☆9月の始まり
ハーレイの日のスカイダイビングで大いに盛り上がった夏休み。
恒例のマツカ君の海の別荘ライフなども堪能しまして、今日からは9月。
とはいえ、土曜でございますので。
ジョミー「うん、今年は得した気分だよねえ」
ブルー 「夏休みが少し多めって? 特別生のくせに」
シャン学メンバー、生徒会長の家に遊びに来ております。
ブルー 「出席義務が無いんだからさ、夏休みも何も無いって言うのに」
ジョミー「でも…。時間割とかを配られちゃったら休みにくいよ」
シロエ 「それにグレイブ先生ですしね、担任が」
サム 「うんうん、学生の本分は勉強だ! が、口癖だもんな」
スウェナ「出席簿にも名前が載ってるものね…」
キース 「俺は大学と掛け持ちしたしな…。出席日数は今も気になる」
マツカ 「キース、頑張っていましたもんね。凄かったですよ」
ブルー 「よく頑張ったとは思うけど…」
ぼくのオススメはサボリなんだ、と生徒会長。
ブルー 「暑い間は夏休みにして、寒くなったら冬休みとか」
キース 「それで秋休みもあったりするのか?」
ブルー 「決まってるだろう、秋休みは実在するんだよ?」
シロエ 「二学期制の学校ですよね」
ブルー 「君たちの年代で言うとそうなるねえ…」
ジョミー「えっ、そうじゃないヤツもあったわけ? 秋休みに?」
ブルー 「地域によるけど、三学期制でも存在したよ」
サム 「なんだ、それ? 秋に休んでも意味ねえだろ?」
ブルー 「あるんだな、それが。いや、あった……と言うべきか…」
ジョミー「どんな意味が?」
ブルー 「お手伝いだよ、農作業の! 農繁期だから」
全員 「「「お手伝い!?」」」
そんな休みは嬉しくない、と頭を抱えるシャン学メンバー。
ブルー 「今で言うならキースなんかは取ってもいいかも、秋休み」
サム 「秋のお彼岸があるもんなあ…」
キース 「断固断る!」
絶対に嫌だ、とキース君。
休みを取ってお手伝いなんて、全然楽しくないですもんねえ…。
2012/09/01 (Sat)
☆秋休みは如何?
サボリ大好きな生徒会長のオススメは秋休み。
本来は農繁期に家の手伝いをするためのものだったそうで、対象者は…。
ブルー 「うん、取るならキースがお似合いだね。連休でもあるし」
シロエ 「秋分の日ですもんねえ、秋のお彼岸」
キース 「なんでそういう展開になる! 俺はただでも忙しいんだ!」
サム 「ああ、お彼岸でも墓回向がついてくるもんな」
ブルー 「棚経が無い分、お盆よりかは随分楽だよ」
マツカ 「棚経は大変ですからね。檀家さんを全部回るんでしょう?」
キース 「言わないでくれ、こないだ終わったばかりなんだからな」
聞いただけでも憂鬱になる、とキース君は呻いております。
ブルー 「だったら、やっぱり秋休みを取れば? 少しは楽だよ」
スウェナ「学校に来なくて済むものね。休んでしまえば?」
キース 「休んだら親父にこき使われるだけで終わるだろうが!」
サム 「大変なんだなぁ、本職になると…」
ブルー 「そりゃね、お寺を預かるわけだし責任もあるさ」
お寺は総本山からの預かりもの、と生徒会長。
個人の所有物ではないらしいです。
ブルー 「だから色々頑張らないと…。あ、そうだ」
キース 「なんだ?」
ブルー 「いや、君じゃなくて。サムとジョミーも秋休みはどう?」
サム 「えっ、俺が?」
ジョミー「なんでぼくが?」
ブルー 「ほら、二人とも僧籍だろう? 元老寺に行ってお手伝い!」
キース 「それは助かるな。ジョミーはともかく、サムは使える」
サム 「そ、そうかな…」
ジョミー「却下だし! 夏休みだけで充分だよ!」
ブルー 「いい案だと思ったんだけど…。秋休みを取って楽しくお彼岸」
シロエ 「もしかして、ぼくたちまで巻き込む気ですか?」
ブルー 「お寺に親しむいい機会だよね。お墓参りにお彼岸の法要」
キース 「俺の家に来て遊ぶつもりか、罰当たりな!」
許さんぞ、と拳を握り締めているキース君。
秋のお彼岸にみんな揃って秋休みとは、あまりに抹香臭いのでは…。
2012/09/02 (Sun)
☆遊ぶなら、お寺
秋のお彼岸に合わせて秋休みを、と言われてしまったシャン学メンバー。
ただでもサボリは後ろめたいのに、抹香臭い秋休みなどは…。
ジョミー「却下だし! キースに言われなくても却下!」
キース 「当然だ! 野次馬根性で来られても迷惑なだけだ」
ブルー 「うーん…。ぼくが法要に出るって言っても?」
キース 「親父は歓迎するだろうがな、あんたの世話係は俺だろうが!」
あれやこれやと手を焼かされるに決まっている、とキース君。
緋色の衣の生徒会長、なまじ偉いだけに完全にお客様ですし…。
ブルー 「バレちゃったか。いい案だと思ったんだけど…」
キース 「俺の家はあんたの別荘じゃないっ!」
ブルー 「なるほどねえ…。仕方ない、他のお寺で遊ぼう」
キース 「お彼岸にか? あんたは何を考えてるんだ!」
高僧のくせに、とキース君は詰っておりますが。
ブルー 「何もお彼岸とは言っていないよ。今度の日曜はどうだろう」
全員 「「「は?」」」
ブルー 「9月9日が何の日だったか覚えていない?」
シロエ 「えーっと…。重陽の節句でしたか?」
キース 「そう言えばそんな日だったか…」
ジョミー「チョウヨウの節句…。去年にちょこっと聞いたような…」
ブルー 「長寿を祝う菊の節句さ。盛大にやるお寺があるんだ」
サム 「お寺かよ?」
ブルー 「うん。知る人ぞ知るイベントなのさ」
スウェナ「何があるわけ?」
ブルー 「重陽に因んだ能の奉納とかもあるけど、菊の争奪戦」
全員 「「「争奪戦?」」」
ブルー 「法要に使った菊を善男善女が奪い合うんだよ」
それはもう仁義なき戦いで…、と生徒会長は申しております。
押し合いなんかは序の口だそうで、圧死しそうな勢いなのだとか。
ブルー 「でも御利益があるからねえ…。欲しい人は必死なわけ」
キース 「餅撒きみたいな行事なのか…」
餅を撒いたり散華を撒いたり、お寺の行事は様々です。
菊の争奪戦があるお寺に出掛けて、何をしようというのやら…。
2012/09/03 (Mon)
☆お寺な行き先
お彼岸合わせの秋休みの提案を却下されてしまった生徒会長。
その代わりにと持ち出してきたものはお寺で、菊の争奪戦がどうとか…。
ブルー 「9月9日なら日曜だしさ、学校を休む必要もないよね」
ジョミー「待ってよ、行き先はお寺だなんて却下だし!」
スウェナ「ジョミーには鬼門だったわねえ…。お寺」
シロエ 「節分の時も色々ありましたしね。今度もアウトかも」
ブルー 「ああ、その点は大丈夫。今回の振舞い酒は制限つきだ」
キース 「そうなのか?」
ブルー 「菊酒は甘酒とは違うからねえ、飲み放題とはいかないさ」
基本はお一人様一杯限り、と生徒会長は笑っております。
ブルー 「スーパーの特売品ってわけじゃないけど、数に限りが」
キース 「なるほどな…。酔っ払うほどには飲めないわけだ」
シロエ 「それならジョミー先輩も安心ですね」
マツカ 「酔っ払うと漏れなく坊主宣言ですからね…」
ジョミー「言わないでよ、ぼくは覚えていないんだから!」
スウェナ「だけど目撃証言多数よ、きっと密かに願望なのよ」
サム 「分かる、分かる。普段は照れ隠しで言わないだけだよな?」
俺と一緒に修行しようぜ、とサム君の顔がニヤニヤと。
ジョミー「なんでそういうことになるのさ! お断りだよ!」
ブルー 「本当に往生際が悪いね、ジョミーは。ま、気長に待つけど」
ジョミー「待たなくていいっ!」
キース 「おい、ブルーから逃げ切れるなんて思うなよ?」
サム 「そうそう、いつかはきっと坊主なんだぜ」
シロエ 「応援してますよ、ジョミー先輩!」
スウェナ「そうねえ、逃げられるわけがないものねえ…」
ジョミー「お断りだってば!!!」
絶対に嫌だ、と喚くジョミー君ですが。
ブルー 「ふうん…。だったら9月9日は仲間外れで」
ジョミー「えっ?」
ブルー 「お寺は却下なんだろう? 君は自宅でゆっくりしたまえ」
他のみんなはお出掛けだ、と生徒会長はニッコリ笑顔。
お寺は却下なジョミー君だけ仲間外れ…ですか?
2012/09/04 (Tue)
☆仲間外れの危機
お寺に行くのは絶対に嫌だ、と主張しまくるジョミー君ですが。
他のみんなは9月9日にお出掛けするのに、仲間外れにされそうな空気。
ブルー 「ジョミーは放ってみんなで行こう。それでいいよね?」
キース 「そうだな、嫌がるヤツを連れて行ってもうるさいだけだ」
サム 「たまにはジョミー抜きっていうのも楽しそうだぜ」
シロエ 「キース先輩が欠けていたことは何度もありましたけど…」
スウェナ「ジョミーは皆勤賞だったものね。家で留守番していなさいよ」
マツカ 「きっとその方がいいですよ。万一ってこともありますから」
ブルー 「君子危うきに近寄らず…ってね。じゃ、そういうことで」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 他のみんなでお出掛けだね!」
ジョミー「ちょ、ちょっと待ってよ、なんで留守番?」
ブルー 「嫌な所に行く必要は無いだろう? なにしろお寺だ」
サム 「後で話が合わないかもなぁ、留守番になると」
キース 「自業自得だ、放っておけ。で、何処へ行くんだ?」
ブルー 「十三参りで有名なお寺さ。ぼくたちとは宗派が違うけどね」
シロエ 「ああ、あそこですか」
キース 「重陽の行事をやっていたとは知らなかったな…」
それは見に行く価値がある、とキース君は言っております。
他のメンバーも期待に満ちた顔つきですが…。
ジョミー「行くよ、ぼくも一緒に行くってば!」
ブルー 「おや。お寺は却下と言わなかったかい?」
ジョミー「南無阿弥陀仏のお寺じゃないなら無問題だよ!」
サム 「へえ…。節分で行ったお寺は南無阿弥陀仏じゃなかったぜ?」
ジョミー「飲まなきゃ問題ないわけだし!」
キース 「確かに菊酒一杯くらいで酔いはしないか…」
ジョミー「それよりも菊の争奪戦だよ、そういうのは自信あるってば!」
ブルー 「やれやれ、菊はサッカーボールじゃないんだけどねえ?」
丁重に扱わないと滅茶苦茶に、と生徒会長は申しておりますが。
俄然、行く気になったジョミー君、果たして心得ているのやら…。
2012/09/05 (Wed)
☆お寺に出掛けよう
行き先は南無阿弥陀仏のお寺ではない、と聞かされたジョミー君。
それなら安全圏とばかりに行く気になった上、菊の争奪戦がお目当てで。
ジョミー「それってさあ、沢山ゲットすればいいわけ?」
ブルー 「罰当たりな…。御利益グッズだと言っただろう?」
サム 「一人一本限りかよ?」
ブルー 「そうなるね。ただ、手に入れられない人も多いから…」
分けてあげれば喜ばれるよ、と生徒会長は申しております。
ブルー 「重陽の菊は不老長寿のお守りなんだ。君たちの場合は…」
シロエ 「あまり関係無さそうですね」
キース 「どうやら歳は取らないようだし、寿命も長いか…」
ブルー 「だから争奪戦に負けた人に分けてあげるのさ」
これも一種のボランティア、と言われてみればそのとおりかも。
ブルー 「せっかくのお守りなんだからねえ、扱いの方は大切に!」
スウェナ「サッカーボールじゃないっていうのはそのことね」
ジョミー「分かったよ、ちゃんと大事に扱うってば!」
キース 「そして寺の行事に参加する…、と。気を付けろよ」
シロエ 「お坊さん多数でしょうからねえ…」
サム 「菊酒もあるって言うもんな。要注意だぜ」
ジョミー「一杯だけなら酔っ払わないよ!」
というわけで、9月9日はお寺にお出掛けに決定です。
キース 「持ち物は特に要らないのか? たとえば数珠とか」
ブルー 「法衣で出たけりゃ数珠も要るけど…。お勧めしないな」
素人さんには宗派の区別がつかないから、と生徒会長。
ブルー 「関係者まで菊を奪い合ってたなんてスキャンダルだよ」
サム 「そりゃそうだよなぁ、見た目は普通に坊主だもんな」
キース 「分かった、俺が坊主だとバレそうなモノは自粛する」
ブルー 「数珠レットくらいはいいと思うな、素人さんも愛用してるし」
それ以外のグッズは封印すること、と生徒会長は厳しく指導。
集合場所と時間も決まって、後は9月9日を待つのみ。
重陽の節句、どんなイベントなんでしょうねえ?
2012/09/06 (Thu)
☆お寺へ出発!
やって来ました、9月9日の日曜日。
土曜日も遊びまくったシャン学メンバー、今日も朝から燃えております。
ジョミー「よーし、争奪戦には負けないぞー!」
ブルー 「宗教行事だというのを忘れちゃダメだよ? 暴れないように」
サム 「ジョミーが暴れるのは酔った時だろ」
スウェナ「そうそう、緋色の衣を目指して頑張るぞー! ってね」
シロエ 「服は緋色が最高ですよね、と叫んだこともありましたよねえ」
ジョミー「ぼくは覚えてないってば!」
キース 「しかし親父は覚えているぞ? 正月から坊主宣言だったし」
ジョミー「もう時効だよ、半年以上も経ってるんだし!」
ブルー 「次から誓約書を書かせようかな、そういう時は」
シロエ 「いいですね、それ。ハンコは拇印で」
ジョミー「やだよ、絶対書かないから!」
キース 「いいや、あの勢いなら調子に乗って書くと思うぞ」
サム 「本当に坊主を目指していないのかよ? 怪しいよな」
マツカ 「心の底では帰依しているかもしれませんね。阿弥陀様に」
ジョミー「冗談じゃないよ!」
阿弥陀様も坊主も絶対嫌だ、と叫んではいても僧籍なのがジョミー君。
生徒会長に強引に出家させられ、『徐未』という立派な法名までが。
ブルー 「まあ、こればっかりは御仏縁だし…。気長に待つさ」
キース 「いいのか、それで? 何年かかるか分からないぞ」
ブルー 「きっといつかは緋の衣! それを楽しみに待つのも一興」
サム 「でも、今日のお寺は別口だよな?」
ブルー 「うん。ソレイド八十八ヶ所と同じ系列だよ。より古いけど」
キース 「そういえば、あそこは古義だったか…」
サム 「古義って何だよ?」
ブルー 「お大師様の時代より前からあるってことさ」
その割に最先端のモノもあるんだけどね、と生徒会長は路線バスへ。
ブルー 「うん、いい具合に空いてるかな」
降りるのは終点近くだから、と最後尾に陣取るシャン学メンバー。
由緒あるお寺みたいですけど、最先端のモノって何?
2012/09/07 (Fri)
☆十三参りのお寺
路線バスに乗って辿り着いた先は、節分に行ったお寺の近くの観光名所。
そこから橋を渡った対岸の山に目的のお寺がございます。
ブルー 「さてと…。十三参りに来たんじゃないから注意は不要か」
シロエ 「あれは振り向いたら終わりなんですよね、帰り道で」
ブルー 「そう、この橋を渡り終えるまでの間は…ね」
スウェナ「振り返ったらバカになっちゃうのよね?」
ブルー 「うん。御本尊様に頂いた智恵をお返ししてしまうんだ」
サム 「あれは本気で怖かったぜ。でも、振り向いてないのになあ…」
俺の智恵は何処に行ったんだろう、とサム君は首を捻っております。
ジョミー「返さなくてもその程度って話なんじゃないの?」
サム 「お前がそれを言うのかよ! ブルーがいなけりゃ赤点だろ!」
ジョミー「今は関係無いもんね。授業の中身は頭にバッチリ!」
ブルー 「何度も1年生をやっているんだ、覚えて当然」
キース 「ブルーのフォローもあったしな。それと智恵を返す話だが…」
シロエ 「返したんですよね、キース先輩は」
マツカ 「返したんですか!?」
キース 「おふくろがうるさく言うものだから、俺は自力で頑張ろうと」
ブルー 「あえて振り向いたというわけか…」
キース 「そういうことだ。おふくろには思い切り叱られたがな」
サム 「返しちまっても天才かよ…。なんか人生、不公平だぜ…」
ワイワイと思い出話を繰り広げながら橋を渡って参道へ。
ジョミー「あ、そうだ。すっかり忘れちゃっていたんだけど…」
キース 「何をだ?」
ジョミー「ブルーが言ってた話だよ。バスに乗る前に」
最先端のモノって何さ、とジョミー君に生徒会長が指差したものは。
ブルー 「あそこに小さな神社があるだろ? あれがそうだけど」
ジョミー「普通だよ?」
ブルー 「甘いね、あれは電電宮と言って電波の神様」
全員 「「「電波!?」」」
そんな神社が存在するのか、と誰もが仰天。
古いお寺に電波の神様。それは確かに最先端…。
2012/09/08 (Sat)
☆本日、重陽の節句
9月9日、重陽の節句にシャン学メンバーがやって来たのは立派なお寺。
ソレイド八十八ヶ所で知られたお大師様よりも古いそうなのですが…。
キース 「電波の神様は知らなかったぞ。本当なのか?」
ブルー 「宗派が違うし、知らない方が普通かな。でも本当だよ」
サム 「ホントに電波の神様なのかよ、だったら新しい神社だよな?」
ブルー 「んーと…。今のお社が出来たのが60年くらい前だったかと」
全員 「「「60年!?」」」
ブルー 「そう。150年ほど前に火事で焼けちゃって、暫く仮宮」
ジョミー「なんか新しくないんだけど…」
シロエ 「でも、会長はそれより前から生徒会長な筈ですよ」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ブルーは300年以上も生徒会長だもん!」
ジョミー「あ、そっか。じゃあ、ブルーよりかは新しいんだ?」
ブルー 「失礼な…。人を年寄りみたいに」
それに神社はもっと古い、と唇を尖らせる生徒会長。
ブルー 「この神社はねえ、千年以上も前から此処にあるんだから」
全員 「「「せ、千年!?」」」
ブルー 「千二百年近いかな? とにかく由緒正しい神社なんだよ」
ジョミー「せ、千二百年前に電波の神様って…」
キース 「そんな時代に電波の概念があったのか、おい?」
ブルー 「あるわけないだろ、電波は後付け設定さ」
シロエ 「それじゃ電電宮って名前も後付けですか?」
ブルー 「そこは微妙な所かなぁ…。明星社って名前だったけど…」
ジョミー「だったけど……何さ?」
ブルー 「祭られていたのは電電明神だったわけ」
キース 「分かったぞ! 雷神というオチなんだな?」
ブルー 「残念でした。虚空蔵菩薩様が明星にお姿を変えて御顕現」
そのお姿である明星天子が電電明神、と言われましても。
ジョミー「うーん、頭が混乱してきた…」
ブルー 「本堂に行けばスッキリするよ、菊の香りで一杯だから」
生徒会長は先に立って歩いてゆきますが。
重陽の節句って、菊だらけのイベントなんですかねえ?
2012/09/09 (Sun)
☆お寺と商売
千二百年ほども昔の時代から電波の神様をお祭りするお寺。
いくら後付け設定だからと言っても、最先端なのは間違いない事実で…。
キース 「電電明神だから電電宮か…。でもって電波の神様ときたか」
ブルー 「なかなか商売上手だろ? やっぱりこうでなくっちゃね」
シロエ 「商売上手って…。お寺ってそういうものなんですか?」
ブルー 「それはもう。維持管理にもお金がかかるし」
キース 「確かにそこは間違いないな。ましてこれほどの広さだと…」
ブルー 「そう、維持費も馬鹿にならないよ。稼がなくっちゃね」
サム 「十三参りがあるじゃねえかよ」
ジョミー「大抵の子供は来るんだからさ、充分じゃないの?」
キース 「甘いな。大寺院の経営ってヤツは大変なんだ」
何十年、何百年に一度の大修理とか、とキース君。
キース 「そういう時には大金がかかる。日頃からの備えが大切だ」
ブルー 「修理に合わせて募る寄付金だけでやるのは無理だよ」
シロエ 「えっ、でも…。色々なパターンで集めまくるじゃないですか」
スウェナ「瓦に名前を書いてあげますとか、そういうのよね?」
マツカ 「写経を納めるタイプもありますよ」
ジョミー「修学旅行生でも記念に払えそうな額からあると思うんだけど」
ブルー 「ダメダメ、そんなのじゃ全然足りない」
キース 「塵も積もれば山となる、と言ってもな…。桁が違うんだ」
サム 「あー、そっか…。家を一軒建てるのとは全然別物だもんな」
ブルー 「大工さんだって専門の人が必要なんだよ」
キース 「場合によっては建材から探さなくてはならないんだぞ」
寺院建築は奥が深い、とキース君は人差し指を立てて。
キース 「元老寺くらいの規模の寺の本堂でもピンキリなんだぜ」
ジョミー「なに、それ…」
キース 「建てるのに必要な経費の額だ。凝り始めたらキリがない」
ブルー 「建てた後は維持費がかかるしね」
電電宮は凄いんだよ、と生徒会長。
もしかしなくても稼ぎが半端じゃない神社ですか?
2012/09/10 (Mon)
☆商売の秘訣
生徒会長とキース君曰く、お寺の維持に金銭は必須だそうでございます。
商売が下手だと修理もままならないらしく…。
ブルー 「電電宮は放っておいても年々稼ぎが増えるからねえ」
キース 「放っておいても? …どういうことだ?」
経営努力は必要だろう、とキース君は大真面目。
キース 「霊園だって今どきのヤツは宣伝しないと売れないぞ」
サム 「キースの所も広告とかを出してるのかよ?」
キース 「いや、ウチは檀家さんのクチコミだけで充分だが」
ブルー 「そこそこ歴史があるお寺だからこそ出来ることだよ」
シロエ 「それじゃ電電宮も由緒あるお寺にあるからいけるんですか?」
ブルー 「違うんだな、これが。電波って所が重要なんだよ」
今どきは何でも電波に電気、とニッコリ笑う生徒会長。
ブルー 「なにしろ電電宮だから…。電気と電波の守り神ってことで」
キース 「後付け設定だとか言わなかったか?」
ブルー 「こういうモノはね、言った者勝ち! だから独り勝ち状態で」
ジョミー「分かった、お賽銭が半端じゃないんだね?」
ブルー 「お賽銭なんてレベルじゃないよ。維持のための会まであるさ」
全員 「「「は?」」」
ブルー 「電電宮奉賛会と言ってね、お供えも整備もバッチリだってば」
キース 「それ専門の会があるのか…」
ブルー 「年に一度は会員が集まって住職が祈祷。御布施がドカンと」
マツカ 「御布施ですか…。それは凄そうですね」
ブルー 「しかも会員はテレビ局とか電気関連事業の会社だ」
シロエ 「つまり会社が儲かれば儲かるほど御布施も増えるわけですね」
ブルー 「おまけにオンリーワンだろう? 会員数は増える一方」
キース 「あんな小さな神社がか…。分からんものだな」
ブルー 「つまり世の中、アイデアなんだよ。元老寺も何か考えたら?」
キース 「銀青様の台詞とも思えんな…」
新規の商売で儲けてどうする、とキース君は顔を顰めております。
檀家さんだけで充分ですか、そうですか…。
2012/09/11 (Tue)
☆商売はじめました
お寺の維持管理にお金は不可欠。
電電宮で抜かりなく稼ぐお寺を舞台に、アイデア次第だと説く生徒会長。
ブルー 「アイデアにも色々あるだろう? そこの所を考えなくちゃ」
キース 「俺は新規で商売を始めるつもりはないぞ」
シロエ 「お守りを売るのもアウトってわけじゃないでしょう?」
キース 「何のお守りを売れと言うんだ、ウチの寺で!」
ジョミー「王道は合格祈願じゃないの?」
スウェナ「縁結びも人気が高いわよ」
キース 「阿弥陀様がどう結び付くんだ、その二つに!」
無責任に発言するな、とキース君は眉を吊り上げておりますが。
ブルー 「うーん…。それを言い出すと璃慕恩院の立場がねえ…」
キース 「…はぁ? あんた、正気か?」
ブルー 「その台詞、そっくりそのまま君に返すよ」
キース 「なんでそうなる!」
ブルー 「学校と坊主の掛け持ちで忙しいのは分かるけどねえ…」
宗報には目を通したまえ、と生徒会長は深い溜息。
ジョミー「宗報って何さ?」
ブルー 「総本山の発行物さ。月刊シャングリラの璃慕恩院版」
キース 「俺は毎月読んでるぞ! もちろん親父もだ」
ブルー 「その割に分かっていないようだけど? さっきの話だと」
キース 「商売を始めましたなどとは一切書かれていない筈だが?」
ブルー 「…やっぱりアッサリ見落としてたか…」
キース 「ま、まさか…。本当に商売を始めたのか? 璃慕恩院が?」
ブルー 「始めちゃったんだよ、つい最近…ね」
これがなかなか素晴らしい、と生徒会長はニコニコ顔で。
ブルー 「明神様のお社があるだろう? あそこで各種祈願と御祈祷」
キース 「御本尊様…とは違うのか……」
ブルー 「阿弥陀様に合格祈願とか縁結びとかを頼むのはちょっと」
サム 「それで神社の出番なのかよ?」
ブルー 「うん。考えたよねえ、要受付で護摩も焚くんだ」
信者の人から観光客まで需要は沢山あるそうです。
総本山でも新規の商売。元老寺も何か考えるべき時代なのかも?
2012/09/12 (Wed)
☆商売の黒幕
総本山の璃慕恩院でも新しい商売を始める時代。
お寺を末永く維持するためには、アイデアが不可欠のようでございます。
ブルー 「元老寺もいずれは何か考えた方がいいかと思うよ」
キース 「これでも安定経営なんだが…。宿坊もあるしな」
ブルー 「ダメダメ、人は世につれ、世は人につれ」
総本山でも護摩なんだから、と生徒会長は指をチッチッと。
ブルー 「ぼくたちの宗派に護摩は無いだろ? 基本はね」
キース 「ああ。途中から宗旨替えしてきた寺は別だが」
シロエ 「そうなんですか? そういえば聞いたような気も…」
ブルー 「教義に護摩焚きは無いんだよ。だから習わないね」
サム 「へえ…。じゃあ、俺やジョミーが大学とかに入っても?」
キース 「そういう講義は一切無いな。だから俺だって作法は知らん」
ブルー 「ふふ、ぼくは護摩焚きもバッチリだけどねえ?」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ブルーは恵須出井寺にもいたもんね!」
とっても厳しいお寺なんだよ、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
璃慕恩院の開祖様も修行なさったという郊外の山の頂上のお寺です。
ジョミー「思い出したよ、校外学習で行ったっけ…」
スウェナ「写経と座禅だったわねえ…」
ブルー 「別の宗派でも修行をするとね、こう、色々と役に立つわけ」
キース 「おい。璃慕恩院の護摩、あんたの仕業じゃないだろうな?」
ブルー 「えっ? 違うよ、多分」
キース 「…多分だと?」
ブルー 「うん。前に老師と話をしててさ、護摩は目立つよって…」
キース 「焚きつけたのか?」
ブルー 「ち、違うってば、護摩は派手だから人目に立つって!」
キース 「………。それだな、老師が覚えてらっしゃったんだ」
ブルー 「そうなる…のかな?」
キース 「決まってるだろう、老師以外の誰に決定権がある!」
ブルー 「そうかも…。じゃあさ、何か考えてあげようか?」
元老寺用のアイデアを、とニッコリ笑う生徒会長。
緋の衣には逆らえないだけに、キース君の未来に赤信号?
2012/09/13 (Thu)
☆お客を呼び込め
璃慕恩院が新しく始めたという護摩焚き、一枚噛んでいたのが生徒会長。
本人に自覚は無かったのですが、どうやらアイデア源だったようで。
ブルー 「うーん…。元老寺だと何がいいかなぁ?」
キース 「よ、余計なことはしなくていいっ!」
ブルー 「そうかなぁ? アドス和尚も喜んでくれると思うけど」
キース 「やめてくれ、親父はあんたのファンなんだぞ!」
言われたら何でも通りそうだ、と頭を抱えるキース君。
生徒会長にアイデアを提供されたら、元老寺まで牛耳られるのは確実で。
ブルー 「やっぱり護摩が集客力があるかもね」
キース 「俺も親父も護摩焚きは出来ん!」
ブルー 「だからさ、今から君が修行してきて護摩の作法を覚えるんだ」
サム 「それってカッコイイじゃねえかよ、やっちまえよ」
ジョミー「うんうん、ぼくにばっかり修行って言わずにお手本に」
ブルー 「行くなら一筆書いてあげるよ、恵須出井寺にさ」
キース 「じょ、冗談だろう? 俺はだな、元老寺だけで手一杯で…」
ブルー 「そうかい? だったら布教師を目指すのはどうだろう」
全員 「「「布教師?」」」
ブルー 「ぼくたちの宗派の教えを説くのが布教師さ。法話の専門家」
でもって元老寺で毎月、説法会を…と生徒会長は申しております。
ブルー 「美坊主図鑑が人気の時代だ、人を呼べるのは間違いないよ」
全員 「「「美坊主図鑑!?」」」
キース 「あれは外道だ、俺は認めん!」
シロエ 「美坊主図鑑って何なんですか?」
ブルー 「名前そのまま。イケメンのお坊さんの図鑑っていうわけ」
説法会をしているお寺や、座禅体験が出来るお寺。
宿坊に泊まれるお寺などなど、敷居の低いお寺のイケメンを図鑑に掲載。
ブルー 「元老寺も宿坊をやっているんだ、載せて貰えば良かったのに」
キース 「客寄せパンダの真似が出来るかあ!」
俺はあくまで坊主なんだ、とキース君。
美坊主図鑑とやらの取材申し込みが来たようですけど、断りましたか…。
2012/09/14 (Fri)
☆イケメンで行こう
シャン学メンバーが知らない間に、世間では美坊主図鑑が人気。
イケメンのお坊さんを掲載していて、会いに行こうというコンセプトで。
ブルー 「その様子だと、取材の申し込みを蹴ったのは君か…」
キース 「親父も一応、渋っていたぞ」
ジョミー「一応って?」
キース 「お寺に親しみを持って貰うという趣旨には賛同してたんだ」
ブルー 「例によってアレだね、君のその髪がネックになった、と」
キース 「そういうことだ。親父は未だに恥晒しだと言ってるし…」
スウェナ「だけど美坊主っていうんだったら無問題じゃない?」
ブルー 「うん、有髪が似合う坊主はポイント高いんだよ」
キース 「その辺が親父は頭が固いんだ。ブルーのファンの割にはな」
生徒会長こと銀青様はバッチリ有髪でございます。
それが売りでもあるのですけど、アドス和尚にとっては別件。
キース 「何かある度に剃ってしまえとうるさくて…」
ブルー 「だったら是非とも載るべきだったね、美坊主図鑑に」
キース 「なんでそうなる!」
ブルー 「だってイケメンが売りなんだよ? 写真そのままの姿が大切」
有髪で美坊主図鑑に載ったら守り抜くのがお約束、と言われてみれば…。
キース 「そ、そういう解釈もあったのか…。載ったら髪を守れたか…」
ブルー 「後悔先に立たずってね。イライザさんは賛成してただろうに」
キース 「何故おふくろの意見を知っている!?」
ブルー 「女性の心理も分からない男はモテないよ。単なる推測」
キース 「くっそぉ…。巷の女性を味方につければ良かったのか…」
ブルー 「次の機会があった時には断らないで受けるんだね」
キース 「分かった。心に留めておくことにする」
ブルー 「あ、でもさ。表向きは元老寺の未来のためにと受けること!」
髪を守れて千客万来、と生徒会長は得意顔。
美坊主図鑑とやらの第二弾が出たら、キース君が載るかもしれません。
商売繁盛の秘訣はまず集客力。電電宮や護摩の代わりにイケメンで勝負?
2012/09/15 (Sat)