☆雅楽と読経と楽太鼓
いきなり登場したシャングリラ雅楽会と名乗る一団。
服装といい楽器などといい、何処から見てもその道のプロでございます。
こんな集団に取り囲まれてはキース君も舞うしかなさそうですが…。
キース 「ま、待ってくれ! 俺はだな、舞も雅楽もサッパリで…」
ブルー 「そういえば音楽系は取らなかったんだっけ、大学で?」
キース 「ウチの寺では出番が無いし、詠唱師も目指してないからな」
シロエ 「お寺で雅楽ってアリなんですか?」
ブルー 「あるねえ、笙が無ければ始まらないって法要もあるし」
なんと雅楽とお寺は切っても切れない関係だそうで。
生徒会長、キース君に説教を始めました。
ブルー 「履修しておけばよかったのにさ、学べる機会は少ないのに」
キース 「だからウチでは出番が無いと…」
ブルー 「ふうん? 太鼓で阿弥陀経とか、憧れる人も多いけど?」
キース 「それはそうだが…。ウチの寺には伝わってないし…」
サム 「なんだよ、太鼓で阿弥陀経って?」
ブルー 「そのまんまだよ、太鼓を叩きながら阿弥陀経を読むわけ」
マツカ 「太鼓ですか?」
ブルー 「うん。雅楽に使う楽太鼓でね。やってみせようか?」
雅楽会のみんなも来ているし、と生徒会長。
またしても奥に着替えに出掛け、その間に雅楽会が楽太鼓を運び込み…。
いわゆる小型の火焔太鼓でございます。
ブルー 「流石に白拍子の格好で阿弥陀経っていうのはねえ…」
ちょっとマズイし、と今度は緋色の法衣。
楽太鼓の前に座って両手にバチを持ち、皆が固唾を飲んで見守る中で。
ブルー 「にょーぜーがーもん、いーちーじーぶつ…」
ドンドコドンドンと響く太鼓の音。
長ったらしい読経の間、途切れなくドンドコ叩き続けて…。
ブルー 「はい、おしまい。…キース、何か言いたそうな顔だけど?」
キース 「あんた、どこまで奥が深いんだ…」
負けた、と肩を落とすキース君。
太鼓を叩きながら読む阿弥陀経に憧れていたんですかねえ、キース君も?
2012/05/16 (Wed)
☆憧れの阿弥陀経
白拍子から一転、緋色の衣で楽太鼓を叩いて阿弥陀経を読んだ生徒会長。
シャン学メンバーはビックリ仰天、キース君はガックリです。
ジョミー「お経って太鼓で読めるんだ…」
ブルー 「最近は出来る人も減ったし、キースも習えば良かったのに」
キース 「先生方の実演を見てから憧れってヤツはあったんだが…」
元老寺に伝わっていない以上は仕方が無い、とキース君。
やっているお寺が羨ましくても、無い袖は振れず。
ブルー 「そんなの、どうでもいいんだよ。修得すれば君のものだし」
キース 「だが、親父にも無い技を若輩者の俺が披露するというのも…」
ブルー 「きちんと習えば問題ないだろ、そういう流儀はあるんだから」
キース 「し、しかし…」
ブルー 「今更大学には戻れないって? じゃあ、我流で」
キース 「我流だと?」
ブルー 「そう。ぼくがやるのを録音しといて練習するとか」
キース 「それは思い切り邪道だろうが!」
ブルー 「太鼓に関しては宗定は無いよ? 邪道も何も」
キース 「そ、そうだったのか?」
ブルー 「あーあ、習ってないとこれだから…。無いんだってば」
宗定というのは、総本山でキッチリと決めた決まりのことでございます。
お経だと鐘や木魚の叩き方が細かく決まっているわけでして。
ブルー 「宗定が無い以上、あるのは基本の約束事だけ! 我流で充分」
キース 「そう言われてもイマイチ自信が無いんだが…」
ブルー 「要は気持ちよくノリノリで読めればいいんだよ、アレは」
途中で本来の叩き方とは違うアドリブをかますのもOKだそうで。
キース 「ア、アドリブ…」
ブルー 「叩いてる方も楽しいんだよね、アレ。だからさ、君も」
キース 「分かった、いずれ挑戦してみる」
ブルー 「その意気、その意気。その勢いで神楽舞の方も頑張って」
キース 「か、神楽舞…」
忘れ去っていたらしいキース君と、ズズイッと進み出る雅楽会メンバー。
今度こそ逃げ場が無さそうですけど、さてどうなる?
2012/05/17 (Thu)
☆神楽舞への道
太鼓で読む阿弥陀経の乱入で忘れられていたのが神楽舞。
しかし神楽舞はお田植え祭に必須、雅楽会のメンバーも揃っております。
巫女さん姿の女性クルーがニッコリと。
巫女さん「まずは着替えて頂きましょうね、その服ではちょっと…」
キース 「き、着替え…?」
巫女さん「巫女装束で舞えないと話になりませんから。本番は明日です」
雅楽会員「装束も持ってまいりました」
キース 「う、うう…。そ、そんな衣装は…」
ブルー 「坊主も巫女さんも着付けの基本は同じだけど? ぶるぅ!」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ お手伝いだね!」
パァァッと走る青いサイオン。
キース君、たちまち巫女さん姿に大変身でございます。
ジョミー「へえ…。キースも白拍子、出来るんじゃないの?」
キース 「うるさい、他人事だと思いやがって!」
サム 「でも本当に他人事だしなぁ…」
シロエ 「ぼくたちは関係ありませんしね」
高みの見物を決め込むシャン学メンバー、ワクワク顔でございます。
生徒会長の白拍子舞の後だけに期待も大きく膨らむもので…。
巫女さん「では練習を始めましょうか。扇をどうぞ」
キース 「お、扇…? 巫女さんと言えば神楽鈴では…」
巫女さん「あら、よく御存知でらっしゃいますね。今回は扇も必須です」
神楽鈴とは巫女さんが舞う時に手に持つ鈴。
幾つもの鈴が三段に取り付けられており、柄には五色の長い布が。
けれどキース君に渡されたものは檜扇、お雛様が持っている扇です。
ブルー 「お田植え祭の神楽舞は前半が扇で後半が鈴さ。華やかだろ?」
巫女さん「舞いながら閉じたり開いたりして頂きますので、練習から」
キース 「ぜ、前半に後半だと? 鈴と扇を両方やれと?」
雅楽会員「お祭りですから見せ場は多めで」
ブルー 「やるからには完璧を目指して欲しいね、手抜きは厳禁」
キース 「なんでこういうことになるんだ、俺は坊主だ!」
いくら坊主だと叫んでも無駄というもので。
巫女さん姿で舞の練習、いざスタート!
2012/05/18 (Fri)
☆ハードな神楽舞
神楽舞の練習を始めることになったキース君。
よりにもよって前半は扇、後半は神楽鈴を持って舞うというのがお約束。
お雛様でお馴染みの檜扇ですけど、閉じたり開いたりは難しく…。
巫女さん「右手は動かさずに左手だけ! もっと滑らかに!」
キース 「こ、こうですか?」
巫女さん「開く時には水平に! そこは斜めではありません」
ビシバシとしごかれまくって、お次は神楽鈴を扱う練習で。
それが済んだら舞の稽古でございます。
巫女さん「はい、ここで両手をかざして左右に開く!」
キース 「は、はいっ!」
巫女さん「足がお留守になってます。同時に左へと動きませんと」
素人さんには難しそうな動きとはいえ、キース君には散華などの基礎が。
法式で身体に叩き込まれた所作の応用で、どうにか形になるようで…。
巫女さん「では音楽に合わせてみましょうか。私も舞いますから」
キース 「よ、よろしくお願いいたします…」
雅楽会員たちが楽器を奏し、キース君と巫女さんが揃って舞を。
まずは扇で、後半は神楽鈴に持ち替え、シャンシャンと。
ブルー 「うん、良かったんじゃないかな、お見事、お見事」
シロエ 「先輩、負けていませんでしたよ! 凄かったです!」
キース 「そ、そうか? し、しかしだな…」
明日は一人で舞うんですよね、とキース君は不安そうですが。
巫女さん「あら、お一人の方がいいのかと思いましたけど…」
雅楽会員「お一人では不安でらっしゃいますか?」
キース 「そ、それは……。やはり素人ですから心配で…」
ブルー 「なるほどねえ…。それじゃ、例年どおりでいこうか」
キース 「どういう意味だ?」
ブルー 「いつもは神楽舞の巫女さん役は四人なんだよ」
キース 「四人だと!?」
巫女さん「一人舞と四人舞では違いますから、追加で練習しませんと」
キース 「な、なんだって?」
ちょっと待ってくれ、とキース君は顔面蒼白。
追加練習の方はともかく、四人舞だと晒し者度もアップですか?
2012/05/19 (Sat)
☆雅楽会なクルーたち
お田植え祭の神楽舞の巫女さん役は四人というのが例年の形。
キース君が一人舞が嫌だと言うなら、例年どおりの四人舞だそうですが。
キース 「よ、四人って…。俺以外は女性になるわけですか?」
巫女さん「そうなりますねえ、これは女性の舞ですし」
雅楽会員「四人舞なら急ぎませんと。誰を呼びます?」
巫女さん「えーっと…。多分、全員暇じゃないかと思いますけど」
とりあえず全員に招集を、と通信機に向かう巫女さんですが。
キース 「ま、待って下さい! 一人でいいです!」
巫女さん「いいんですのよ、みんな楽しんでやっていますし」
キース 「そ、そうじゃなくて…! 女性の中で女装はちょっと…」
悪目立ちだけはしたくないです、と土下座しそうなキース君。
巫女さんと雅楽会員がドッと笑い転げ、なんとか一人舞になりましたが。
キース 「た、助かった…。晒し者になるかと思った…」
ブルー 「それも面白そうなのにねえ…。まあ、いいけどさ」
ジョミー「でもさ、すぐに四人も揃うんだ? 巫女さんの役」
巫女さん「それはもう。雅楽会の会員は多いですから」
シロエ 「そうなんですか?」
雅楽会員「男性の舞い手もおりますし、ここにいるのは一部ですよ」
ブルー 「宇宙じゃ娯楽が少ないしね。趣味の集まりが多いんだよ」
サム 「へえ…。それじゃ他にもあるのかよ?」
雅楽会員「雅楽会の有志で蹴鞠同好会もやっております」
ジョミー「えっ、蹴鞠? あのサッカーの神様のヤツ?」
蹴鞠と聞いて瞳を輝かせているジョミー君はサッカー少年。
サッカーをやる人が祈願に訪れる有名な神社は蹴鞠の神様が祭神です。
ジョミー君、一気に憧れを持ったようですが。
雅楽会員「蹴鞠同好会に入られますか? 地球にも支部がありますよ」
ジョミー「ホント?」
雅楽会員「ただ、サッカー感覚ですと戸惑われるかと」
鞠を地面に落っことさずに蹴り合いをするのが蹴鞠だとか。
サッカーとは別物みたいですけど、入会しますか、ジョミー君?
2012/05/20 (Sun)
☆お祭り好きな船
娯楽が少ない宇宙の生活に欠かせないのが趣味というヤツ。
雅楽会の有志で構成された蹴鞠同好会などもあり、地球にはその支部が。
サッカー少年なジョミー君、興味を示したのはいいんですけど。
ジョミー「え、えっと…。鞠を地面に落とさないって、何?」
雅楽会員「蹴鞠はチームで対戦するものではありませんので」
ジョミー「だから落としちゃダメなわけ?」
雅楽会員「お互い楽しく遊べるように、受け易い鞠を送るんですよ」
ジョミー「じゃ、じゃあ、シュートを決めるとかは…」
雅楽会員「もっての外になりますが。如何に落とさずに蹴り合うかです」
ジョミー「な、なんか……ぼくには向いてなさそう…」
ブルー 「まず無理だろうね、色々と約束事も多いから」
思い切り雅な遊びだし、と蹴鞠の決まり事を挙げる生徒会長。
鞠の受け方、蹴り方にまでルールがあるそうで…。
ジョミー「ダメだあ、そんなの覚え切れないし!」
サム 「だよな、お前、お経も覚えられねえしな」
ブルー 「それ以前だよ。美しい所作はジョミーに向かない」
シロエ 「ですよね、向いてるんなら神楽舞はジョミー先輩ですし」
ブルー 「そういうこと。キースに蹴鞠をやれとは言わないけどさ」
七夕祭じゃないからね、と生徒会長は申しておりますが、何故に七夕?
シャン学メンバーも不思議そうです。
雅楽会員「七夕祭は蹴鞠で始めると決まっております」
ブルー 「雅楽と和歌も欠かせないんだよ、芸事の上達を祈るのさ」
キース 「この船は何なんだ、お田植え祭とか七夕祭とか…」
ブルー 「神事のパクリだけじゃないけど? 聖歌隊もあるし」
要はお祭りなら何でもいいのだ、と生徒会長。
ブルー 「ただ、仏教系だけは無くってねえ…」
シロエ 「お坊さんがいないんですか?」
ブルー 「うん。ぼくの夢はシャングリラ念仏青年団の結成なんだよ」
ジョミー「それは絶対お断り!」
蹴鞠の方がマシだ、とジョミー君。
お祭り好きな船らしいですけど、お田植え祭の行方は?
2012/05/21 (Mon)
☆お田植え祭の前夜
生徒会長の白拍子舞に太鼓を叩いての阿弥陀経。
果ては雅楽会まで登場したお田植え祭の準備、順調に進行いたしまして。
巫女さん「これでなんとか見られますでしょう。頑張りましたね」
キース 「は、はいっ! ご指導ありがとうございました!」
雅楽会員「いやいや、お疲れ様でした。では明日、会場の方で」
キース 「お世話になりました。ありがとうございました!」
ブルー 「手間を取らせて悪かったねえ。じゃ、明日はよろしく」
引き揚げてゆく雅楽会員たちに手を振る生徒会長、とっくに私服。
それもその筈、キース君の練習に付き合う内に思い切り夜でございます。
宇宙船で夜というのもアレですけども、標準時間はあるわけで。
ブルー 「さてと、練習も終わったし…。食堂に行く?」
ジョミー「えっ、お弁当を届けてもらったよ? 他にも食べていいの?」
ブルー 「夜食も食べられないんじゃストレスたまるよ、宇宙ではね」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 食堂は24時間営業だよ!」
キース 「疲れはしたが…。やはり食っておいた方がいいんだろうな」
ブルー 「そりゃね、バテた巫女さんなんて絵にならないし!」
ついでに会場も下見しておこう、と連れてゆかれたシャン学メンバー。
農業専用スペースに行けば、広大な田んぼの横に小さな田んぼが。
更に祭壇やら舞殿まで出来ているようですが…。
キース 「な、なんだコレは!」
ブルー 「舞殿だけど? 田んぼの畦で舞う気だったのかい?」
キース 「そ、それは…。しかしこれでは…」
ブルー 「お祭りなんだし、目立ってなんぼ!」
派手にやらなきゃ、と生徒会長。
まあ逆らっても無駄というもので、食堂へゾロゾロ移動して…。
夜食の定番はやはりラーメン、熱々を皆で啜りながら。
ジョミー「お田植え祭をするのはいいんだけどさ、神様って誰?」
ブルー 「神様?」
ジョミー「誰のお祭りかって聞いてるんだよ」
祭壇が作ってあったよね、とジョミー君。
シャングリラ号の御祭神って…誰?
2012/05/22 (Tue)
☆お田植え祭の神様
お田植え祭の会場を下見してきたシャン学メンバー。
祭壇も設けられていたため、ジョミー君が神様は誰かと尋ねております。
ブルー 「うーん…。お祭りと言ってもイベントだしねえ…」
ジョミー「じゃあ、祭壇もお遊びなわけ?」
ブルー 「そういうことだね、とりあえずコレって神様はあるけど」
サム 「あるのかよ?」
ブルー 「クリスマスだとキリストだろう? だから一応、神事にも」
他にも祭りは色々あるらしく、神様はTPOで変わるそうでございます。
その場その場のノリですけども…。
ブルー 「お田植え祭はダブルなんだよ、一番はお稲荷さん」
キース 「そんなモノまで祀っているのか、この船は?」
ブルー 「流石にお社は無いってば。でも田んぼにはお稲荷さんだし」
シロエ 「ダブルっていうのは何ですか?」
ブルー 「シャングリラ号の中の田んぼだからねえ、船霊様が入るわけ」
ジョミー「ちょ、船霊様って…」
スウェナ「もしかして機関部のアレ…」
ブルー 「シッ、それ以上は言わないように!」
正体を知らない人も多いんだから、と生徒会長は大真面目。
シャングリラ号の船霊様は機関部の奥の祠に祀られているのですが。
その正体は機関長のゼル先生の主義主張により、招き猫で。
キース 「じゃあ、何か? 俺はアレのために舞うのか、明日?」
ブルー 「お稲荷さんだと思った方が精神的にマシじゃないかな」
ジョミー「ぼくたちの田植えも女装もアレのためなんだ…」
マツカ 「そういうことになりますね…」
ブルー 「こらこら、お祭りは賑やかに! 船霊様のことは忘れる!」
ぼくだってテラズ様事件が無ければ知らなかったし、と生徒会長。
ジョミー「うえ~。テラズ様のことは忘れようよ~」
ブルー 「テラズ様も船霊様も忘れて寝たまえ、明日はお祭り!」
楽しくやらなきゃ、と宣言されて解散となったシャン学メンバー。
明日は朝から着付けだそうです。
茜襷に菅笠の面々にも注目ですけど、花形はキース君ですよね!
※船霊様が気になる方はこちら→ 『連休は穴場で』
テラズ様が気になる方はこちら→『農場夢草子』
どちらもクリックでアーカイブの該当作品に飛べます。
2012/05/23 (Wed)
☆お田植え祭の朝
お祭り好きな船、シャングリラ号。
神様はTPOに合わせて変わるそうですけども、神事とくれば船霊様で。
その正体は機関長のゼル先生の趣味により、招き猫なのでございます。
本日のお田植え祭は船霊様とお稲荷様のダブル祭神。
キース 「くっそぉ、なんで招き猫のために巫女さんなんぞを…」
シロエ 「考えない方がいいですよ。お稲荷さんも祀るそうですし」
ジョミー「どうせ全員女装なんだよ? キースだけじゃなくて」
キース 「お前たちはその他大勢だろうが!」
サム 「四人だけだぜ? お前が抜けるし」
キース 「それだけいれば充分だ! 俺は一人で舞うんだぞ!」
ブルー 「朝も早くからギャーギャーと…。四人舞にしてあげようか?」
キース 「い、要らん! と言うか、あんた、何処から湧いた!?」
ブルー 「まったく、人をゴキブリみたいに…。失礼だよね、ぶるぅ?」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ぼくもゴキブリだもん!」
瞬間移動で湧くんだもん、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」も登場です。
キース 「な、何しに来たんだ、あんたらは!」
ブルー 「着替えの場所まで御案内だよ、急がないと」
ぶるぅ 「係の人たち、とっくに用意して待ってるよ!」
スウェナ「私も見に行っていいのかしら?」
ブルー 「いいんじゃないかな、女性ばかりだし」
男子全員「「「女性!?」」」
げげっ、と仰け反る男子一同。
しかし生徒会長曰く、女装祭りだけに着付けのプロは当然女性で。
ブルー 「巫女さんなんかは男が触れちゃダメだしねえ?」
キース 「その巫女さんが男だろうが!」
ブルー 「お祭りだから無問題ってね。さあ、行こうか」
案内されたのは農業専用スペースに近い会議室。
居並ぶ女性クルーが男の子たちに群がり、サクサクと…。
ジョミー「な~んだ、普通に農民だよね、コレ」
シロエ 「女装って感じはしませんよねえ、良かったです」
絣の着物に茜色の襷、頭に菅笠。
地味な農民に変身できたジョミー君たちですが、キース君は…?
2012/05/24 (Thu)
☆巫女さんに大変身
田植え係のジョミー君たちは茜襷に菅の笠。
無事に変身完了ですけど、巫女さんなキース君は現在進行形で変身中で。
キース 「い、いたたた! 抜ける、髪が抜ける!」
着付け係「もう少し我慢して下さい! 巫女さんですから」
キース 「付け毛なんて聞いてなかったぞ!」
ブルー 「そうだっけ? 伝え忘れたかな、雅楽会員」
巫女さんの髪は長いもの、と生徒会長は申しております。
キース君が巫女さん装束で座らされている鏡台の前には立派な付け毛。
それをキース君の髪につけるべく、女性クルーが奮闘中です。
ジョミー「もうちょっと髪が短かったらカツラで済んでいたのかな?」
ブルー 「多分ね。なまじ黒髪で長さがある分、こだわりたくなる」
サム 「なんか大変そうだよなあ…。ホントに全部結べるのかよ?」
ブルー 「そこはプロだし、やると思うよ」
シロエ 「あっ、ベストな位置が見つかったんじゃないですか?」
スウェナ「そうね、あそこなら纏めて束ねられそうね」
キース 「ひ、引っ張るなぁ!」
痛い、と喚くキース君に構わず髪が纏められ、ゴム紐でキュキュッと。
申し訳程度なポニーテールもどきに付け毛をつけて…。
マツカ 「結び目は飾りで隠れるんですね」
ブルー 「そういうこと! なかなか素敵な巫女さんだよ、うん」
着付け係「では、紅を差しますので唇をキュッと」
キース 「べ、紅だと?」
着付け係「巫女は薄化粧が基本ですから、せめて紅くらいは」
御希望とあればお白粉も、と言われたキース君は真っ青です。
紅だけでいい、と叫んだ結果、綺麗に紅が引かれましたが。
着付け係「それでは仕上げに花簪をお付け致しましょうね」
キース 「花簪!?」
着付け係「お田植え祭には必須です。今年は華やかに藤の花です」
キース 「くっそぉ、どこまでこだわるんだ!」
額にサクッと花簪。
藤の花房が揺れている上に、銀細工のビラビラした飾りまで。
巫女さんに変身を遂げたキース君、間もなく晴れの舞台ですよ~!
2012/05/25 (Fri)
☆お田植え祭、本番
キース君の身支度も整い、お田植え祭の会場に向けて出発でございます。
しかし、いつの間にやら生徒会長の姿が無くて。
ぶるぅ 「ブルー、先に会場に行ってるんだよ」
キース 「なんだか嫌な予感がするが…」
ジョミー「それ以上、悪くなりようがないよ。巫女さんだよ?」
サム 「違いねえな。月刊シャングリラにも載るんだぜ、きっと」
他人事だと笑い合いながら農業専用スペースに行けば…。
雅楽会員「おはようございます。では、舞殿の方へ」
キース 「ま、待ってくれ、まだ心の準備が…」
雅楽会員「じきに祝詞が始まりますので、舞の支度をお願いします」
揃いの直垂の雅楽会員に拉致られてしまったキース君。
ジョミー君たちは田んぼの畦でスタンバイするよう指示されて。
マツカ 「えっと…。キースが舞い始めたら植えるんですよね?」
シロエ 「紐に沿って真っ直ぐ植えればいいそうですし…」
簡単、簡単、と祭壇と舞殿を眺める田植え係の男子たち。
スウェナはクルーたちに混ざって「そるじゃぁ・ぶるぅ」と一緒に見物。
そこへ奥の方から神主姿の一団が行列をなしてゾロゾロと。
ジョミー「えっ、ブルー!?」
サム 「ホントだ、長老の先生たちもいるぜ」
生徒会長もエラ先生たちも白い狩衣に紫の袴。
祭壇の前に並んで二礼、二拍手、一礼して。
ブルー 「かけまくもかしこき…」
朗々と祝詞を奏上している生徒会長。
お坊さんではなかったのか、とシャン学メンバー、仰天ですが。
ブラウ 『お祭りだよ、お祭り。本職なわけないだろう』
ゼル 『わしらも同じじゃ、要は祭りじゃ!』
ノリノリでなんぼ、と何処かで聞いたような思念を寄越す先生方。
祝詞が終わると雅楽が始まり、ジョミー君たちは田んぼへと。
苗を植えながら顔は上げられず、舞殿は全く見えませんが。
ブルー 「ふふ、人選に間違いなしってね」
巫女さんなキース君、檜扇を手に舞っております。
写真に収めるクルー多数で、お田植え祭は大成功です~!
2012/05/26 (Sat)
☆お田植え祭の後は
田植えと神楽舞が無事に終わって、生徒会長たちが祭壇に深々とお辞儀。
それでお開きかと思われましたが…。
ブルー 「さて、ここからが本番ってね」
こっちこっち、と生徒会長がキース君やジョミー君たちを呼び寄せて。
長老の先生方は広大な田んぼの方へと散ってゆきます。
ブルー 「田植えレースをやるんだよ。君たちはぼくのチームだよね?」
キース 「レースだと? 俺に何をしろと!」
ブルー 「君は景気づけに舞ってればいい。戦力はジョミーたちだから」
ジョミー「え?」
ブルー 「決まった範囲に如何に早く植え終わるかが田植えレースだ」
サム 「あー、先生たちが散ったのはソレかよ」
ブルー 「うん。田植え出来るのは田植え機に乗ったクルーだけでさ…」
いつの間にやら田んぼの脇に田植え機が。
クルーが二人ずつ乗っております。
ブルー 「田植え機の構造上、端の方は上手く植えられないから人力だ」
シロエ 「もしかして、そこをぼくたちが?」
ブルー 「察しがいいねえ、お田植え祭で苗を植えた人も田植えOK!」
例年、奪い合いになるそうですけど、今年はコネだ、と生徒会長。
ブルー 「せっかく知り合いが田植え係なんだ、絶好のチャンス!」
ブラウ 「こらぁっ、独占しないで寄越しな!」
ゼル 「そうじゃ、そうじゃ!」
田んぼの畦で先生方が叫んでいますが、生徒会長は何処吹く風で。
ブルー 「優勝チームには賞品が出るよ。分かれたら貰えないかもねえ」
ジョミー「そ、そっか…。負けたチームに所属してたらダメなんだ…」
ブルー 「どうする? ゼルたちにジャンケンで分けられる?」
ジョミー「コネでいい! ブルーのチームで優勝する!」
ブルー 「じゃあ、スタンバイして。植え方はクルーが教えてくれる」
生徒会長、いやソルジャー・チームの田んぼの脇に立つジョミー君たち。
キース君が応援団よろしく神楽舞とあって、雅楽会もやって来ました。
お田植え祭ならぬ田植えレースの栄冠は誰に輝くのか…?
2012/05/27 (Sun)
☆仁義なき田植えレース
お田植え祭の後は田植えレースだそうでございます。
ジョミー君たち、優勝を目指して生徒会長チームに所属いたしましたが。
キース 「例年やっているとか言ったな? GWに見た覚えが無いが」
ブルー 「スケジュールによって変わるからねえ、中継の年が多いかな」
生徒会長たちがシャングリラ号にいない時にはレースの模様は中継で。
お田植え祭での田植え要員を分けるジャンケンも、勿論、地球で。
ブルー 「やっぱりナマが最高だよね。コネもOK、応援係もいるし」
キース 「俺は本当に舞うしかないのか?」
ブルー 「そりゃもう。景気づけには舞が一番!」
頑張って畦で舞いたまえ、と生徒会長。
雅楽会員も敷物を敷いて楽器を構え、いざレース開始!
ブラウ 「ちょーっと汚ないんじゃないのかい? 田植え係を独占だよ」
ヒルマン「いやいや、勝負は分かりませんぞ」
エラ 「クルーは全員熟練ですしね。ジョミーたちは素人ですよ」
ゼル 「田植え機の性能の見せどころじゃ! 今年は自信作なんじゃ」
ブラウ 「あんた、またエンジンとかを改造したね…」
ゼル先生チームの田植え機、速いスピードで進んでおります。
猛スピードとまではいきませんけど、他チームをぐんぐん引き離し中。
ブルー 「うーん、苗の植え方が下手くそだったら反則負けなのに…」
スウェナ「田植え機の改造はアリなのね?」
ブルー 「残念ながらアリなんだ。これはマズイかも…」
負けるかもね、と生徒会長は腕組みをして苦い顔。
一方、畦で舞っているキース君は心に余裕が出て来たようで…。
キース 『おい、俺たちの敗色は濃いぞ』
田植男子『『『えっ?』』』
キース 『ゼル先生のチームが優勢だ。移籍しないか?』
ブルー 「ちょ、ちょっと! 移籍って何さ!」
思念波がダダ漏れレベルなだけに、移籍談義は筒抜けで。
ゼル 「おお、移籍とな! 大歓迎じゃ」
神主姿のゼル先生も大喜び。
ジョミー君たち、植える田んぼを引っ越しですよ~。
2012/05/28 (Mon)
☆裏切り者の勝利
生徒会長チームの旗色悪し、と見て取ったシャン学メンバー。
BGM担当の雅楽会員を引き連れ、ゼル先生チームに移籍でございます。
ゼル 「若いもんは見る目があるのう。頑張るんじゃぞ!」
田植男子「「「はーい!」」」
キース君も扇に鈴にと華麗に舞って士気を鼓舞。
乗り遅れたスウェナだけが生徒会長の隣に残っておりますが…。
ブルー 「どうせ負けだよ、負けるんだけどさ! 移籍だなんて…」
スウェナ「逆転勝ちは有り得ないの?」
ブルー 「無理だね、田植えレースはサイオン禁止!」
宇宙からの中継レースだとサイオンは届きませんし、純粋に田植え勝負。
しかし田植え機の改造はOK。
ブルー 「圧倒的にゼルが優位さ。ただ、たまにトラブることもあって」
ぶるぅ 「今年はダメっぽいね…」
ブルー 「田植え機で植えられない所はジョミーたちが頑張ってるし…」
ゼル 「わはははは! わしの勝ちじゃ、もうすぐゴールじゃ!」
パァーン! と空砲が響き、ゼル先生チームの田植え終了。
かなり遅れて2位に滑り込んだ生徒会長チームなども含め、係員たちが
苗の植え方をチェックしても結果は覆らなくて…。
ジョミー「やったね、ぼくたち優勝だよ!」
ゼル 「ようやった! 今夜はわしが奢ってやるぞ」
シロエ 「わあ、ありがとうございます!」
キース 「俺にも大いに感謝しろよ? 移籍を提案したんだからな」
ゼル先生や田植え機担当クルーと一緒に表彰されたジョミー君たち。
豪華賞品を受け取り、シャンパンシャワーで盛り上がっておりますが。
ブルー 「あれだけ目を掛けてあげたのに…。雅楽会も紹介したのに!」
スウェナ「喜ばれてなかったみたいだけれど…」
ブルー 「まあね。ぶるぅ、みんなの服だけどさ」
ぶるぅ 「シャンパンでビショ濡れだよ?」
ブルー 「着替えが済んだらクリーニングをしておいて」
裏切りの礼はキッチリ返させて貰う、と生徒会長。
明日は地球に帰還ですけど、ジョミー君たちを待つものは?
2012/05/29 (Tue)
☆宇宙からの帰還
シャングリラ号での最後の夜は田植えレースの優勝祝賀会。
ゼル先生の大盤振舞いで大満足のシャン学メンバー、意気揚々と部屋へ。
ぐっすり眠って翌朝は…。
ブルー 「やあ。昨夜はゆっくり眠れたかい?」
キース 「勿論だ。お蔭様で神楽舞も綺麗に忘れたぜ」
ブルー 「それは結構。帰りのシャトルは昼前に出すから」
昼食は早めにね、と生徒会長。
シャン学メンバー、お田植え祭は忘却の彼方で楽しく過ごして。
サム 「食った、食った。また来年まで食えねえしな」
ジョミー「宇宙で食事って気分いいもんね、衛星軌道上でもさ」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ シャトル、準備出来たよ!」
ブルー 「ぼくも一緒に帰るんだ。特に用も無いし」
ソルジャーの正装も不要だったしね、と生徒会長はニッコリと。
皆でシャトルに乗り、無事に着陸。
ブルー 「お疲れ様。バスが来る前にお召し替えかな」
全員 「「「は?」」」
ぶるぅ 「かみお~ん♪」
パァァッと走る青いサイオン。
アッと言う間にキース君は巫女さん装束、男子一同は茜襷に菅の笠。
キース 「な、なんだこれは!」
ブルー 「田植えレースの恨みだよ。裏切り者には罰が必要」
ぶるぅ 「えっとね、シンデレラになってるから!」
ブルー 「午前0時まで絶対、脱げない。存分に家族に笑われたまえ」
男子全員「「「えぇっ!?」」」
ブルー 「帰宅時間は延ばせないよ? 順番に家まで送るから」
シド 「おやおや、みんな大変身か。はい、バスに乗って」
お通夜のような顔の男子を乗せてマイクロバスは発進。
生徒会長、皆の家に出迎えに出るよう電話をしたので更に悲劇で。
ブルー 「スウェナ、写真はバッチリかい?」
スウェナ「撮ったけど…。これ、どうなるの?」
ぶるぅ 「月刊シャングリラに載せるんだって!」
ブルー 「お田植え祭を経て、家族と涙の再会だしねえ…」
愛と感動の物語、と笑い転げる生徒会長。
GWは仮装でフィナーレ、めでたし、めでたしでございます~!
2012/05/30 (Wed)
☆6月の最新号
さて、6月。
中間試験の結果発表も済み、なべてこの世は事もなし…でございますが。
放課後、いつもの溜まり場に向かったシャン学メンバーたちは。
ぶるぅ 「かみお~ん♪ いらっしゃい!」
ブルー 「やあ。月刊シャングリラの最新号が届いているよ」
男子全員「「「!!!」」」
ブルー 「お田植え祭と田植えレースは勿論特集、後日談つき」
ジョミー「ご、後日談って…」
ブルー 「君たちと御家族の涙の再会! 泣き笑いかもしれないけどね」
はい、とテーブルに置かれた冊子に手を伸ばす者がいる筈も無く…。
キース 「俺たちの家にも送ったのか?」
ブルー 「それはもう! 記事になった人の家には送るのが基本」
キース 「す、すると今頃、おふくろと親父は…」
ブルー 「読んでるだろうねえ、君の活躍。神楽舞の写真は多いし」
キース 「巫女さん役としか言ってないのに、どうしてくれる!」
ブルー 「御本尊様の前で記念に舞えば? 衣装はあるだろ」
キース 「あんたに着せられたお蔭でな!」
巫女さん姿で元老寺に帰ったキース君、イライザさんに大ウケで。
午前0時にやっと脱げた衣装は大切に保管されているのだそうです。
ブルー 「舞うんだったら神楽鈴と檜扇を届けさせるよ」
キース 「要らん!」
ブルー 「そう言わずに…。雅楽会員も派遣しようか、支部の方から」
キース 「お断りだ!」
ブルー 「うーん、残念…。最近はお寺と神社のコラボもアリなのに」
最先端だよ、と例を挙げてゆく生徒会長。
有名な神社のお祭に法要がセットでつくとか、そういうのもアリで。
ブルー 「いいと思うんだけどなぁ、本堂で神楽舞っていうのも」
キース 「それが本物の巫女さんならな!」
シロエ 「住職の息子が女装で舞うのは変かもですねえ…」
ブルー 「お寺と檀家さんとの垣根が低くなりそうだけど?」
お寺ってヤツをもっと身近に、と生徒会長は申しております。
確かに観光寺院以外のお寺は身近なものとは言い難いですよねえ…。
2012/05/31 (Thu)