って来るね、と駆けて行ったお子様、すぐに御帰還。
ぶるぅ 「はい、持って来たよ!」
ブルー 「ありがとう。いいかい、これをこう叩くと…」
チーン、と響いた、抹香臭い音。
ブルー 「今のが普通の叩き方だね、よく見るパターンの」
サム 「んじゃ、コツってのは?」
ブルー 「こう、正面から、こんな具合に…」
チーン、と音が鳴りましたけれど。
シロエ 「えっと…? 余韻があるっていう気もしますが…」
ジョミー「分かんないよね、素人にはさ」
キース 「そうか? 俺には、素晴らしい音に聞こえたが」
一同 「「「うーん…」」」
サッパリ分からん、と猫に小判な状態の御一同様。
シロエ 「分かりませんけど、その音がいいんですね?」
ブルー 「どうせ使うなら、こっちでお願いしたいよね」
アプリには、是非、この音色を…、と銀青様のプッシュ。
ブルー 「有難い音で鳴ってこそだよ、鐘というのは」
シロエ 「じゃあ、会長が叩いてくれるんですか?」
ブルー 「喜んで協力させて貰うよ」
シロエ 「こだわりの音ですね!」
アプリの開発も頑張らないと、と燃えている人。
鐘の録音から…?
2020/06/06 (Sat)
☆毟られそうです
雨がシトシトな梅雨のシーズン、月参りで困るのがキース君。
休めないのが宿命だそうで、雨天順延は無理という話から…。
シロエ 「会長に鐘を叩いて貰って、録音からですよ」
サム 「その前にアプリの開発でねえの?」
マツカ 「いえ、有難い音が先ではないでしょうか」
元老寺専用アプリですしね、と御曹司も鐘の録音を支持。
マツカ 「せっかくですから、ブルーの名前もいいかもです」
ジョミー「あー! 銀青様だもんね、檀家さんにも有名だよ」
スウェナ「除夜の鐘で、すっかりお馴染みだものね」
緋の衣で超絶美形な高僧、とスウェナちゃん。
スウェナ「問題は、ブルーがどう言うかよねえ、それを」
シロエ 「もしかしなくても、名前の使用料ですか?」
ジョミー「チーンと1回鳴らす度にさ、課金とか…?」
一同 「「「うわー…」」」
それは怖い、と一同、ガクブル。
マツカ 「ぶるぅのバイトが、分給設定でしたしね…」
シロエ 「そうですよ。しかも、キース先輩の限界まで…」
毟れという指示が出たんでした、と交渉人を務めた人。
シロエ 「ということは、鐘の件でも同じでしょうか?」
スウェナ「だって、相手はブルーなのよ?」
叩き賃から取られそうよ、とスウェナちゃん、真剣。
スウェナ「録音にかかった時間の分まで、キッチリと!」
ジョミー「それから、チーンと鳴ったら課金で…」
シロエ 「加えて、名前の使用料ですね…」
それをキース先輩の限界まで、とシロエ君、悪い顔色。
シロエ 「マズイですよ、ソレ!」
サム 「だよなあ、月参りの件は解決してもよ…」
ジョミー「キースの財布を直撃だよねえ…」
ヤバすぎだってば、とジョミー君でなくても嫌な予感が。
シロエ 「チーンで破産は、シャレになりませんし…」
スウェナ「そうだわ、チーンを別物でどう?」
一同 「「「別物?」」」
スウェナ「チーンと鳴ったらいいんでしょ?」
ブルーに叩いて貰わなくても、と言ってますけど。
別物って…?
2020/06/07 (Sun)
☆別物なら大丈夫
梅雨のシーズンは雨がシトシト、キース君が辛いのが月参り。
雨天順延は不可能とあって、解決するのにアプリという話で。
シロエ 「スウェナ先輩、別物のチーンって、何ですか?」
スウェナ「鐘でなくてもいいでしょ、ってことよ」
マツカ 「他の誰かが叩けばいいんじゃないでしょうか?」
スウェナ「ダメよ、そうなると鐘の使用料だわよ」
此処にあるコレ、とスウェナちゃんが指差す鐘。
スウェナ「凄腕の職人さんが作った鐘なんだもの」
一同 「「「あー…」」」
当然、出そうな話ではある、と誰もが納得。
シロエ 「確かに、会長なら言い出しそうですね」
サム 「思ってなくても、思い付いたと思うぜ、今」
藪蛇ってヤツな、とサム君、お手上げのポーズ。
サム 「使用料が要るのは間違いねえよ」
ジョミー「じゃあさ、元老寺のとか、そんなのでさ…」
マツカ 「代用すれば、その問題は解決しませんか?」
スウェナ「ブルーが許すわけないじゃない!」
こだわりの鐘が存在しているのに、とスウェナちゃん。
スウェナ「鐘にこだわったら、負けだと思うわ」
シロエ 「ですが、抹香臭いアプリにするにはですね…」
マツカ 「チーンの音がピッタリだという話ですよ?」
スウェナ「だからこそ、そこで別物なのよ!」
チーンと鳴ったらいいんだから、とニッコリ。
シロエ 「あのぅ…。それはどういう音なんでしょう?」
スウェナ「そうねえ、最近はレアかもだけど…」
言葉自体は残ってるわね、と言われましても。
ジョミー「何さ、言葉が残ってるって?」
スウェナ「誰でも言うでしょ、何処の家でも」
一同 「「「はあ?」」」
スウェナ「ぶるぅは、あんまり言わないかしらね」
なにしろ出番が少ないから、と見回している部屋。
シロエ 「何の出番が少ないんです?」
スウェナ「もちろん言葉よ、滅多にチンしないでしょ?」
シロエ 「それって、まさか…」
電子レンジと言うのでは、とシロエ君、愕然。
チンですよねえ…?
2020/06/08 (Mon)
☆レンジでチーンと
雨がシトシトな梅雨のシーズン、キース君を悩ませる月参り。
土砂降りでも休めないわけでして、解決するのにアプリな案。
シロエ 「スウェナ先輩、チンには違いないですけどね…」
スウェナ「どうしたのよ?」
シロエ 「電子レンジの音というのは、流石にちょっと…」
マズイ気がします、とシロエ君、オロオロと。
シロエ 「それくらいなら、まだ鐘の使用料を払った方が…」
ブルー 「貸し賃と、それから鐘の音を使った時とだね」
チーンを1回ごとに貰うよ、と生徒会長、強烈な発言。
ブルー 「もちろん、キースが払える限界くらいの料金で!」
一同 「「「うわー…」」」
やっぱり来た、と誰もが真っ青。
サム 「やべえよ、電子レンジにしとけよ、シロエ!」
シロエ 「言われなくても、その方向で考えます!」
でも、旧式のヤツでないと…、と考え込んでいるシロエ君。
シロエ 「今どきのレンジは、チンじゃないですしね」
スウェナ「そこよ、だから簡単にはバレないわね」
ジョミー「そうかも…。ぼくの家のも、チンじゃないから」
サム 「俺の家のヤツも、チンじゃねえよな」
チンと鳴るレンジはレアでねえの、とサム君が捻る首。
サム 「まずは、そこから探さねえとよ…」
シロエ 「いえ、恐らくは、音源だけなら…」
ネットを探せば落ちていますよ、とシロエ君の閃き。
シロエ 「どうせアプリに使うんですから、それで充分かと」
ブルー 「待ちたまえ! 電子レンジな上に、ネットって…」
それじゃ有難い音がしないよ、と生徒会長、いえ、銀青様。
ブルー 「ちゃんとした鐘を使うべきだね、音源は」
シロエ 「でもって、使用料ですね?」
もう、その手には乗りませんから、とシロエ君の切り返し。
シロエ 「たった今、思い付きました! 鐘の音をですね…」
サム 「もしかして、ネットで探すのかよ?」
シロエ 「その通りです!」
アップされていない筈がないです、と言い切る人。
確かに、そうかも…。
2020/06/09 (Tue)
☆掴みも大切かも
梅雨のシーズンは雨がシトシト、キース君を困らせる月参り。
たとえ土砂降りでも雨天決行、回避するのにアプリという案。
シロエ 「なんと言っても、今どき、大抵のモノはですね…」
ジョミー「ネットを探せばある時代だよね」
スウェナ「違法なモノでも山ほどあるわね、間違いなく」
シロエ 「そうなんです。でもって、鐘の音なんかは…」
絶対、普通にある筈ですよ、とシロエ君、自信に満ちた表情。
シロエ 「お坊さんの読経の動画は、多いですから」
サム 「確かになあ…。誰が見るのか知らねえけどよ」
マツカ 「信心深いお年寄りでしょうか?」
シロエ 「どうなんでしょう、若人向けもあるようですよ」
この前、バイオリンがバズってました、と妙な発言。
一同 「「「バイオリン?」」」
シロエ 「ええ、お坊さんが弾いてたんですよ」
サム 「マジかよ、それって趣味のヤツかよ?」
シロエ 「いいえ、お寺で弾いていました」
桜で有名なあそこですよ、と名前が挙がったメジャーなお寺。
サム 「おいおい、あそこ、大本山だぜ?」
キース 「ああ。俺たちの宗派とは違うが、そうだな」
ジョミー「お寺でバイオリンって、演奏会かな?」
シロエ 「違いましたね、癒しだそうです」
音大を出た人らしくって…、とシロエ君。
シロエ 「でもって、普段は布教のために弾いているとか」
一同 「「「布教!?」」」
シロエ 「そうらしいですよ、説法の時にバイオリンです」
一同 「「「ええ…」」」
いったい、どんな説法なんだ、と誰もが目が点。
ジョミー「ちょっと想像つかないんだけど?」
スウェナ「だけど、掴みはオッケーよねえ…」
もう、それだけで興味が出るわよ、とスウェナちゃん。
スウェナ「そうだわ、アプリも鐘だけじゃなくて…」
ジョミー「掴みがあるといいかもね!」
シロエ 「……バイオリンですか?」
一同 「「「うーん…」」」
何がいいだろう、と一同、首を捻ってますけど。
掴みですか…。
2020/06/10 (Wed)
☆演奏できるなら
雨がシトシトな梅雨のシーズン、キース君が辛いのが月参り。
たとえ土砂降りでも雨天決行、それをアプリで解決な案が。
サム 「掴みは大事でも、モノが月参りだしよ…」
マツカ 「かけ離れたものは使えませんよね」
シロエ 「どうでしょう? バイオリンの例がありますから」
バイオリンで説法ですよ、とシロエ君が見たという動画の話。
シロエ 「バズっていたのは、演奏シーンだけでしたけど…」
サム 「ついでに法話がある筈なのな?」
シロエ 「そうみたいです、後から記事になっていました」
バズったもので…、とシロエ君の解説。
シロエ 「桜の季節に、そのお寺でやってるらしいですよ」
スウェナ「でもって、普段もやってるのよね、その人は?」
シロエ 「ええ。あちこちのお寺に出掛けて説法ですね」
バイオリンは欠かせないそうです、と立てる人差し指。
シロエ 「キース先輩、その手のスキルは無いんですか?」
キース 「俺!?」
シロエ 「はい。音大じゃないのは知ってますけど…」
何か演奏できませんか、と質問が。
シロエ 「出来るんだったら、それを組み込んでですね…」
ジョミー「癒しに聞けると、いいかもね!」
サム 「うんうん、親しんで貰えそうだぜ」
スマホが苦手なお年寄りでも、とサム君も乗り気。
サム 「アプリは使って貰ってこそだし、いいんでねえの」
シロエ 「でしょう? 連絡用だけでは弱いですしね」
便利ツールをつけたくらいじゃ…、と流石な分析。
シロエ 「こう、普段から、使って頂けるのが…」
ジョミー「だよねえ、隙間時間にでもさ」
ちょっと使うか、って気になるヤツだよ、とジョミー君も。
ジョミー「キースが演奏できる楽器って、何か無いわけ?」
キース 「あると思うのか、俺は柔道一筋なんだが!」
シロエ 「そうなると、ライブ配信くらいでしょうか…」
一同 「「「ライブ配信!?」」」
いったい何を、と顔を見合わせる御一同様。
ライブ配信なんですよね…?
2020/06/11 (Thu)
☆ライブ配信でいこう
梅雨のシーズンは雨がシトシト、キース君を悩ませる月参り。
土砂降りだろうが休めないわけで、アプリで雨天順延な案が。
ジョミー「ライブ配信って、まさかキースの日常だとか?」
キース 「おい、そんなものにニーズがあると思うのか?」
サム 「それ以前によ、面白くもなんともねえじゃねえか」
日常っていうのはコレだろコレ、とサム君、周りをグルリと。
サム 「こんな面子を映されてもよ、どうにもこうにも…」
スウェナ「そうよね、ぶるぅが料理をするならともかく…」
マツカ 「ぶるぅのお料理教室ですか?」
シロエ 「いいかもですね、そういうのも」
ライブ配信とかじゃなくても、とシロエ君も頷く料理教室。
シロエ 「精進料理の教室だったら、ウケそうですよ」
キース 「いや、普段からお膳を供える檀家さんは、だ…」
レアケースだぞ、と副住職。
キース 「お茶と米の飯だな、標準スタイルは」
シロエ 「だったら、やっぱりライブ配信なんでしょうか…」
サム 「有難味がねえって言ってるじゃねえか」
マツカ 「御本尊様なら、どうでしょう?」
本堂の様子をライブでお届けするというのは…、と御曹司。
マツカ 「朝晩のお勤めを、家で体験して頂けますし…」
シロエ 「なるほど、有難い感じがしますね」
ジョミー「キースがヘマをやらなかったら、完璧だよね」
いい感じかも、と賛成の声が。
ジョミー「それでいこうよ、アプリのオマケ!」
キース 「待ってくれ。本堂で、大事なことに気付いた」
一同 「「「へ?」」」
キース 「親父だ、あのクソ親父がアプリを許すか?」
アナログの極みな親父なんだぞ、と副住職が顰める顔。
キース 「卒塔婆プリンターなんぞは、もってのほかで!」
シロエ 「でも、月参り用のアプリなんですよ?」
ジョミー「便利ツールは、アドス和尚も歓迎じゃないの?」
キース 「そうかもしれんが、親父だぞ?」
自分専用にしそうな気がする、と副住職。
横取りされると…?
2020/06/12 (Fri)
☆口コミが怖い
雨がシトシトな梅雨のシーズン、キース君が困るのが月参り。
土砂降りでも休めないわけでして、雨天順延にアプリな案が。
シロエ 「アドス和尚の専用アプリにされるんですか?」
キース 「そうだ。確かにアナログな親父なんだが…」
もちろんスマホは持っているしな、と副住職の眉間に皺が。
キース 「ついでに、月参り用のアプリが出来たら…」
シロエ 「叱られてから、没収でしょうか?」
キース 「いや、その前に調査だろうな」
一同 「「「調査?」」」
なんのこっちゃ、と顔を見合わせる御一同様。
ジョミー「調査って、何さ?」
キース 「そのままの意味だ、どういうアプリか調べるんだ」
本堂からライブ中継をしなくても、耳に入るぞ、と難しい顔。
キース 「なんと言っても、親父も月参りをしているからな」
シロエ 「あー…。キース先輩は、一部だけでしたっけ」
キース 「学校はあるし、副住職だし、こう、色々とな…」
俺の担当は、ほんの一部だ、と副住職、深い溜息を。
スウェナ「だけど、それならアプリはバレないと思うわよ?」
マツカ 「一部の檀家さんしか知らないわけですしね…」
シロエ 「そうですよ。そういうことなら、ぼくもですね…」
アプリの存在がバレないように細工します、と頼もしい声。
シロエ 「キース先輩が教えた人しか、ダウンロードも…」
サム 「出来ない仕組みにするわけな!」
シロエ 「ええ、ぼくの腕の見せどころですよ」
ですから安心して下さい、とシロエ君の太鼓判。
シロエ 「アドス和尚が検索したって、ヒットはしません」
キース 「それは確かに可能だろうが…」
俺が怖いのは口コミなんだ、と副住職が竦める肩。
キース 「便利な月参りアプリがある、という話がだな…」
シロエ 「檀家さんの間に広まるんですか、口コミで?」
キース 「ああ。檀家さんのネットワークは強いぞ」
一同 「「「うーん…」」」
それはそうかも、と頷かざるを得ない現実。
即バレかも…。
2020/06/13 (Sat)
☆お寺に来る用事
梅雨のシーズンは雨がシトシト、キース君を悩ませる月参り。
雨天順延はアプリで連絡、そういう話が出ているのですが…。
シロエ 「檀家さんから、アドス和尚にバレるんですね?」
キース 「ああ。俺の担当ではない家からな」
便利な月参りアプリが欲しい、という件で…、とブツブツと。
キース 「親父が月参りに出掛けた先か、あるいは寺に…」
サム 「用事があって来た人かよ?」
キース 「そういうことだ。寺に来る用事は色々あるしな」
法事の前後は絶対に来る、とキース君、超特大の溜息を。
キース 「打ち合わせの類は電話で出来ても、他がだな…」
シロエ 「元老寺でしか出来ない何かが、あるんですか?」
キース 「法事の前なら、御本尊様へのお供え物だ!」
法事の場所が本堂でなくても、コレは来るぞ、という説明。
キース 「お供え物は絶対に要るし、それをだな…」
ブルー 「法事が終わった後でお供えするのは、失礼だしね」
お供えするなら、法事の前に、と生徒会長、いえ、銀青様も。
ブルー 「遠方に住んでる人の場合は、宅配便でもいいけど」
キース 「地元の人だと、届けに来るのが作法だしな」
一同 「「「あー…」」」
届けに来たついでにアプリの話か、と誰もが納得。
シロエ 「確かに、顔を合わせた時なら聞きやすいですね」
キース 「月参りの時だと、次を急ぐことも多いしな…」
狙い目は法事の時かもしれん、と副住職。
キース 「法事の後にも寺に来るから、そのついでだな」
ジョミー「後に来るのは、何しに来るわけ?」
キース 「お布施に決まっているだろうが!」
回向料と御車代とも言うが、と言われましても。
シロエ 「あのぅ…。法事の席では、渡せないんですか?」
キース 「では、聞くが…。葬式の席で、渡しているか?」
シロエ 「渡さないような気がしますね…」
キース 「それと同じだ、法事でも同じ扱いだ!」
後から寺に届けるものだ、と副住職の解説が。
お寺に来ますね…。
2020/06/14 (Sun)
☆最悪すぎる末路
雨がシトシトな梅雨のシーズン、キース君が辛いのが月参り。
土砂降りの時は雨天順延、そういうアプリを作る案ですけど。
シロエ 「法事の前後にお寺に来るなら、ヤバそうですね…」
キース 「そうだろう? 時間はたっぷりあるからな…」
世間話タイムが怖すぎるぞ、と副住職、肩をブルッと。
キース 「月参りアプリと聞いたんですが、と言われたら…」
ジョミー「アドス和尚は知らないんだし、怖いよね?」
キース 「しかも、親父はタヌキだからな…」
話を合わせて、アプリの話を聞き出すぞ、と悪い顔色。
キース 「どの檀家さんが持っているかは、即バレだ!」
サム 「でもって、キースが絡んでるのもバレるのな…」
キース 「そして親父が、しれっと言うんだ、檀家さんに」
次の月参りまでには整えますので…、とアドス和尚の口真似。
キース 「檀家さんは大喜びで帰って、俺はだな…」
スウェナ「事情聴取で、アプリも没収されるのね?」
キース 「それ以外に道は無いだろうが!」
ついでにシロエも巻き込まれるぞ、と視線がシロエ君に。
シロエ 「ぼくですか!?」
キース 「ああ。親父にいいように使われるだろうな」
便利ツールの開発とかで、と人差し指をチッチッと。
キース 「親父の御用達はキツイぞ、覚悟しておけ」
シロエ 「嫌すぎますって!」
アプリの話は無かったことに…、とシロエ君、顔面蒼白。
シロエ 「というわけで、月参り、頑張って下さいね!」
キース 「アッサリと見捨てやがったな?」
シロエ 「誰でも、見捨てますってば!」
デメリットしか無いんですから、と引き攣っている顔。
シロエ 「キース先輩を助けた所で、ぼくの末路はですね…」
サム 「アドス和尚の下僕エンドじゃ、最悪すぎだぜ」
マツカ 「逃げない方がおかしいでしょうね、この流れだと」
ジョミー「助ける人なんか、いるわけないよね」
キース 「おい…!」
揃って俺を見捨てる気か、と言ってますけど。
当然なのでは…。
2020/06/15 (Mon)