☆シャングリラ発進?
ゴールデンウィークの後半は宇宙へ行こう、とシャングリラ号へ。
乗り込んだものの待てど暮らせど、発進を告げる艦内放送が流れません。
ジョミー「これってやっぱり変じゃない?」
キース 「いつもだったらとっくに発進している頃だな…」
サム 「って言うか、ワープしててもおかしくねえぜ?」
シロエ 「まさかエンジントラブルとか?」
マツカ 「整備は完璧じゃないかと思うんですけど…」
スウェナ「宇宙船でトラブルだなんて、ちょっと怖いわ」
キース 「その辺はきちんと対応出来るだろう。ワープする船だぞ?」
ジョミー「だよね、今の科学じゃ作れないっていう船だもんね!」
大丈夫だろう、とは思ったものの、一向に艦内放送は無く。
流石にこれは変ではないか、とブリッジへ行ってみることに。
シロエ 「えっと…。本当に出掛けて行ってもいいんでしょうか?」
キース 「待機していた方がいいならそういう指示があると思うが」
スウェナ「そうね、少なくとも私たちには何か言ってきそうよね」
ジョミー「ダメで元々、行ってみようよ」
サム 「おう! 追い返されたらその時だよな」
ブリッジへの通路で何人かのクルーとすれ違いましたが、制止も警告も
されなかったため、そのまま真っ直ぐ。
最後のドアをくぐったシャン学メンバー、ブリッジへ突入でございます。
ブルー 「やあ、来たね。ブリッジへようこそ」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ いらっしゃい! って、違った、間違い!」
ぼくのお部屋じゃなかったっけ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
なにやら平和な面子ですが。
キース 「あんた…じゃなかった、ソルジャーがなんでブリッジに?」
ブルー 「いちゃダメだとは言われてないけど?」
ジョミー「そんなことよりソルジャーの服は?」
ブルー 「ああ、アレ? 今回は面倒だからいいんだよ」
生徒会長、どう見ても私服でございます。
シャングリラ号ではソルジャーの正装の筈なのに、面倒ですって?
それは如何なものなのか…。
2012/05/01 (Tue)
☆宇宙への旅?
発進の艦内放送が流れないため、ブリッジに出掛けたシャン学メンバー。
そこには「そるじゃぁ・ぶるぅ」と私服の生徒会長が。
キース 「あんた、一応、ソルジャーだろうが!」
ブルー 「だからってソルジャーの正装をしろとは言われてないし!」
ゼル 「普段じゃったら正装の方がいいんじゃがのう…」
エラ 「今回は特にソルジャーの役目もありませんから」
生徒全員「「「えっ?」」」
シド 「だから言っただろう、今回は特別なんだって」
主任操舵士の制服を着たシド先生が舵の傍らで笑っております。
シド 「ソルジャー…いや、ブルーでいいのかな?」
ブルー 「ブルーで充分。何か用かい?」
シド 「ジョミーが舵を触ってみたいと言っててねえ」
ブルー 「なんだ、そんなことか。いいよね、ハーレイ?」
ハーレイ「ああ、別に問題は無いだろう。オートパイロットだしな」
キース 「オートパイロットって…。いつの間に発進したんですか?」
ハーレイ「お前たちを乗せた直後だが」
ジョミー「聞こえなかったよ、発進の合図! だから来たんだ」
シロエ 「そうなんです。何かトラブルでもあったんじゃあ…って」
ブラウ 「縁起でもないことを言ってくれるねえ…」
ゼル 「まったくじゃ。整備は常に万全じゃて」
キース 「で、ですが…」
ハーレイ「なんだ、発進の号令か? 発進という程のことでもないしな」
ブルー 「そう、スクリーンを見て分からない?」
生徒全員「「「えぇっ!?」」」
巨大スクリーンに映っているのは青い星。どう見ても地球でございます。
宇宙は? お馴染みの二十光年の彼方への旅は?
ブラウ 「ブルーから聞いてないのかい? これ以上遠くは行かないよ」
ゼル 「今回はメンテナンスがメインじゃからな」
ハーレイ「衛星軌道上を周回しながら各機関をチェックするのだが?」
生徒全員「「「嘘…」」」
いきなり派手に肩透かし。
宇宙の旅には違いないのですが、衛星軌道上ではちょっとガッカリ…。
2012/05/02 (Wed)
☆ブリッジで遊ぼう
シャングリラ号で宇宙の旅に出かけたつもりが、行き先は衛星軌道上で。
青い地球が見えるとはいえ、ガックリなシャン学メンバーです。
ブルー 「つまならいって言うならシャトルを出すけど?」
ゼル 「そうじゃな、すぐに地球に帰れるわい」
ブラウ 「何処も混んでると思うけどねえ? そっちの方が好みかい?」
ジョミー「え、えっと…」
サム 「帰ったって何も出来ねえぜ? ドリームワールドも行列だし」
シロエ 「ぼくたち、免許も持ってませんしね…」
キース 「車があっても大渋滞なのが常識だろうが、この時期は」
ブルー 「で、どうするわけ? 御滞在かな、それとも帰宅?」
マツカ 「ウチの別荘なら空いてますけど…」
キース 「今から移動も面倒だ。シャングリラ号で良しとしておこう」
ゼル 「良しとは何じゃ、良しというのは! わしらの船じゃぞ」
失礼な、とゼル先生は仰ってますが、怒ったわけでもないようで。
ゼル 「まあ、ゆっくりとしていくんじゃな」
ブルー 「それが一番! ブリッジ見学も大歓迎だよ」
エラ 「サイオンキャノンは許可できませんが…」
ハーレイ「舵を触るくらいはいいだろう。ジョミーがやるのか?」
サム 「あっ、俺も! 俺も触りたい!」
キース 「航行に支障が無いんだったら触りたいです」
シド 「よーし、それじゃ順番に並んで、並んで」
ぶるぅ 「ぼくもやりたい! えとえと、ちょっと高すぎるかな…」
シド 「ぶるぅは抱っこしてあげよう。握るだけだよ?」
というわけで、シャン学メンバー、ブリッジ体験でございます。
舵を握ってポーズを決めたり、計器類を覗かせてもらったり。
「シャングリラ、発進!」と景気良く叫ぶジョミー君とか。
ブルー 「良かったねえ、貴重な体験が出来て」
ブラウ 「メンテ中ならではのサービスなんだよ」
生徒全員「「「ありがとうございました!」」」
楽しかったね、とブリッジを後にするシャン学メンバー。
いい思い出になりそうですよね!
2012/05/03 (Thu)
☆暇つぶしはいかが?
衛星軌道上を周回中のシャングリラ号。
二十光年の彼方への旅は出来なくっても、楽しみは色々とありそうです。
ブリッジでクルー体験をさせて貰ったシャン学メンバーは大満足。
ジョミー「やっぱりブリッジはワクワクするよね」
シロエ 「あそこで指示を出すんですしね、心臓部みたいなものですよ」
サム 「ワープドライブの起動も見たかったよな」
キース 「今回はワープしないから通い詰めても無駄だと思うぞ」
マツカ 「メンテナンス中だそうですもんね」
スウェナ「ステルス・デバイスの再起動もするとか言ってたわよね」
キース 「ああ。宇宙クジラが目撃される時期かもしれないな」
ステルス・デバイスで姿を消しているシャングリラ号。
衛星からも捉えられないそうですけれど、目撃情報も少なくはなくて。
ジョミー「ステルス・デバイスを使ってなければ見えるんだよね?」
シロエ 「そうらしいですね、ぼくたちにはいつも見えてますけど…」
スウェナ「それはサイオンがあるからでしょ?」
サム 「だよな、前にブルーが言ってたもんな」
居住区の共有スペースで寛いでいるシャン学メンバー。
専用に貸して貰った部屋だけあって、お菓子や飲み物も揃っています。
宇宙クジラことシャングリラ号について話していると…。
ぶるぅ 「かみお~ん♪」
ブルー 「やあ、賑やかにやってるね。今は暇かな?」
キース 「見ての通りだ。暇でなければ何だと言うんだ?」
ブルー 「それは良かった。ちょっと一緒に来てくれるかな」
ジョミー「何処へ?」
ブルー 「農業専用スペースだけど」
全員 「「「は?」」」
ブルー 「とにかく来れば分かるって! 暇なんだろう」
キース 「おいおい、宇宙まで来て農業をやれと?」
ブルー 「どうだろう? 農業と言えば農業みたいなものだけど…」
とにかく来てよ、と生徒会長と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
何故に農業専用スペース?
草むしり部隊に駆り出されるとか、そういうオチではないでしょうね?
2012/05/04 (Fri)
☆宇宙の農作業
シャングリラ号の定位置は地球から二十光年も離れた所。
クルーの交替などで戻った時には物資の補給をしますけれども、基本は
自給自足です。それで農業専用スペースなんかも必要になるわけでして。
ブルー 「さてと、この通路は覚えてる?」
キース 「船内見学をした時に来たな。それっきり二度と来てないが」
ブルー 「まあそうだろうね、お客様には用の無い場所だし」
ぶるぅ 「お料理するなら、とっても楽しい場所なんだけど…」
ブルー 「野菜は新鮮、卵も産みたて。ぶるぅには魅力の空間だよね」
なにしろ本物の農場だから、と生徒会長。
牛や鶏も飼育している広大なスペースでございます。
専用の扉をくぐって入れば、宇宙船の中とは思えない規模の畑があって。
キース 「俺たちに畑仕事を手伝えと?」
シロエ 「もしかしてジャガイモ掘りですか?」
ブルー 「そっちじゃなくって、こっちだよ。まだ準備中」
連れて行かれた先に広がっていたのは掘り返された土。
水路からチョロチョロと水が絶え間なく流れ込んでおりますが…。
ジョミー「えっと、これって…」
キース 「どう見ても田んぼというヤツだな」
シロエ 「準備中だって言いましたよね? 耕すんですか?」
ブルー 「もう耕してあるだろう? 次は田植えだよ」
全員 「「「田植え!?」」」
ブルー 「そう、田植え。シャングリラ号では田植えはお祭り」
サム 「お、お祭りって…。御神輿とかが出るのかよ?」
ブルー 「残念だけど、そういうヤツではないんだな」
どちらかと言えばイベントかも、と生徒会長は笑っております。
お祭りとイベントの違いは何処に?
ブルー 「手っ取り早く言えば見世物なんだよ」
キース 「見世物だと?」
ブルー 「宇宙じゃ季節感にも欠けるし、田植えは派手にやらないと」
キース 「どうやれば田植えが派手になるんだ!」
どうせ機械で植えるんだろうが、とキース君。
これだけ広い田んぼですから、機械を使わなきゃ無理ですよねえ?
2012/05/05 (Sat)
☆お祭りな田植え
農業用スペースに連れて来られたシャン学メンバー。
田植えを控えた田んぼを前に、生徒会長はお祭りだとか申しております。
正確に言えば見世物らしく、派手な田植えがどうこうと…。
シロエ 「まさか田植え機に幟を飾るんじゃないでしょうね?」
キース 「大漁旗の真似か?」
ジョミー「幟は幟でも鯉のぼりとか…」
サム 「ああ、それだったら派手そうだよな! 鎧兜で運転するとか」
スウェナ「確かにお祭りで見世物よね。でも…」
マツカ 「ぼくたちは何をするんですか? 手伝うんですよね?」
キース 「田植え機に運転免許は必要ないんじゃなかったか?」
シロエ 「そうです、そうです。公道を走らないなら要らない筈です」
キース 「だったら田植えで決まりだな。幟を飾ってコスプレか…」
鎧兜で晒し者か、とキース君は深い溜息ですが。
ブルー 「いい線だけど、ちょっと違うね」
全員 「「「は?」」」
ブルー 「田植えとコスプレは正解なんだよ、違うのは幟」
キース 「それじゃ似たようなものだろうが!」
ブルー 「田植え機に乗れとは言っていないよ。お田植え祭さ」
全員 「「「お田植え祭?」」」
ブルー 「知らないかなぁ、あちこちの神社でやるんだけれど」
シャングリラ号は神社じゃないからイベントなんだ、と生徒会長。
なにやら雲行きが怪しくなってきたような…。
キース 「お田植え祭なら知っているが…」
ブルー 「それは嬉しいね。なにしろ君が有望株だし」
キース 「どういう意味だ?」
ブルー 「神楽舞だよ、他のみんなが田植え係で」
キース 「なんだって!?」
ジョミー「た、田植え係って…コスプレで田植え?」
ブルー 「そういうこと。揃いの女装で手で植えるのさ、丁寧にね」
茜襷に菅の笠、と生徒会長は御機嫌でございます。
田植え機どころか田んぼに入って苗を植えるのが仕事、それも女装で。
ジョミー君たちも大概ですけど、キース君は?
神楽舞だとか聞こえましたが、ロクな話ではなさそうな…。
2012/05/06 (Sun)
☆お田植えと女装
生徒会長が言い出したイベントというのは『お田植え祭』。
神様にお供えするお米専用の神田がある神社なんかで、よくありますが。
キース 「どうして俺だけ神楽舞なんだ、田植えじゃなくて!」
ブルー 「え、だって。シャングリラ号では派手にやるからだよ」
なんと言ってもお祭りだしね、と生徒会長。
例年はクルーだけで行うらしいのですけど、今年は趣向を変えたとか。
ブルー 「せっかくゲストが乗ってるんだし、たまには違うメンバーで」
キース 「だからだな、なんで田植えで神楽舞になる!?」
ブルー 「そういう神社もあるんだけれど? 田植えの前に神楽舞!」
神楽舞が田植え開始の合図だそうでございます。
シャングリラ号では巫女さん役の女性クルーが舞うそうですが。
キース 「お、おい…。今、巫女さんと聞こえたが?」
ブルー 「巫女さんでなきゃ何だと言うのさ」
キース 「神楽舞は男もやるだろうが!」
ブルー 「残念でした。シャングリラ号のお田植え祭では巫女さんだよ」
キース 「み、巫女さん…」
愕然とするキース君。
どうやら女装をさせられるのは田植え係だけではないようで。
ジョミー「そっか、キースも女装なんだね。ぼくたちだけじゃなくて」
シロエ 「キース先輩の方が悲惨ですってば、巫女さんですよ」
サム 「だよな、俺たちは絣の着物に赤い襷ってだけだもんなあ」
マツカ 「それに一人じゃないですもんね」
スウェナ「私はどっちになるのかしら? 巫女さんの方?」
ブルー 「スウェナは見物してればいいよ。今年は女装祭りにするから」
キース 「女装祭りだと!?」
ブチ切れそうなキース君ですが、生徒会長は涼しい顔。
ブルー 「女装のお祭りも世間にはある。女物の着物で花笠とかさ」
ジョミー「なにそれ…」
ブルー 「男が花笠を被って踊るんだってば、由緒正しい伝統の神事」
それに比べればイベントくらい、と言われましても。
立派な神事だという花笠踊りを例に出されては、逃亡不可能?
2012/05/07 (Mon)
☆巫女さんと坊主
お田植え祭をやれと言われたシャン学メンバー。
よりにもよって女装祭りで、茜襷に菅の笠で田植えだそうでございます。
しかし、そんなものは序の口で。
キース 「俺だけ巫女さん役とはなんだ! 誰でもいいだろうが!」
ブルー 「言った筈だよ、君が有望株だって」
キース 「俺は坊主で神職じゃない! 巫女さんといえば神職だ!」
ジョミー「巫女さんってさぁ、バイトがメインだと思うけど?」
キース 「それは初詣の巫女さんだ! ちゃんと本職の人もいる!」
ブルー 「その本職に負けない巫女さんが欲しいんだよ、ぼくは」
神楽舞を舞うんだから、と生徒会長。
確かにバイトの巫女さんに神楽舞は無理がありますが…。
キース 「本職に負けない巫女さんだと? 正気か、あんたは」
ブルー 「至って正気で、真面目に本気。君を見込んでいるんだけどな」
シロエ 「でもキース先輩はお坊さんですよ。まず髪の毛が問題です」
サム 「あー、巫女さんって髪が長いのがデフォだよなあ」
スウェナ「つけ毛の人も多いわよ? バイトの人は」
ジョミー「それでも長く見えるようにしてるよねえ…」
マツカ 「極端に短い人っていうのは見かけませんよね」
お坊さんとは違うんじゃないの、と誰もが首を傾げております。
正真正銘の本職の坊主、キース君に巫女さんの素質は無いのでは…。
キース 「見ろ、ジョミーたちも違うと言ってるぞ」
ジョミー「あ、それと巫女さん役とは別だからね!」
サム 「そうそう、俺たちは引き受ける気は全くねえから」
ブルー 「焦らなくても大丈夫だよ。最初から期待はしていない」
スウェナ「そうなの?」
ブルー 「キースにしか出来ないと思うんだよね、神楽舞は」
キース 「俺は舞など舞ったことはない!」
ブルー 「舞の経験は無いだろうけど、基礎はバッチリある筈だよ」
キース 「どんな基礎だ、どんな!」
ブルー 「散華」
全員 「「「さんげ?」」」
ニッコリ笑う生徒会長。
基礎バッチリの散華って、なに?
2012/05/08 (Tue)
☆舞と散華と神楽舞
キース君に振られた役目は神楽舞な上に巫女さんで。
おまけに生徒会長曰く、舞は舞えなくても基礎はバッチリある筈だとか。
その根拠として散華などと申しておりますが…。
キース 「馬鹿野郎、散華の何処が基礎になるんだ!」
ブルー 「立派に基礎だと思うけどねえ?」
ジョミー「散華って、何さ?」
ブルー 「お寺の法要で撒く花びらだよ、紙で作ってあるんだけれど」
サム 「あー…。ひょっとしてアレかな、朝のお勤めで唱えてるヤツ」
ブルー 「そうそう。あのお経に合わせて撒くというのがお約束さ」
綺麗なんだよ、と生徒会長。
花びらの形に切っただけの散華もあるそうですが、模様入りなども。
シロエ 「それが神楽舞と何か関係あるんですか?」
ブルー 「直接は関係ないんだけどね、散華の作法はうるさいんだな」
ジョミー「厳しいわけ?」
ブルー 「まあね。お寺の儀式ってヤツは足の運びまで決まってるけど」
どちらの足から先に出るとか、畳を何歩で横切るだとか。
お寺の儀式は細かい作法に縛られまくっているそうですけど…。
ブルー 「足運びはまだマシなんだよ。ドジを踏んでもそう響かない」
キース 「そうでもないぞ。親父に何回怒鳴られたことか…」
ブルー 「アドス和尚の方針はともかく、見た目にバレなきゃ無問題」
サム 「なるほどなぁ…。右か左かなんて見てねえもんな」
ブルー 「一般人だと余計にね。そもそも作法を知らないからさ」
ところが散華はそうはいかない、と生徒会長はニッコリと。
ブルー 「紙の花びらが舞うんだよ? 素人さんでも注目するさ」
スウェナ「そうね、私も見てみたいもの」
ブルー 「そうだろう? だから優雅な動きをしないとダメってわけ」
シロエ 「ああ、それで舞の基礎だというわけですか」
ブルー 「ご名答。法衣の袖から腕が出すぎただけでもアウト」
とにかく美しい所作が大切、と生徒会長は力説しております。
確かに舞との共通点はありそうですけど、キース君の運命や如何に?
2012/05/09 (Wed)
☆お田植え祭に向けて
神楽舞も散華も似たようなものだ、と言われてしまったキース君。
反論しようとしたのですけど、田んぼの脇で言い争いは不毛なもので…。
ブルー 「そろそろ河岸を変えようか。打ち合わせには不向きだし」
シロエ 「どう転んでも田植えでしょう? それと神楽舞」
ブルー 「お田植え祭の準備が始まるんだよ、邪魔したら悪い」
サム 「田んぼなら此処にあるじゃねえかよ」
ブルー 「まさか全部を手で植えるって? 専用のヤツを用意するのさ」
その辺の空きスペースに、と言われてみれば未使用の場所が。
区画を示すためなのでしょう、テープで仕切りがされております。
ブルー 「小さめの田んぼを作って、そこの隣で神楽舞を…ね」
シロエ 「それでお祭りなんですか…」
ブルー 「クルーも見物しに来るんだから賑やかになるよ」
楽しみだよね、と農業専用スペースを出てゆく生徒会長。
お田植え祭をやらされる方のシャン学メンバーも続いてトボトボと。
居住区の共有スペースに戻った所で生徒会長がニッコリ笑って…。
ブルー 「田植えの方は簡単なんだ。こう苗を持って植えるだけさ」
ジョミー「だけど田んぼに入るんだよね?」
ブルー 「まあ、泥がつくのは仕方ないよね。そういうものだし」
シロエ 「約束事は無いんですね? 歌を歌えとか、そういうのは」
ブルー 「田植え歌の代わりに神楽舞だよ。キースの見せ場だ」
キース 「俺には無理だと言ってるだろうが、舞なんて!」
ブルー 「そうかなぁ? みんなの意見も聞いてみようよ」
ジョミー「ぼくはキースに一票でいいよ」
サム 「俺も、俺も!」
ブルー 「そんなのじゃなくて、舞の腕前」
全員 「「「は?」」」
ブルー 「優雅な動きが出来るかどうか、そこを見るのも一興かと」
キース 「あんた、どうしろと言うんだ、俺に!」
ブルー 「エア散華」
全員 「「「エア散華?」」」
散華ならまだ分かりますけど、エア散華とは何でしょう?
聞き間違いか、はたまた空耳アワー?
2012/05/10 (Thu)
☆エア散華って?
お田植え祭でキース君に神楽舞を舞わせようという生徒会長。
舞の腕前を皆で確認するのも一興、と提案してきたのがエア散華とやら。
キース 「すまん、あんた今、なんと言った?」
ブルー 「エア散華だけど」
キース 「何なんだ、それは! 俺はそんなものは知らないぞ!」
ブルー 「そうかなぁ? 若くないねえ、エアと言ったらエアだろうに」
キース 「だから何だと聞いている!」
ブルー 「エアバンドとか、エアギターとか…。知らないわけ?」
キース 「………。ま、まさか…」
ブルー 「やっと分かった? エア散華の意味」
キース 「なんで散華がエアになるんだ!」
ブルー 「散華じゃピントがズレるからだよ、散華の方に目が行くから」
エアと言ったらエアなんだ、と生徒会長は主張しております。
早い話が散華に使う紙の花びらは抜きで散華をやれということで…。
ブルー 「簡単なことだろ、散華を作る手間も省けて楽勝だ」
キース 「あんた、本気で言ってるのか? 仏様に失礼だろうが!」
ブルー 「坊主の言葉とも思えないねえ、お経自体は普段のヤツだよ」
サム 「だよなぁ、俺も朝のお勤めで読むもんな」
読経するだけで散華は無いぜ、とサム君も生徒会長の肩を持ち。
キース 「くっそぉ、なんでこういうことになる…」
ブルー 「君がどれだけ優雅に舞えるか、それを確かめなくっちゃね」
よく見るように、と言われたシャン学メンバー、興味津々。
キース君は左手にお盆を乗せたようなポーズでスタンバイ中。
ブルー 「じゃあ、ぼくが唱えるから頑張って」
サム 「俺は?」
ブルー 「キースを見るのが最優先だよ。ぼくだけでいい」
せーの、と掛け声をかけた生徒会長、朗々と読経を始めました。
それに合わせてキース君が滑るように歩き始めて…。
ブルー 「じーとうちょーう、さんかーらーく…」
キース君の右手が見えないお盆から何かを摘み上げ、ゆったりと上へ。
その所作はまさに舞そのもの。
これが噂のエア散華?
2012/05/11 (Fri)
☆エア散華と白拍子
生徒会長の提案、エア散華。
花びらを撒くふりをしながら歩くキース君、なかなか見事でございます。
「さんかーらーく」と生徒会長が唱える度に右手を優雅な仕草で上へと。
ジョミー「へえ…。なんかけっこうサマになってる」
マツカ 「凄いですねえ、ホントに舞ってるみたいですよ」
サム 「おっと、そろそろフィナーレだぜ」
ブルー 「しょーたーいほーさー、じーとうちょーう、さんかーらーく」
ゆっくりと右手を下ろし、エア散華を終えたキース君に全員、拍手喝采。
生徒会長も満足そうです。
シロエ 「凄かったですよ、キース先輩!」
キース 「そうか? どうも俺にはエアというのは…」
スウェナ「ああいう舞ってテレビで見たわよ、大河ドラマで」
サム 「俺も見た、見た! 歴史の勉強になるから見ろって言われて」
ジョミー「白拍子だっけ? 巫女さんみたいな格好のヤツ」
キース 「おい、お前ら…」
不吉な単語を口にするな、と顔を顰めたキース君ですが。
ブルー 「みんな、いい所を見ているね。白拍子のルーツは巫女舞だよ」
マツカ 「そうなんですか?」
ブルー 「白拍子を連想出来たってことはキースの舞の基礎はバッチリ」
キース 「散華と白拍子を一緒にする気か、罰当たりな!」
ブルー 「所詮エアだし、いいじゃないか。神楽舞をよろしく頼むよ」
キース 「く、くっそぉ…」
見事な舞だと評価されただけに、キース君に逃げ場はございません。
今はこれまでか、と思われましたが。
キース 「じゃあ、そう言うあんたはどうなんだ!」
ブルー 「えっ?」
キース 「俺より年季が入ってる分、更に優雅に舞える筈だよな?」
ブルー 「そりゃまあ…。で、ぼくの年季がどうしたって?」
キース 「俺を見世物にしやがって! あんたもやれ!」
ブルー 「エア散華は趣味じゃないんだよねえ…」
どうせならもっと本格的に、と生徒会長は何やら考え込んでおります。
エア散華ならぬ本物の散華が始まりそうな雰囲気ですよ~!
2012/05/12 (Sat)
☆エアより本格派
見事な舞ならぬエア散華を披露したばかりに逃げ場を失ったキース君。
死なばもろとも、と生徒会長にもエア散華をやらせようとしております。
しかし…。
ブルー 「やっぱりダメだね、エアは所詮はエアだから」
キース 「あんた、俺にはやらせただろうが!」
ブルー 「そりゃね、みんなの評価を得るにはアレしか無いしさ」
キース 「だったらあんたはどうなんだ! あんたの評価は!」
やらなかったら俺以下という評価になるが、とキース君は勝ち誇った顔。
緋色の衣が自慢の高僧、銀青様がキース君より下というのも…。
サム 「キース、位で勝てないからって決め付けるなよ!」
キース 「そうでもないぞ? 法式ってのはな、けっこう素質も問題で」
シロエ 「下っ端の方が上手いってこともあるんですか?」
キース 「絶対無いとは言い切れないのが坊主の世界だ」
ブルー 「どうしても持って生まれた資質というのがあるからねえ…」
キース 「潔く負けを認めたか。散華に関しては俺の勝ちだな」
ブルー 「ちょっと待った。それを言うならエア散華!」
キース 「は?」
ブルー 「エア散華は披露しないから負けでもいい。でもさ…」
本格的なヤツなら負けない、と生徒会長が向かった先は奥の小部屋。
ということは、間もなく緋色の衣の銀青様が戻ってきて散華を…。
キース 「俺にはエアで自分は本物をやるとは卑怯な…」
サム 「お前が勝負を挑まなかったら何も起こらなかったんだぜ?」
ジョミー「だよねえ、卑怯とか以前の話だもんね」
スウェナ「キースの舞の腕前を確認するのが目的だったものね」
シロエ 「会長の散華ってどんなのでしょうね、本格派でしょう?」
マツカ 「きっと散華も自分で作るんですよね」
サム 「そうだと思うぜ、ぶるぅは残っているんだし…」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ブルーは準備中!」
もうちょっと待ってね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
伝説の高僧、銀青様が散華となれば、ものすご~く有難い光景かも…?
2012/05/13 (Sun)
☆エア散華を超えろ
エア散華は負けを認めてもいいが、本格派なら負けないという生徒会長。
準備のために奥へと引っ込み、やがて戻って参りましたが。
ブルー 「はい、お待たせ」
キース 「な、な、な…」
ポカンとしているシャン学メンバーと言葉も出ないキース君。
生徒会長が纏っているのは御自慢の緋色の法衣ではなく、紅色の長袴。
白の小袖に紅の単、白の水干、立烏帽子を被って腰には白鞘巻の刀が…。
何処から見ても白拍子というヤツでございます。
ブルー 「それじゃ遠慮なくやらせてもらうよ」
誰もが呆然とする中、生徒会長は金色の扇を右手に持って。
ブルー 「こーがーねーのー、なかやまにー…」
全員 「「「………」」」
甘い美声で歌い上げつつ生徒会長は舞っております。
キース君のエア散華どころではない本格派。歌詞の方も「黄金の中山に
鶴と亀とは物語り、仙人童の密かに立ち聞けば殿は受領になり給ふ」と
誠に目出度く、舞い終えた途端に拍手、拍手のシャン学メンバー。
サム 「すげえや、ブルー! 綺麗だったぜ!」
ジョミー「ブルー、舞なんか出来たんだ…」
ブルー 「まあね。宴会芸にはもってこいだろ? 衣装も華やか」
キース 「やかましい! 俺は認めんぞ、散華とはモノが違いすぎる!」
ブルー 「おや、そうかい?」
キース 「散華は仏様を讃えるものだ。白拍子とは繋がらん!」
ブルー 「そう来たか…。じゃあ、改めて」
生徒会長、閉じていた扇を広げて徐に。
ブルー 「るーりーのー、じょーどーは…」
全員 「「「???」」」
再び舞いながら生徒会長が歌い上げた歌詞は「瑠璃の浄土は潔し、月の
光はさやかにて、像法転ずる末の世に遍く照らせば底もなし」。
思い切り仏法ド真ん中という見事なヤツで。
ブルー 「どうかな? 仏様を讃えてみたんだけど」
キース 「く、くっそぉ…」
生徒会長が歌ったのは今様、どちらも古い歴史のある歌だとか。
白拍子舞で仏法を説かれてしまったキース君の明日はどっちだ?
2012/05/14 (Mon)
☆その道のプロたち
生徒会長の散華の腕前を見下そうとしたキース君。
しかしエアでは負けても本格派なら勝つ、と白拍子舞を舞われてしまい。
更に仏様を讃える今様までもが披露されて…。
ブルー 「で、どうなのかな? ぼくの腕前とかいうヤツは?」
キース 「うう…。散華はどうなんだ、散華の方は!」
ブルー 「舞が舞えるのに散華が下手っていうのは有り得るのかい?」
ジョミー「ブルーの方が上じゃないかと思うけどなぁ…」
サム 「上に決まっているじゃねえかよ、舞えるんだぜ?」
シロエ 「キース先輩、舞は習ってない筈ですしね」
ブルー 「みんなの意見はこうだけど? キース、君の意見は?」
キース 「畜生、負けだ、負けは認める! しかしだな…」
ブルー 「神楽舞の件なら決定済みだよ、逃げようなんて認めないしね」
ぼくが舞った以上は舞ってもらう、とニヤリと笑う生徒会長。
ブルー 「白拍子だって女装なんだ。君も巫女さんをやってもらうよ」
キース 「だ、だが、俺は舞などやったことは…!」
ブルー 「もちろん特訓あるのみさ。じゃ、そういうことで」
生徒会長、なにやら通信をしているようでございます。
準備オッケーだとか、もう来ていいとか、誰を呼ぼうというのやら。
シャン学メンバーも首を傾げつつ、お茶など飲みながら待っていると。
??? 「どうも、お待たせいたしました」
ゾロゾロと部屋に入って来たのは着物姿の男性の集団。
いや、頭には烏帽子で揃いの直垂、笙や篳篥なんぞを手にしております。
彼らの後ろには巫女さん姿の女性が一人。
男性一同「「「はじめまして、シャングリラ雅楽会でございます」」」
巫女さん「お田植え祭の神楽舞の指導に参りました」
キース 「しゃ、シャングリラ雅楽会…」
ブルー 「ね、お祭りだと言っただろう? 派手にやらなきゃ」
ぶるぅ 「ブルー、お祭り大好きだもんね!」
ズラリ揃った神楽舞の指導要員たち。
シャングリラ雅楽会だとか名乗ってますけど、キース君の運命は…?
2012/05/15 (Tue)