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シャングリラ学園つれづれ語り

☆商売上手なお寺


電電宮から美坊主図鑑へと話が派手に飛躍している間に、本堂が間近に。
既に先客が詰め掛けているようでございます。

ブルー 「ほらね、法要まではまだ時間があるのに人が来てるだろ?」
ジョミー「みんな菊の花目当てで来てるわけ?」
ブルー 「観光客もいるけど、基本はそうだね。後は茱萸袋」
全員  「「「は?」」」
ブルー 「グミぶくろ、って言ったんだよ。重陽限定のお守りでさ」
キース 「それは今日しか売らないのか?」
ブルー 「うん。装飾品としてなら香木店でも扱うけれど」

お守りとして売られているのはレアケースだそうでございます。

スウェナ「グミ袋って、どんなものなの?」
ブルー 「お香を詰めた袋に菊とグミの造花がついてて、長寿のお守り」
シロエ 「そっちは菊と違ってお金を払えば買えるんですね?」
ブルー 「でも沢山は売らないよ? お守りにしては高い部類だし」
キース 「そうなのか?」
ブルー 「観光寺院の拝観料だと四人前だね、茱萸袋1個で」
サム  「それってメチャクチャ高いじゃねえかよ!」
ジョミー「えーっと、えーっと…。お札が二枚も要るんだよね…」
スウェナ「ちょっとしたランチが食べられちゃうわよ、洒落たお店で」

なんという価格設定なのだ、と呆然とするシャン学メンバー。
いくら一日限りの限定品でも、もう少しお安くならないのでしょうか?

ジョミー「暴利だよ、それ!」
キース 「そこまでは言わんが、高すぎるという気はするな…」
ブルー 「ところがコレが安いんだな。香木店の茱萸袋だとその十倍だ」
全員  「「「十倍!?」」」
ブルー 「腕利きの職人さんが作ったヤツだと三十倍近い」
シロエ 「その値段を出しても御利益はゼロなんですよね、お店のは」
ブルー 「縁起物だからゼロじゃないけど…」

御祈祷とかはしてないし、と生徒会長は笑っております。
お守りにしては高い値段でも御祈祷済みというのは有難いもの。
何処までも商売上手なお寺に来ちゃったみたいですねえ…。

2012/09/16 (Sun)

 

☆商売の限界


重陽限定のお守りだという茱萸袋。
お値段は非常にゴージャスですけど、市販品より安い価格で御祈祷済み。
これを目当てにやって来る人がいるというのも納得ですが。

キース 「しかしだな…。その値段の差は何なんだ。普通は逆だぞ」
ブルー 「御祈祷済みの方が高いって?」
スウェナ「だって、そうでしょ? 節分の恵方巻でもそうよ」
シロエ 「ですね、開運祈願の御祈祷済みを謳う恵方巻は高かったかと」
サム  「御祈祷済みってのはアレだろ、プラスアルファだろ?」

御祈祷料が上乗せになって当然だ、とサム君も言っておりますが…。

ブルー 「茱萸袋はメジャーじゃないからね。市販品は殆ど売れない」
全員  「「「は?」」」
ブルー 「縁起物だとは言ったけど…。門松とかとは違うんだ」

何処の家でも飾るものではない、と生徒会長。

ブルー 「重陽の節句から端午の節句までの間だけ飾る邪気払いさ」
キース 「今日から5月5日までだと? その後の期間はどうなるんだ」
シロエ 「そうですよ、夏の思いっ切り暑い間はどうするんですか!」
サム  「邪気払いがより切実に要るんじゃねえのか、夏の間は」
ジョミー「夏バテするしね…」
マツカ 「それ以前に昔だと夏は衛生状態が…。病気も流行りそうです」
ブルー 「夏の間は代わりに薬玉を飾るってことに決まっているよ」
ジョミー「えっ? 薬玉って…割れたら中からテープとかが出るヤツ?」
ブルー 「別物だってば! 菖蒲とか蓬を入れて綺麗に飾った玉のこと」
キース 「ここはそっちも売っているのか、5月5日に?」
ブルー 「そこまでは…。ここは茱萸袋専門だよ」
ジョミー「なんで? セットで薬玉も売ればいいのに」
ブルー 「そうだろうけど、ちょっと苦しい。御本尊様に繋がらないし」
キース 「どういう意味だ?」
ブルー 「菊だよ、菊。虚空蔵菩薩様は菊がお好きなんだ」

だから重陽の節句に法要が…、と生徒会長。
商売上手なお寺とはいえ、越えられない一線はあるようです…。

2012/09/17 (Mon)

 

☆お寺いろいろ


商売上手なお寺といえども、越えてはならない最後の一線。
茱萸袋と対を成すのが端午の節句の薬玉ですけど、薬玉は販売不可能で。

ブルー 「重陽は菊の節句とも言うからね。虚空蔵菩薩様にはピッタリ」
シロエ 「薬玉の素材とは無関係なんですね、虚空蔵菩薩は」
ブルー 「残念ながら、そうなんだ。菖蒲か蓬が被っていればね…」

そっちも販売出来ただろうに、と生徒会長。
お寺たるもの、縁もゆかりも無い代物を授与するのはNGらしいです。

サム  「セットで売ったら稼げそうなのになぁ…」
キース 「歴史も由緒も無い寺だったら、それもアリかもしれんがな」
ジョミー「なにそれ?」
キース 「マイナーな寺が一気にメジャーになるのも珍しくはない」

具体的な名は挙げられないが…、とキース君は声を潜めております。

キース 「そんな仏像が何処にあったんだ、というケースもあるぞ」
サム  「おいおい、新しく作ったとかじゃねえだろうな?」
キース 「それもアリだ。でもって信者がついてしまえば大成功なんだ」
シロエ 「思い切り酷いじゃないですか! それって霊感商法ですよ」
ブルー 「無理な売り込みをやらなかったら全く問題ないからねえ…」
キース 「ついた信者がお布施をするのは個人の自由だしな」
ブルー 「そう、そう。リュックにお布施を詰めて通うのも信心からさ」
マツカ 「リュック…ですか?」
ブルー 「お参りする度にリュックに一杯。そんな人もいる」
ジョミー「それってスゴイ…」
スウェナ「お寺も凄いけど、リュック一杯のお金も凄いわ…」
サム  「新しく作った仏像でソレかよ…。なんか泣けて来たぜ」
ブルー 「頼もしいねえ、サムはそうならないように頑張って」
キース 「節度ってヤツは大切なんだぞ。守るべき所はしっかり守れ」

この寺みたいに…、と言ったキース君ですが。

キース 「ところで、例の茱萸袋だが。市販品の値段は高すぎないか?」

良心的な値段にするべきだ、と言われてみればそうなのかも?

2012/09/18 (Tue)

 

☆茱萸袋のお値段


市販品の茱萸袋の値段は高すぎないか、というのがキース君の指摘。
香木店で買えばお守りの十倍、腕利きの職人さんが作った品なら三十倍。

キース 「いくら門松ほどには売れないと言っても、その値段ではな…」
シロエ 「そうですね。興味を持っても気軽に買って飾るわけには…」
サム  「マツカみたいな大金持ちなら別だけどなぁ」
ジョミー「安ければ普及するんじゃない? 門松みたいに」
ブルー 「門松とは原価が違うんだよ。入っているのはお香だよ?」

あれは高い、と生徒会長は申しております。

ブルー 「キースなら分かると思うんだけど、お線香だってピンキリだ」
シロエ 「お線香にランクがあるんですか!?」
キース 「仏壇が無いと馴染みがないかもな…。実はあるんだ」
ブルー 「高価なヤツだと一本分の値段で普及品が一箱買えてお釣りが」
サム  「マジかよ?」
ブルー 「原料のお香が高いわけ。安価なお線香だとお香は使わない」
スウェナ「お線香なのに、どういうことなの?」
キース 「それっぽく見えればいいからな。杉の粉で作って香料を…」
ジョミー「なんか酷くない?」
ブルー 「でも本物にこだわると値段がグングンと…ね」

茱萸袋の値段もその理屈、とニッコリ笑う生徒会長。

ブルー 「ここの茱萸袋に入っているお香はそこそこ。香木店のは…」
キース 「こだわりのお香というわけか。それなら高くても仕方ないな」
ブルー 「それと造花と袋のお値段。袋の布は絹織物だよ」
シロエ 「あー…。とことん装飾品なんですね」
ブルー 「そういうこと。インテリアは高級感が命ってことで」
スウェナ「御利益の方は二の次なのね…」
マツカ 「ぼくなら御利益を選びますけど」
ブルー 「じゃあ、授かって帰るかい? 茱萸袋」
マツカ 「いえ、ぼくは…。まだ御仏縁というのはちょっと…」

慎重に予防線を張るマツカ君の隣でシロエ君もコクコク頷いています。
御仏縁をうっかり結ぶと坊主フラグってヤツが立ちますからねえ…。

2012/09/19 (Wed)

 

☆本堂を目指せ


重陽限定の茱萸袋なるお守りですが。
頂いてしまうと坊主フラグが立ちそうとあって、男の子たちは警戒態勢。

ジョミー「値段もアレだけど、御仏縁つきなら要らないよ、ぼくも」
サム  「なに言ってんだよ、お前、とっくに仏弟子だろ?」
キース 「出家したからには積極的に御仏縁を結ぶべきだと思うが」
ブルー 「そうだよ、宗派が違っても仏様を敬う心が大切で…」
シロエ 「あーあ、早速やっていますよ」
マツカ 「ぼくたちも巻き込まれないように気を付けましょう」
スウェナ「大丈夫よ。お弟子さんはジョミーとサムで手一杯なんだし」
シロエ 「他所に紹介ってコマンドも持っているんですよ、会長は」
マツカ 「用心するのが一番なんです。触らぬ神に祟り無しです」
ブルー 「あれっ、呼んだかい?」
シロエ 「いえ、電電宮の話をしてただけです」
ブルー 「しっかり覚えてくれてたんだね? 嬉しいなぁ」

話した甲斐があった、と生徒会長はにこやかに。

ブルー 「それじゃ本堂に入ろうか。一応、軽くシールドをかけて」
全員  「「「シールド!?」」」
ブルー 「シッ、声が高い! これだからシールドが要るんだよ」
ジョミー「なんで?」
ブルー 「善男善女の前で失言のオンパレードだと追い出されちゃう」
キース 「そうかもしれんな。追い出さなくても厳重注意だ」
ジョミー「まだ追い出された方がマシかも…」
ブルー 「ほら、もう失言が始まってるし! 御仏縁は要らないってね」
キース 「御本尊様にも失礼だぞ。それで、どういうシールドなんだ」
ブルー 「音声だけを攪乱するのさ。印象に残らないように」
キース 「なるほどな…。それなら普通にうるさいだけか」
ブルー 「そういうこと。こんな感じで」

キラッと一瞬、青い光が走りましたが。

全員  「「「えっ?」」」
ブルー 「シールド完了。さあ、行くよ」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ しゅっぱぁ~つ!」

いざ、商売上手なお寺の本堂へ。
御仏縁には要注意ですよ~!

2012/09/20 (Thu)

 

☆謎の仏像と菊


入口で靴を脱ぎ、善男善女で溢れる本堂の中へ。
生徒会長が言っていたとおり、菊の香りが思い切り漂っておりますが…。

ジョミー「な、なんなの、アレ…」
ブルー 「指さしちゃダメだよ、失礼にあたる」
ジョミー「で、でも…! か、髪の毛が生えた仏像って初めて見るし!」
シロエ 「そうですねえ…。でも本当に仏像ですか?」

人形みたいに見えますよ、とシロエ君。
金屏風を背負って座っているのはボサボサ黒髪の男の子っぽい像でして。

お坊さん「お参りありがとうございます。こちらをどうぞ」
ジョミー「えっ?」
お坊さん「菊慈童様に献花をお願いしております」
ジョミー「きくじどう?」
ブルー 「ほらほら、説明は後でするから花を貰って」
ジョミー「う、うん…」

お坊さんから手渡されたのは菊の花。
どうするのだ、と戸惑うシャン学メンバーを押し退けた生徒会長が像の
前へと。菊を供えて合掌、一礼。

ブルー 「…南無阿弥陀仏」
ジョミー「な、南無阿弥陀仏? やっぱり仏像?」
キース 「落ち着け、俺たちの宗派は基本は南無阿弥陀仏なんだぞ」
ジョミー「どういうことさ?」
キース 「特段の指示がある時以外は何を拝んでも南無阿弥陀仏だ」
ブルー 「代わりに解説ありがとう。さあ、君たちも行って、行って」

後がつかえているからね、と言われてみれば行列が。
ジョミー君たち、慌てて献花でございます。

シロエ 「分からないんで南無阿弥陀仏で行ってきましたけど…」
サム  「あれって何だよ、何の像だよ?」
ブルー 「菊慈童だと言っただろ? 重陽の節句の由来みたいなもの」
全員  「「「は?」」」
ブルー 「七百歳とも八百歳とも言われる長寿を保った子供なのさ」

菊慈童は中華の国の皇帝に仕えていた男の子だそうでございます。
皇帝の枕をまたいでしまって、追放されたそうなのですが。

ブルー 「その先で菊の露を飲んで暮らす間に不老長寿ってね」

以来、重陽には菊の花。
不老長寿の神様でしたか、菊慈童…。

2012/09/21 (Fri)

 

☆カラフルな菊


菊慈童の像に献花した後は、本堂の空きスペースに座るお約束のようで。
シャン学メンバー、善男善女に混じって着席です。

ジョミー「ここって座布団、置いてないの?」
ブルー 「本堂一杯になるんだよ? 何枚あっても足りないじゃないか」
キース 「人数が決まった法要だったら用意も出来るが…」
ブルー 「不特定多数に下手に配ると奪い合いになっちゃうからねえ…」

御本尊様の前で座布団の奪い合いなど見苦しい、と生徒会長。

ジョミー「そりゃそうだけど…。でも、争奪戦って言わなかった?」
サム  「うんうん、座布団じゃなくて菊だけどな」
シロエ 「えーっと…。争奪戦をするっていうのはアレですか?」

なんだか変わった菊ですけれど、とシロエ君が指差す先には菊の花。
菊慈童の像の両脇や、御本尊様の前を菊が埋め尽くしておりますが…。

スウェナ「何を被せてあるのかしら?」
ジョミー「…座布団かなぁ?」
ブルー 「座布団なわけがないだろう。確かに形は似ているけれど」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ お座布団を積んだみたいだね!」

菊の花の上にはフカフカの四角い綿が載っております。
それも一枚どころか三枚、四枚。色も白、赤、黄、青と鮮やかで。

キース 「教義としては分からんでもないが…。凄い色彩感覚だな」
シロエ 「黄色の上に青や赤まで重ねて置くのが教義ですか?」
キース 「密教系だと一応、基本の色なんだ。だが、しかし…」
ブルー 「菊の色までまるっと無視して載せるのもねえ…」

教義じゃ仕方ないけれど、と生徒会長は小声でコソコソと。

ブルー 「赤い菊には白、白菊には黄色、黄菊には赤さ、本当は」
シロエ 「そうなんですか?」
ブルー 「全部に白って流儀もあるけど、基本はコレ」

更に綿を載せるのは菊一輪につき、一枚だそうでございます。

キース 「そこを何枚も重ねてきたか…。色もゴタ混ぜで」
ブルー 「本当にセンス最悪だよね」

生徒会長までが失言。
シールドを張って正解でしたねえ…。


※アニテラ最終話・『地球の緑の丘』 放映から今日で5周年。
 あれからもう5年も経ってしまったんだなぁ…、と、少ししんみり。
 7月28日合わせで捏造した 『奇跡の青から』 がございますので、
 拙作の世界では誰一人として死んではいないわけですが…。
 ん? こんな日に菊はマズかったかな? 仏花の王道でした…(汗)
 
 以下、全員生存EDを踏まえたシャングリラ学園特別編です!


    ++++++シャングリラ学園特別編++++++


教頭先生「では、生き残られた皆様方の御健康と前途を祝して乾杯!」
ブルー 「そこは献杯だと思うんだ。今日が祥月命日だろう?」
教頭先生「いや、しかし…。ちゃんと生き残っておいでなわけだし」
ブルー 「けじめだよ、けじめ。世間的には祥月命日」
教頭先生「だが、皆様ここにおいでになるのに、献杯というのはだな…」
ブルー 「要は飲めればいいんだってば。じゃあ、献杯!」
一同  「「「けんぱーい!!!」」」

『奇跡の青から』 で生き残られた皆様方と、シャン学の面々と。
賑やかな酒宴となっておりますが、ジョミー君の坊主宣言は大丈夫かな?


2012/09/22 (Sat)

 

☆菊の被せ綿


カラフルと言うか、悪趣味と言うか。
凄まじい配色の綿を何枚も被せられた菊、所狭しと並べられております。

キース 「で、あのセンスの悪い菊は何なんだ?」
ブルー 「菊の被せ綿」
全員  「「「は?」」」
ブルー 「きせわた、ってね。その名の通り綿を被せるのさ」

知らないかな、とキース君とシロエ君を見詰める生徒会長。

ブルー 「君たちなら知っていそうな気もしたけどねえ…」
キース 「生憎と俺は寺と直接関係の無い行事には疎くてな」
シロエ 「…ぼくも花とかについてはちょっと…」
ブルー 「ハーレイの古典でも教えてないかな、そういえば」
サム  「あの綿に意味があるのかよ?」
ブルー 「茱萸袋と同じで重陽限定、不老長寿のお守りなんだよ」

重陽の前の夜から菊の花に綿を被せておくのが被せ綿。
綿が含んだ露で身体を拭うと不老長寿とか、若返るとかだそうですが。

ジョミー「じゃあ、あの菊を奪い合うわけ?」
ブルー 「違うよ、あれは本堂の飾り。奪い合うのは献花した菊」
キース 「なるほど…。法要で祈祷して御利益という仕組みだな」
ブルー 「そういうこと。おっと、そろそろ始まるかな?」
キース 「法要の時間か?」
ブルー 「お守りの販売と菊酒だよ。法要はその後」

本堂には人が詰まってきておりますが、中央部分が空けてあります。
お坊さんが数人、そこに机を据えまして…。

お坊さん「お待たせいたしました。只今より茱萸袋を授与いたします」

途端にドドッと善男善女が中央に向けて大移動。
机の上に積み上げられた白い箱が飛ぶように売れていくわけで。

キース 「凄い勢いだな。限定品というだけのことはある」
ブルー 「おまけに御祈祷済みだしね。君たちも一個、頂いてきたら?」
シロエ 「いえ、不老長寿は今の所は間に合ってます」
マツカ 「ぼくもです」

御仏縁など結んでたまるか、と座った場所から動かざること山の如し。
シャン学メンバーの慎重な姿勢、生徒会長の日頃の行いのせいとしか…。

2012/09/23 (Sun)

 

☆完売御礼


被せ綿とやらを被った菊が飾られた本堂を舞台に、限定お守り販売開始。
茱萸袋、ゴージャスなお値段の割にサクッと完売でございます。

ジョミー「凄いや、アッと言う間に売れちゃったよ…」
キース 「買えなかった人も多いようだな」
ブルー 「この段階で既に争奪戦ってね。頂きそびれた人は怖いよ」
全員  「「「は?」」」
ブルー 「茱萸袋が手に入らなかったら後は菊しか無いだろう?」
シロエ 「それで争奪戦ですか…。でも一人一本、献花したんじゃあ?」
サム  「最後の方に入って来た人はしていないかもしれねえぜ」
キース 「あっちの方も数に限りがあっただろうしな」
ブルー 「全員の分は当然、無いさ。おまけに一人一本限りじゃないし」
マツカ 「どういう意味ですか?」
ブルー 「何本貰っても構わないんだ。家族の分とか、親戚の分とか」
スウェナ「だったら全然足りないわよ?」
ブルー 「足りないねえ…。だけど欲しいんだから仕方がない」
サム  「仁義なき戦いって言ってたのはそれかよ…」

献花は一人一本限り。献花しそびれた人も本堂の中に。
そして御祈祷済みの菊を一人で何本もゲットしたい人もいるわけで…。

ブルー 「不老長寿は間に合っている、と言うんだったら働きたまえ」
キース 「争奪戦で菊を奪って、貰いそびれた人に配るわけだな」
ブルー 「そういう目的で来たんだからね。ボランティアだよ」
サム  「よーし、頑張るぞ! なあ、ジョミー?」
ジョミー「う、うん…。人にあげるんなら御仏縁とは関係無いよね」
ブルー 「功徳を積んだことにはなるけど…。まあ、頑張って」
ジョミー「功徳って…。な、なんか不吉な感じだけど…」
キース 「細かいことは気にするな。お前も仏弟子の端くれだろうが」
ブルー 「ほら、菊酒が振舞われるよ? 行ってグイッと」
ジョミー「き、菊酒…?」

ヤバイ、と青ざめるジョミー君。
お酒を飲んで坊主宣言はお正月以来の恒例行事となっております。
今回は無事に済むのでしょうか…?

2012/09/24 (Mon)

 

☆菊酒を頂こう


茱萸袋の販売……いえいえ、授与が終わると菊酒だそうでございます。
中央のスペースに据えられたのは振舞いのための酒器一式で、準備完了。

お坊さん「菊酒の用意が整いました。皆様、順にこちらへお願いします」

押し合わないように、と注意がされて、今度はきちんと行列が。
菊酒の方は充分な量があるようです。

ブルー 「さあ、君たちも並んで、並んで」
シロエ 「いいんですか? ぼくたち、未成年ですよ?」
ブルー 「小学生とか幼稚園児はともかく、その年だったら無問題だよ」

お屠蘇だって飲むだろう、と言われてみればその通りで。

ブルー 「不老長寿の縁起物だし、頂きたまえ」
スウェナ「菊で作ったお酒なの?」
ブルー 「菊の花びらを浸してあるのさ。菊の香りが素敵なんだ」
ぶるぅ 「あのね、フワッと匂いがするの! でも…」

甘くないからちょっと残念、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」はジュース感覚。
「そるじゃぁ・ぶるぅ」でも飲めるなら、と皆で行列に並びまして…。

お坊さん「ようこそお参り下さいました。さあ、どうぞ」
ブルー 「ありがとうございます。頂きます」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ありがとう!」

クイッと飲み干した二人に続いて今度はジョミー君ですが。

お坊さん「ささ、どうぞどうぞ」
ジョミー「あ、あのう…」
お坊さん「なんでしょう?」
ジョミー「こ、これって一杯だけですか? お代わりは無し?」
お坊さん「はあ…。お持ち帰りを御希望ですか? 御家族の方に?」
ジョミー「う、ううん、そういうわけじゃなくって…」
お坊さん「どうしてもというお話でしたら、後ほど奥で伺いますが」
ジョミー「奥?」
お坊さん「関係者用のがございます。お入り用でしたら特別に」
ジョミー「え? ええっ?」
お坊さん「そちらも御祈祷済みの菊酒です。お代の方は結構ですよ」

どうぞ御遠慮なくお持ち帰りを、と商売っ気抜きのお坊さんたち。
ジョミー君、御利益の持ち帰り希望な信者さんフラグが立ちましたか?

2012/09/25 (Tue)

 

☆菊酒で御仏縁


電電宮だの茱萸袋のと、とっても商売上手なお寺。
しかし来られなかった誰かにも御利益を、となれば話は別のようでして。

お坊さん「まだお若いのに代参なさるとは御立派ですねえ」
ジョミー「え、えっと…」
お坊さん「法要が終わりましたら庫裏の方へいらして下さい」
ジョミー「そ、そうじゃなくて! 一人一杯なら別にいいんだけど…」
お坊さん「お尋ねになられたのも御仏縁でございましょう。御遠慮なく」
ジョミー「……ご、御仏縁……」

坊主宣言どころか庫裏に招かれて御仏縁。
ジョミー君、ピンチでございますが。

ブルー 「不肖の弟子がお世話を掛けるね。申し訳ない」
お坊さん「は?」
ブルー 「一応、ぼくの弟子なんだ。菊酒は一杯あれば充分」
お坊さん「ですが、お代わりと仰いましたが?」
ブルー 「酔うと坊主宣言をする癖があるんだ。それで警戒してるだけ」
お坊さん「ああ、なるほど…。では、お持ち帰り希望ではないのですね」
ブルー 「残念ながら…ね。そこまで熱心に仏様に帰依してくれれば…」
お坊さん「お若いのですし、これからですよ。どうぞ、これを御縁に」

仏の道に精進して下さい、とジョミー君に注がれた菊酒は多め。
お坊さんたちが「さあ、飲め」とばかりに見詰めております。

ジョミー「う、うう…。こ、このくらいならきっと大丈夫…」
ブルー 「大袈裟だねえ…。酔いやしなよ、少しくらいじゃ」
ジョミー「い、頂きますっ!」

ヤケクソで菊酒を呷ったジョミー君に、お坊さんたちの視線は温かく。

お坊さん「来年もお待ちしております。どうぞ修行に励んで下さい」
ブルー 「虚空蔵菩薩様は学問の道をお守り下さる。頑張りたまえ」
サム  「お前、お経も覚えねえもんな…。効くといいな、菊酒」
キース 「ドーピングか…。学問に王道なしとは言うが、必要かもな」

ジョミー君、菊酒の御利益で暗記力アップといくのでしょうか?
坊主宣言は回避したものの、御仏縁の方はガッツリと。
やはりお寺は鬼門でしたねえ…。

2012/09/26 (Wed)

 

☆お能と法要


菊酒で酔いはしなかったものの、御仏縁を結ばれてしまったジョミー君。
虚空蔵菩薩様は学問の道をお守り下さるとあって…。

ブルー 「これで少しはお経を覚えてくれるといいねえ」
ジョミー「却下だよ! そういう目的で来たんじゃないし!」
シロエ 「えーっと…。争奪戦はまだですか?」
ブルー 「それは法要が済んでから。その前にお能の奉納もあるよ」
全員  「「「能?」」」
ブルー 「菊慈童というお能があるのさ。その舞を少し」

中央のスペースが片付けられて、舞台になったようでございます。
そこへ菊慈童の人形そっくりの鬘にお面をつけた舞い手が登場。

キース 「こんなイベントまであったのか…。人気の筈だな」
ブルー 「お能を気軽に見られるチャンスは少ないからね」
スウェナ「観光の人はこれ目当てなのね」

あちこちで切られるカメラのシャッター。
観光客はシャン学メンバーと同じで茱萸袋も買わないタダ見です。

サム  「観光客も多いじゃねえかよ、みんなお守りは買っていねえぞ」
ブルー 「買えと強制しないのも商売の秘訣。無理強いはダメだ」
キース 「信心というのはそういうものではないからな…」
ブルー 「菊酒だってタダでくれると言っただろう? 広い心も大切さ」
シロエ 「タダで貰って悪い気持ちはしませんしね」
ブルー 「良かったなぁ、嬉しいなぁって気持ちが次に繋がるんだよ」

リピーターになってくれればいつかはお客、と生徒会長。

ブルー 「また来年、と通う間に信仰心も生まれるものでさ」
ジョミー「ぼくは御仏縁は要らないってば!」
ブルー 「さあ、どうだか…。おっと、お次は法要だよ」

お能が終わると御本尊様と菊慈童の像の前にお坊さんがズラリ。
香煙の中、読経の声が朗々と…。

ブルー 「ジョミー、君もいつかは法要を取り仕切る方にならないとね」
ジョミー「絶対無理だし!」

お経を覚えるなんて一生無理、とジョミー君は叫んでおります。
菊酒でドーピングしてもダメですかねえ?

2012/09/27 (Thu)

 

☆不発な坊主宣言


菊酒の後はお能に法要と盛りだくさんな重陽の節句。
流石は商売上手なお寺だけあって、タダ見の観光客も大歓迎らしいです。

ブルー 「写真を撮ってるだけの人でもクチコミで広めてくれるしね」
シロエ 「ブログに載せたりして貰えれば大成功ってわけですか」
キース 「そうだろうな。ツイッターだとコレは今一つか…」
ブルー 「菊酒なう、では何のことやらサッパリだよ」
マツカ 「お寺の名前を呟いて貰っても……間に合いませんよね」
ブルー 「何日もやるわけじゃないから拡散しても効果はゼロだよ」

来年までには忘れ去られる、と生徒会長。
その点、旅のブログを書く人の方が後々まで役に立ちそうかも…。

ブルー 「観光客といえども疎かにしてはいけないのさ。次に繋がるし」
キース 「そこまで考えているわけか…。寺院経営も大変だな」
ブルー 「元老寺も大きくしたいんだったら手を貸すよ?」
キース 「俺は商売に走る気は無いっ!」
スウェナ「キースはイケメン美坊主図鑑で行くのよね?」
シロエ 「応援してますよ、キース先輩!」
サム  「載る時には俺も呼んでくれよな、友達だろ?」
ジョミー「あーっ、ズルイよ、なんでサムだけ!」
ブルー 「おやおや、ジョミーも載りたいのかい?」

載ったら漏れなく坊主だけれど、と言われたジョミー君、顔面蒼白。

ジョミー「お、お友達ではダメなんだ…?」
ブルー 「当たり前だよ、お坊さんを紹介する本だからね」
キース 「俺の朋輩としてなら喜んで一緒に記事にして貰うが」
ジョミー「い、要らないよ、ぼくは一般人だってば!」
ぶるぅ 「えとえと…。坊主宣言は?」
ジョミー「酔ってないから!」
ブルー 「菊酒一杯では無理だったか…。ぶるぅも楽しみにしてたのに」
ぶるぅ 「面白いもん、坊主宣言! お坊さん目指して頑張るぞーって」
サム  「だよな、あれも一種の隠し芸だよな」

今日は見られなくて残念だった、と頷き合っているシャン学メンバー。
坊主宣言、凄いですもんね…。

2012/09/28 (Fri)

 

☆いざ、争奪戦!


菊酒一杯では発動しなかったジョミー君の坊主宣言。
隠し芸とまで呼ばれてオモチャにされる内に、法要は終了したようで…。

ブルー 「シールドを張っておいて良かったよ。でなきゃ御近所迷惑だ」
キース 「俺としたことが、法要の最中に気を散らすとは…」
ブルー 「仕方ないさ、お経も作法も違うんだから」
シロエ 「お供えした菊を運んでいますね、これから争奪戦ですか?」
ブルー 「うん。中央のスペースから四方八方に投げるわけ」
ジョミー「丁重に扱えって言ってなかった?」
ブルー 「そりゃ手渡しが理想だけれど…。将棋倒しになるじゃないか」
マツカ 「一ヶ所に人が集中するのは危ないですよね」
ブルー 「だから投げるんだよ。まだ何ヶ所かに分けた方がマシ」

さて、とニヤリと笑う生徒会長。

ブルー 「争奪戦で菊を何本ゲット出来るか、頑張りたまえ」
キース 「おい。貰えなかった人に譲るにしても、何本も持つのは…」
サム  「恨まれそうだぜ、取りそびれたヤツに」
ブルー 「その辺は臨機応変に! すぐに譲るのも良し、キープも良し」
シロエ 「会長も参加するんですか?」
ブルー 「もちろんさ。そして女性に優先的に…ね」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ぼくも沢山配るんだもん!」
ジョミー「よーし、なんだか燃えてきたかも!」

フットワークには自信があるし、とジョミー君はやる気満々。
他の面子もスタンバイする中、お坊さんたちが菊を投げ始めました。

ジョミー「その菊、もらったぁー!」
キース 「うわぁっ、なんだ、どうなってるんだ!」
ブルー 「ボヤボヤしてると押し潰されるよ? 仁義なき戦いだから」
シロエ 「そ、そうみたいですね、注意します!」

殺到してくる老若男女にタックルされるわ、引っ張られるわ。
争奪戦が終わる頃にはシャン学メンバー、ほぼズタボロでございます。

ジョミー「し、死ぬかと思った…」

でも配って配って配りまくった、とジョミー君は満足そう。
功徳の方も積めましたかねえ?

2012/09/29 (Sat)

 

☆締めは修行で


重陽の節句の締めは菊慈童にお供えされた菊の争奪戦。
茱萸袋の箱を抱えた人までが殺到する中、シャン学メンバーは頑張って。

ブルー 「最高記録はジョミーかな? 素晴らしかったよ」
ジョミー「え、ブルーたちより多かったの?」
ぶるぅ 「ジョミーの勢い、凄かったもん! みんな喜んでいたもんね」
ブルー 「そうだね、御礼を言われると嬉しいだろう?」
ジョミー「ま、まあ…。悪い気持ちはしないかな…」

ぼくには遊びだったんだけど、と頭を掻いているジョミー君。
イベントが全て終わった本堂からは人がどんどん帰ってゆきます。

キース 「さっきまでの騒ぎが嘘のようだな、もうガラガラだぞ」
ブルー 「御利益を早く持ち帰りたいのさ、菊が萎れちゃ台無しだ」
スウェナ「そうね、花瓶に生けてあげなきゃ」
シロエ 「ぼくたちも何か食べに行きませんか? お腹ペコペコです」
サム  「朝飯を食ったきりだもんなあ。…あれ?」

帰り支度をしていた所へ近付いてきたのはお坊さんで。

お坊さん「頑張って菊を配っておられましたね。御本尊様も喜ばれます」
ジョミー「…ぼく?」
お坊さん「はい、修行の道にも励んで下さい」
ジョミー「そ、そんなつもりじゃなかったし!」
ブルー 「そうなんだよねえ、お経も覚えられない不肖の弟子でさ…」

いい方法は無いだろうか、と生徒会長は深い溜息。

お坊さん「お経ですか…。どんなお経も二度と忘れない方法でしたら」
ジョミー「えっ、ホント!?」
お坊さん「虚空蔵求聞持法と申しましてね、ございますよ」
ジョミー「こくぞう……ぐもんじほう?」
ブルー 「あったね、記憶力アップの秘法! やるかい、ジョミー?」
ジョミー「ちょっといいかも…」
ブルー 「じゃあ、早速…。明日から百日、缶詰だ」
ジョミー「え?」
ブルー 「虚空蔵菩薩様の御真言を百日かけて百万回唱えるだけってね」

さあ頑張れ、と言われて泣きそうなジョミー君と、囃し立てる面々と。
缶詰の危機な中継、これにて終了~。

2012/09/30 (Sun)

 

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