☆下駄スケートの達人
下駄スケートが使われていた頃、綺麗どころと滑ったらしい生徒会長。
思い出話に耳を傾けてしまった男子一同、紐の結び方を見逃しまして…。
シロエ 「ど、どうしましょう…。もう思いっ切り手遅れですよね」
ジョミー「まだ脱ぐ時があるじゃない! そっちに期待するしかないよ」
マツカ 「ですね、今度こそ頑張りましょう」
サム 「それよりブルーの滑りだぜ! 綺麗だろうなぁ…」
ジョミー「なんか変なこと言ってるし…。下駄スケートだよ?」
所詮は下駄でスケートなのだ、とジョミー君は鼻で笑っておりますが。
ブルー 「ぶるぅ、曲を流してくれるかな?」
ぶるぅ 「オッケー!」
アドス和尚ご自慢のCDプレーヤーから大音響で流れる『かみほー♪』。
生徒会長、スイーッとリンクに滑り出すと。
ジョミー「わわっ!」
シロエ 「いきなりトリプルルッツですか!?」
サム 「だから言ったろ、ブルーならきっと凄いって!」
スウェナ「ぶるぅに出来る技が出来ないわけないと思うわよ?」
マツカ 「もっと凄いかもしれません。…分かりませんけど」
サム 「すげえ、すげえや、プロに負けてねえぜ!」
即興とも思えぬ滑りを披露してゆく生徒会長。
スピンにステップ、どれを取っても、もう完璧な仕上がりで。
ジョミー「サビでトリプルアクセルは基本みたいだね…」
シロエ 「ああいう大技は最初に持ってくると聞きましたけど」
マツカ 「全然気にしていないみたいですね、流石です」
サム 「どんなフィニッシュか楽しみだよな!」
スウェナ「そうね、ひょっとしたら幻のアレが出るかも」
男子一同「「「は?」」」
ぶるぅ 「わぁーい、成功ーっ!!!」
氷を蹴った生徒会長、華麗にジャンプ。
見事な回転を決めて滑り終え、優雅に一礼。
ブルー 「見てくれた? ぼくの四回転半」
スウェナ「きゃあっ、やっぱりクアドラプルね!」
男子一同「「「!!!」」」
クアドラプルといえば四回転。
四回転半とは、まさかのアクセル?
2013/01/16 (Wed)
☆ピンチな男子たち
お手本を終えた生徒会長、四回転半を見てくれたか、と申しております。
半回転がついてくるのはアクセルのみで、難易度は最高でございますが。
ジョミー「よ、四回転半って……アレってアクセル?」
ブルー 「前向きに踏み切るのはアクセルジャンプだけだけど?」
シロエ 「そ、それってまさか…」
サム 「すげえや、ブルー! あれが跳べるヤツ、いねえよな!」
マツカ 「その筈です。…今のところは」
スウェナ「オリンピックの選手以上よ、いいもの見せてもらったわ!」
ブルー 「どういたしまして。…じゃあ、君たちも頑張って」
はい、と下駄スケートを差し出す生徒会長。
いつの間にやらスニーカーに履き替えてしまったようで。
男子一同「「「あーーーっ!!!」」」
ブルー 「まだ何か?」
シロエ 「い、いえ…。なんでもないです…」
分からずじまいの紐の結び方。
もう適当に結ぶより他に道は無く。
サム 「とにかく最初はシロエがやれよ」
シロエ 「そ、そんな…。ジョミー先輩でいいじゃないですか!」
ジョミー「ぼくはスニーカーでも滑れるもんね、朝も石畳で滑ったし!」
練習、練習…とリンクに飛び出したジョミー君ですけど。
ジョミー「あれ?」
サム 「何やってんだよ、景気良く滑れよ!」
ジョミー「滑ってるってば!」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ジョミー、おっそーい!」
ツイーッと滑ってゆく「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
生徒会長がクスクスと…。
ブルー 「スニーカーでは無理、無茶、無駄ってね」
ジョミー「スウェナと滑っていたじゃない! それに、ぶるぅも!」
子供靴だよ、と指差しているジョミー君。
スイスイ滑る小さな足には普通の靴が。
ブルー 「サイオンで調整してるのさ。君にはまだ無理」
ジョミー「それじゃ練習できないよ!」
シロエ 「そうです、靴が足りません!」
滑りに適したブレードつきの下駄スケートは一足だけ。
元老寺カップで競い合おうにも、練習不足で不戦敗ですか?
2013/01/17 (Thu)
☆跳ぶならアクセル
下駄スケートは紐の結び方が分からず、スニーカーでは滑りがイマイチ。
男子一同、いきなりピンチでございます。
ジョミー「滑れないんじゃ、元老寺カップなんて絶対無理だし!」
ブルー 「下駄スケートがあるじゃないか。一足あれば充分だろう?」
シロエ 「足りませんよ!」
ブルー 「練習時間が短いところが面白い。そう言った筈だけど?」
ジョミー「そうだけど…。でも…」
ブルー 「そもそもキースは練習時間が足りないんだよね」
初詣の真っ最中だから、と言われてみればそのとおり。
スニーカーでの滑りも何も、リンクに姿を見せないわけで。
サム 「仕方ねえか…。地道にやろうぜ」
マツカ 「コツコツやるのも大切ですよね」
ジョミー「えーっ! そこで納得しちゃうわけ?」
スニーカーでいくら練習したって、とリンクを蹴ったジョミー君ですが。
ジョミー「どわぁぁぁっ!?」
ぶるぅ 「すっごーい!」
ツルッと滑ったジョミー君。
素早く体勢を立て直したものの、氷はツルツルのようでして。
ジョミー「わっ、わっ、うわわわ…」
シロエ 「なんだか普通に滑ってますねえ…」
スウェナ「スピンとかにも見えないことはないわよね?」
サム 「滑れねえとか言ってなかったか?」
マツカ 「その筈ですけど…」
ツルンツルンと滑りまくっていたジョミー君、やっと戻って参りまして。
ジョミー「し、死ぬかと思った…」
ブルー 「どういたしまして。サイオンで調整した靴はどうだい?」
ジョミー「えっ?」
ブルー 「ブツブツ言うからやってあげたよ、全員分」
シロエ 「本当ですか!?」
ブルー 「リンク限定のスケート仕様! これなら文句は無いだろう?」
サム 「マジかよ、だったら頑張らなくちゃな!」
ブルー 「その代わり、メインは下駄スケートだよ?」
練習する以上はアクセルを跳べ、と生徒会長は申しております。
しかも基本はトリプルだそうで…。
ずぶの素人が挑戦するには、あまりにハードル高すぎませんか?
2013/01/18 (Fri)
☆トリプルが基本
スニーカーでも滑れるように調整した、と微笑んでいる生徒会長。
サイオンでの細工は有難いですが、アクセルを跳ぶよう言われてしまい。
ジョミー「あ、アクセルって…下駄スケートで!?」
ブルー 「当然じゃないか。元老寺カップは下駄スケートの競技会だ」
シロエ 「で、でも…。トリプルが基本っていうのは冗談ですよね?」
ブルー 「練習用の靴を貰った以上は頑張りを見せて欲しいけど?」
サム 「あー、頑張ればいいわけな? 跳べなくっても」
ブルー 「まあね。点数が低くなるのは御愛嬌かな」
ジョミー「あのさぁ、点数って誰が採点するわけ?」
気になってたんだ、とジョミー君。
他の男子もコクコク頷いておりますが。
ブルー 「任せて安心、審査員票!」
男子一同「「「は?」」」
ブルー 「分からないかな、アドス和尚とイライザさんだよ」
ジョミー「二人揃って素人じゃないか!」
ブルー 「だからこそ素直に評価が出来る。凄いと思えば高得点!」
派手にやりたまえ、と生徒会長は笑っております。
ブルー 「素人さんでもジャンプの高さや回転なんかは分かるからね」
シロエ 「でも見逃したら終わりですよ?」
ブルー 「その辺が勝負の醍醐味ってね。運も実力の内なんだ」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 回転数はぼくが数えてあげてもいいよ!」
どんなに速くても分かるもん、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」は自信満々。
そりゃそうでしょう、子供とはいえタイプ・ブルーなわけでして。
ブルー 「ぶるぅが数えてくれるってさ。これで文句は無いだろう?」
ジョミー「無理だよ、トリプルアクセルなんか!」
ブルー 「やりもしないでガタガタ言わない! さっさと練習!」
スウェナ「で、下駄スケートは誰が最初に練習するの?」
サム 「俺は一番最後でいいかな…」
ジョミー「ぼくも一番最後でいいよ」
俺だ、お前だ、と始まっている下駄スケートの押し付け合い。
そんなことより、トリプルアクセルを跳ぶ練習を始めた方がいいのでは?
2013/01/19 (Sat)
☆差し入れで休憩
下駄スケートを履く順番を押し付け合っている男子一同。
練習時間がどんどん減ってゆくのですけど、誰も気付かないようでして。
イライザ「はい、皆さんに差し入れですよ。…あら?」
キース 「誰も練習してないようだな」
おふくろの愛が無駄になったか、と大鍋を抱えた法衣姿のキース君。
イライザさんはお椀を載せたお盆を手にしておりますが…。
ブルー 「嬉しいな。何を持ってきてくれたんだい?」
イライザ「おぜんざいですわ。甘いものは疲れが取れますでしょ?」
キース 「それに身体も暖まる。…だが、どうやら必要なさそうだな」
ブルー 「まあねえ、別の意味で熱くなっちゃってるから」
キース 「あいつらは何をやっているんだ?」
ブルー 「下駄スケートの押し付け合いさ。履き方が分からないらしい」
イライザ「あらあら…。それは大変ですわね」
少し休憩なさっては、とイライザさんはテントの中のテーブルへ。
キース君はカセットコンロも持参で、セットされた大鍋がグツグツと。
ブルー 「そこで揉めてる男子たち! 差し入れが来たよ!」
ジョミー「えっ、ホント!?」
イライザ「おぜんざいで暖まって下さいね」
順番ですよ、と言われるまでもなく並んで受け取る男子たち。
「そるじゃぁ・ぶるぅ」も生徒会長も、キース君も熱々のおぜんざいを。
イライザ「練習は進んでないようですわね」
男子一同「「「…は、はい…」」」
キース 「初詣の檀家さんが一段落したから抜けてきたんだが…」
ブルー 「練習に参加するのかい?」
キース 「そのつもりだ。この様子では俺にも勝機があるのか?」
ブルー 「どうだろう? 特製スニーカーは君には無理だし…」
キース 「は?」
ブルー 「みんなの靴には滑れる細工をしたんだよ。サイオンでさ」
キース 「なるほどな…。草履では細工が出来ない、と」
仕方ないか、と呟くキース君の足元は法衣に合わせて普通の草履。
せっかく練習にやって来たのに、履物のせいで不利な状況ですかねえ…?
2013/01/20 (Sun)
☆下駄と草履と
おぜんざいを差し入れに来たイライザさんと一緒に現れたキース君。
初詣を抜けて練習をという心づもりでしたが、履物は草履でございます。
キース 「草履で練習は出来んと言うなら、待つしかないな」
ジョミー「下駄スケートなら一番に貸してあげるけど?」
シロエ 「いいですね、それ! まずキース先輩に滑って貰いましょう」
キース 「…俺に押し付けようというのか?」
サム 「いいじゃねえかよ、下駄も草履も似たようなモンだぜ」
キース 「そこの所は認めよう。しかしだな…」
俺も下駄スケートは初めてなんだ、とキース君は溜息をついております。
キース 「どうやって履くのか分からないのは俺にしたって同じだぞ」
ブルー 「だろうね、分かるわけがない。だけど草履は応用が利くよ?」
全員 「「「は?」」」
ブルー 「下駄も草履も、どっちも鼻緒だ。草履でいけたら下駄もOK」
キース 「細工が出来ないとか言わなかったか?」
ブルー 「特製スニーカーは無理だよね、と言っただけだよ」
草履でもサイオンで細工は可能、とニッコリ微笑む生徒会長。
ブルー 「ただし、草履は脱げやすい。それなりの技術が必要なわけ」
キース 「技術だと?」
ブルー 「元老寺カップの基本はトリプルアクセル! 草履も吹っ飛ぶ」
キース 「そ、それは確かに…。いや、ちょっと待て!」
素人にそんなジャンプが出来るか、とキース君は食ってかかりましたが。
ブルー 「サイオンを使えば楽勝さ。ぼくは四回転半を跳んだし」
キース 「四回転半!?」
スウェナ「凄いクアドラプルだったわよ? トリプルに挑戦しなさいよ」
キース 「し、しかし…。ジャンプを跳んだら確実に草履が…」
イライザ「下駄スケートと同じ要領で足に結べばいいでしょう?」
男子一同「「「えっ?」」」
イライザ「私も若い頃にやりましたの。クリームちゃんのお誘いで」
クリームちゃんとはアドス和尚の若き日の渾名。
下駄スケートの正しい履き方、救いの神の登場ですか?
2013/01/21 (Mon)
☆思わぬ助っ人
下駄スケートの経験アリだったイライザさん。
アドス和尚と滑っていたとあって、紐の結び方も覚えているとの話です。
シロエ 「それ、ぼくたちに教えて下さい! お願いします!」
ブルー 「君たちには何度もチャンスをあげただろう? 何を今更」
イライザ「そうでしたの? それじゃ教えちゃいけませんわね」
ジョミー「えーーーっ!!! 酷いよ、それ!」
キース 「おふくろ、俺は習っていないんだが…」
イライザ「あらあら…。じゃあ、どうしたらいいのかしら?」
ブルー 「仕方ないねえ、最後のチャンスはキースの草履で」
男子一同「「「は?」」」
ブルー 「キースも練習しないとダメだし、こっちの紐で草履を…ね」
予備のヤツなんだ、と生徒会長は紐を取り出しまして。
ブルー 「キースの草履の固定を頼むよ。ブレードは無いけど」
イライザ「紐が裏側まで回りますわよ? 滑れますの?」
ブルー 「そこはサイオンで調整出来るさ。ひとつよろしく」
イライザ「いいですわ。…キース、右足をお出しなさいな」
キース 「あ、ああ…」
椅子に座っていたキース君が右足を出すと、イライザさんは手際よく。
イライザ「こう、こう、こう…。で、最後の結びがこうなりますの」
シロエ 「えっ? イマイチ分からなかったんですが…」
ブルー 「まだ左足があるだろう? 紐の端の処理も見ておきたまえ」
イライザ「途中で解けると大変ですから、ここにこうして」
サム 「あー…。そこは何となく分かる気がするぜ」
イライザ「それでは左足を始めますわね。簡単ですのよ」
チョチョイのチョイ、と紐を絡めて結んで、端の処理。
どの辺がどう簡単なのだ、と男子一同、泣きの涙でございますが。
ブルー 「これで教えは完璧ってね。いいかい、基本はトリプルだよ」
イライザ「皆さん、頑張って練習して下さいね」
元老寺カップが楽しみですわ、とイライザさんは去ってゆきました。
試合開始は初詣が終わる午後三時。それまでにトリプルアクセルですか?
2013/01/22 (Tue)
☆追い越す後発
キース君、イライザさんの技で下駄スケートならぬ草履スケートを入手。
まだ揉めている他の男子を残して雪のリンクに颯爽と。
キース 「おい、本当に基本はトリプルなんだな?」
ブルー 「もちろんさ。跳べなくっても御愛嬌だけど」
キース 「俺はそういう逃げは嫌いだ。で、どうやれば跳べるんだ?」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ぼくが見本を見せてあげるね!」
下駄でも草履でもないけれど、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
子供靴でスイーッと滑ってクルクルクル。
キース 「なるほど、踏み切りと高さが命か…」
やってみよう、と草履で挑んだキース君。
法衣の裾を乱しながらも、辛うじて一回転半を決めまして。
ブルー 「うん、なかなか筋がいいと思うよ。その調子!」
ぶるぅ 「今度はぼくと一緒に跳ぼうよ♪」
CDプレーヤーから『かみほー♪』が流れ、キース君の練習は順調に。
ダブルアクセルをモノにするのも時間の問題みたいです。
ジョミー「ずるいよ、なんでキースだけ!」
ブルー 「君たちもやればいいだろう? スニーカーでさ」
シロエ 「それはそうなんですけれど…」
サム 「本番で下駄スケートが飛んで行ったら失格だよな?」
ブルー 「まあね」
マツカ 「ですから練習しておかないと…。下駄スケートを」
ブルー 「その前に練習ありきだと思うけどねえ…」
好きにすれば、と溜息をつく生徒会長。
そこへアドス和尚とイライザさんが現れて…。
イライザ「皆さん、お昼御飯ですよ。あら、キースは一人で練習を?」
アドス 「出遅れた分、技術が劣っておりますかな?」
ブルー 「劣ってるのは他の連中! 一度も練習していないんだよ」
アドス 「なんと、元日からサボリとは…」
それは感心しませんな、とギロリと睨まれた男子一同、震え上がって。
ジョミー「ち、違うってば、ぼくたち、履き方が分からなくって!」
イライザ「そこで止まったままですの?」
呆れましたわ、とイライザさん。
男子一同、ピンチですか?
2013/01/23 (Wed)
☆見えてきた光
昼食の用意が出来た、とリンクにやって来たアドス和尚とイライザさん。
誰も練習していないと聞き、睨み付けるやら呆れるやらで。
アドス 「一年の計は元旦にありと申しましてな」
イライザ「皆さん、今年はサボリが目標ですの?」
シロエ 「違います! ぼくたち、決してそんなつもりじゃ…!」
アドス 「はて、そのようにしか見えませんがのう…」
ジョミー「違うんだってば、ホントに困っているんだよ!」
下駄スケート、と口々に叫ぶ男子一同。
しかしアドス和尚とイライザさんは庫裏に戻って行きまして…。
キース 「おい、昼飯だと言っていたぞ? 行かないのか?」
ジョミー「なんか睨まれちゃったしさ…。行きにくいよね」
サム 「だよなぁ、俺たち、練習出来る見込みもねえし…」
マツカ 「キースは草履で滑れますからいいですけどね」
スウェナ「それなんだけど…。キースの草履を写真に撮ったら?」
男子一同「「「は?」」」
スウェナ「時間をかけて脱いで貰って、過程を写真で記録するのよ」
それを逆回しに再現すれば履ける筈、というのがスウェナのアイデア。
まさに天啓でございます。
シロエ 「言われてみれば…。機械の分解とかでも使う手ですね」
サム 「なんで今まで気付かねえんだよ!」
シロエ 「すみません、下駄と機械じゃ違いすぎて…」
ジョミー「とにかく撮ろうよ、キースも協力してくれるよね?」
キース 「ああ。正月早々、見捨てるわけにはいかないからな」
男子一同「「「やったー!!!」」」
草履を縛った紐を解くキース君の手元をスマホや携帯で撮影会。
男子一同、もうホクホクで。
ジョミー「これで午後の部はバッチリだよね!」
サム 「おう、トリプルアクセル頑張ろうぜ!」
ブルー 「やれやれ…。とりあえず靴と草履のサイオンは解除、と」
ぶるぅ 「そのまま行ったら滑るもんね!」
石畳が凍ってツルツルだもん、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
庫裏までの道も練習しながら往復するのが吉なのでは?
2013/01/24 (Thu)
☆法衣でアクセル
正月早々、大雪が積もった元老寺。
お昼になっても融ける気配は全くなくて、石畳もツルツルでございます。
ぶるぅ 「わぁーい、ツルツル―!」
サム 「元気だよなぁ、子供ってヤツは」
クルンクルンとジャンプにスピン、「そるじゃぁ・ぶるぅ」は御機嫌で。
ぶるぅ 「子供は風の子、元気な子だもん! お昼も食べたし!」
ブルー 「美味しかったよねえ、イライザさんの特製オムライス」
ジョミー「うんうん、卵もフワフワでさ!」
キース 「昼飯を食ったからにはキッチリ練習するんだろうな?」
ジョミー「もちろんさ! 紐の結び方も掴んだし!」
みんなで写真を撮ったんだから、とジョミー君。
リンクに戻った男子一同、ワクワクしながら下駄スケートを持ち出して。
シロエ 「最初はキース先輩ですよね、敬意を表して」
キース 「なんでそうなる?」
ジョミー「草履のお蔭で紐の結び方が分かったんだよ?」
サム 「それに草履で練習してたし、最初に行けよ」
キース 「お前たちの練習時間が減りそうだが?」
マツカ 「ちゃんと時間は計ってますから大丈夫ですよ」
キース 「そうなのか? では遠慮なくやらせて貰うぞ」
椅子に腰掛け、草履を脱いで下駄スケートを。
手際良く紐で足に固定し、キュッと結ぶとリンクに向かってスタスタと。
ジョミー「分かってしまうと簡単だったね」
シロエ 「ええ。キース先輩の滑りはどうでしょう?」
ブルー 「君たちと違って練習してたし、上手いだろうね」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ ぼくも一緒に滑ってこようっと!」
音楽スタート! とCDプレーヤーから流れる『かみほー♪』。
「そるじゃぁ・ぶるぅ」と法衣のキース君、実に見事な滑りっぷり。
ブルー 「へえ、ダブルアクセルをモノにしたのか…」
ジョミー「でもさあ、法衣でキメると笑えるよねえ」
衣の裾から足が覗くし、と笑い転げる男子たち。
防寒用の股引なんかも見えてますけど…。
笑うより前に、自分の技術を磨いた方がいいのでは?
2013/01/25 (Fri)
☆意外な落とし穴
『かみほー♪』が三回流れる間、練習していたキース君。
見る間に腕を上げ、トリプルアクセルに手が届きそうなフィニッシュで。
ブルー 「頑張った甲斐があったね、キース。続きは草履で」
キース 「よろしく頼む。俺はサイオンが使えないしな」
ブルー 「やっぱりアレもサイオン抜きかい、アクセルも?」
キース 「ああ。畑違いでもやればなんとかなるものだな」
意地でも跳ぶ、とキース君は燃えております。
下駄スケートは次の挑戦者に譲られまして。
ジョミー「じゃあ、行ってくるね!」
サム 「おう、キースに負けずにキメてくれよー!」
颯爽とリンクに飛び出して行ったジョミー君ですが…。
ジョミー「あれっ? えっ、えっ、えぇっ!?」
キース 「へっぴり腰で何をやってる? アクセルは思い切ってだな…」
こうだ、と氷を蹴って宙に舞い上がるキース君。
クルクルクルとついにキメました、三回転半!
男子一同「「「おぉっ!?」」」
キース 「やっと跳べたか…。今の調子を維持しないとな」
ジョミー「ま、待ってよ、今のにコツとかは!?」
キース 「ん? 踏み切って回るだけだが」
頑張ってくれ、とキース君は草履で練習続行。
ジョミー君の方は下駄スケートで滑るのだけが精一杯で。
ジョミー「ダメだよ、アクセルどころじゃないよ!」
シロエ 「履き方をマスターしたってダメなんですか?」
ブルー 「何を今更…。履くだけで跳べたらプロは要らない」
男子一同「「「そ、そんなぁ…」」」
ブルー 「時間一杯、努力あるのみ! スニーカーでも!」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 見本ならいくらでも跳ぶよ!」
トリプルアクセル、トリプルルッツ…と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
キース君も法衣をはためかせつつスイスイと。
サム 「とにかくやるしかねえってことだな…」
シロエ 「手遅れって気もしますけれどね…」
下駄スケートは魔法の靴ではございません。
元老寺カップの開催までにトリプルアクセルを跳べますかねえ?
2013/01/26 (Sat)
☆跳べない男子たち
下駄スケートの履き方で悩む間に勘違いをしていた男子一同。
履くだけでトリプルアクセルが跳べる魔法の靴だ、と思い込んだようで。
シロエ 「履けたら跳べるって気がしてましたよね…」
マツカ 「冷静に考えてみたら、それじゃ話が旨すぎますよね」
サム 「どーすんだよ、俺たち、全く跳べねえんだぜ!?」
ジョミー「だから目一杯、頑張るしか…! うわわわ…」
やっぱり無理、とドシャアッと転んだジョミー君。
下駄スケートでの二度目の練習、転びまくりでバトンタッチ。
サム 「あーあ、シロエも転んでやがるぜ…。俺も無理だよな」
ジョミー「もうさ、キースが優勝でいいじゃない!」
マツカ 「トリプルをモノにしていますしね…」
スウェナ「あら、優勝は会長でしょ? 四回転半が跳べるのよ」
ジョミー「そ、そうだっけ…。それじゃキースは頑張り損?」
ひたすら努力の人だけど、と指差す先ではキース君がスピンの練習中。
法衣を乱さず美しく、と片足を軸に上体を反らして回るレイバック。
シロエ 「サム先輩、次どうぞ!」
サム 「お、おう! とにかく練習してくるぜ」
無駄っぽいけどな、と氷を蹴るなり派手に転倒。
その向こうではキース君がトリプルルッツを決めております。
ジョミー「キース、あんなに上手いけどさぁ…。負けるんだよね…」
シロエ 「仕方ないですよ、会長には誰も勝てませんってば」
ブルー 「ぼくは出場しないけど?」
一同 「「「えぇっ!?」」」
ブルー 「技術が違いすぎるだろ? 模範演技しかやらないよ」
男子一同「「「そ、そんな…」」」
愕然とする男子一同。
生徒会長が出場しないとなれば、後は練習量の差で。
ジョミー「や、やばい…」
シロエ 「やる気なし認定が出ちゃいますよ!」
アドス 「皆さん、仕上がりは如何ですかな?」
間もなくですぞ、とアドス和尚とイライザさんの登場でございます。
下駄スケート元老寺カップ、いよいよ開幕。
跳べない男子たちの運命や如何に…?
2013/01/27 (Sun)
☆下駄スケートで跳べ
課題とされたトリプル・アクセル、キース君以外は跳べないのですが…。
容赦なく元老寺カップの開幕時間でございます。
ブルー 「それじゃ、元老寺カップ開幕! ぼくが最初に模範演技を」
アドス 「銀青様はエントリーなさらないので?」
ブルー 「ダントツで優勝に決まってるしね。サイオンも使うし」
キース 「四回転半が跳べるそうだぞ」
イライザ「あらあら、それは楽しみですわ」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 音楽、スタート!」
リンクに響き渡る『かみほー♪』。
下駄スケートを履いた生徒会長、それは優雅に滑っております。
アドス 「流石は銀青様ですな。実に完璧でいらっしゃる」
イライザ「今のがトリプルアクセルですわね? …多分」
ぶるぅ 「うん! 回転数はぼくが数えてあげるよ」
録画とかが無いもんね、と「そるじゃぁ・ぶるぅ」。
生徒会長はジャンプにスピンと披露しまくり、やはりフィニッシュは。
全員 「「「おぉぉっ!!!」」」
ぶるぅ 「四回転半~!」
ブルー 「はい、おしまい。みんなもトリプル、頑張ってよ?」
男子たち「「「…は、はい…」」」
アドス 「おや、皆さん、元気が無いですな。キースはともかく」
ジョミー「あ、あのぅ…。跳べなかったらどうなっちゃうわけ?」
アドス 「失敗は仕方ないでしょう。誰にでもミスはあるものですぞ」
シロエ 「よ、良かったぁ…。頑張ります!」
イライザ「落ち着いて演技して下さいね」
ブルー 「採点はアドス和尚とイライザさんに任せるよ」
素人さんだし適当でいい、と生徒会長は申しております。
ブルー 「凄いと思えば高得点! 百点満点のテスト気分で」
アドス 「承知しました。…跳べなかったら0点ですかな?」
ブルー 「宿題が出来てないのと同じだからね。…そんな感じで」
男子たち「「「えぇっ!?」」」
ブルー 「大丈夫。一回転でも出来ているなら点数はつくよ」
問題ない、と笑顔で言われましても。
一回転すらも跳べない状態なのですが…?
2013/01/28 (Mon)
☆下駄でも頑張れ
退路を断たれた男子一同、逃げ場は何処にもございません。
出場の順番をクジ引きで決められてしまい、もはや滑るしかないわけで。
マツカ 「い、行ってきます…」
サム 「頑張れよなー!」
おずおずと出掛けたマツカ君ですが、そこは流石の御曹司。
下駄スケートでも優雅な滑りにワルツなどの心得が生きております。
アドス 「ふうむ、なかなか…」
イライザ「ああっ、残念! ジャンプに失敗しましたわ!」
アドス 「それでも乱れなく滑っているのが素晴らしいわい」
落ち着いた良い演技だった、と出てきた数字は60点。
お次はシロエ君でございます。
キース 「おい、そんな結び方で大丈夫か?」
シロエ 「大丈夫です、問題ありません」
少し緩めがいいんです、と滑り始めたシロエ君。
『かみほー♪』のサビに差し掛かるなり、氷を蹴って跳びましたが。
アドス 「惜しい! 高さが足りませんでしたかな」
イライザ「それよりも紐が!」
アドス 「いかん、解けてきておるわい!」
ストップ、ストップ! と声が掛かってシロエ君は棄権ということに。
紐さえ無ければ次のジャンプは成功したかも、と40点。
サム 「も、もう俺かよ…。緊張するぜ」
アドス 「なあに、深呼吸すれば落ち着きますぞ」
御武運を、と言われたサム君ですけど、踏み切りに失敗いたしまして。
バランスを崩し、顔でリンクをズザザザザーッ! と。
アドス 「な、なんと…。あれは痛そうですなあ」
イライザ「でも頑張って滑っていますわ、棄権もせずに」
これは御褒美をあげないと、と50点がつきました。
続いてリンクに出たジョミー君、もう真っ青で。
ジョミー(や、やばい…。なんとか点を貰うには…。そうだ!)
アドス 「むむぅっ、いきなり転ぶとは…」
イライザ「右足が攣ったようですわね」
アドス 「あれで跳ぶのは無理じゃろう。滑るだけでも精一杯じゃて」
よく最後まで頑張った、とシロエ君と並んで40点ゲット。
残るはキース君ですよ~!
2013/01/29 (Tue)
☆高得点のツケ
元老寺カップ、いよいよ最後の出場者。
キース君の登場ですけど、法衣だけに下駄スケートが似合っております。
ブルー 「うん、やっぱり下駄には着物だよねえ」
キース 「その辺りから今の事態が引き起こされたと思うがな」
行ってくる、と滑り始めたキース君。
『かみほー♪』のサビに合わせて決めてきました、トリプルアクセル!
男子一同「「「わぁっ!」」」
ぶるぅ 「かみお~ん♪ 今のが三回転半!」
ブルー 「見事に課題をクリアってね」
この後は、と皆が注目する中、スピンも交えた見事な滑り。
法衣の裾が乱れるのは御愛嬌として、最後までミス無しでございます。
アドス 「うーむ…」
ブルー 「どうしたんだい? 点数が出ないようだけど?」
イライザ「身内を贔屓するのはマズイでしょう?」
ブルー 「事実なんだし問題ないだろ?」
マズイと思うならぼくの演技を百点として採点すれば、と生徒会長。
アドス和尚とイライザさんは暫し悩んだ末、70点を。
サム 「すげえな、キース! 優勝だぜ!」
キース 「俺は地道にやっただけだが…」
アドス 「ほれ、トロフィーじゃ」
身内に授与しても有難味が無いが、とアドス和尚が愚痴った所で。
ブルー 「優勝はともかく、不正な得点が気になるね」
アドス 「は?」
イライザ「70点は高すぎましたかしら?」
ブルー 「そうじゃなくって…。本来なら0点が二人いるんだよ」
アドス 「なんですと!?」
誰のことですかな、と、皆を見回すアドス和尚。
縮み上がる男子たちを他所に、生徒会長は容赦なく…。
ブルー 「紐が解けるように緩めにしたね? シロエ」
シロエ 「い、いえ、ぼくは…!」
ブルー 「ジョミー、足なんか攣っていないだろう?」
ジョミー「嘘じゃないってば、ホントに凄く痛かったんだよ!」
アドス 「な、なんと…」
最低ですな、と眉を吊り上げるアドス和尚と、顔面蒼白の男子二人と。
嘘をついたのは態度でバレバレ、姑息な手段を使ったばかりに大ピンチ?
2013/01/30 (Wed)
☆後始末は二人で
紐が解けるよう細工したシロエ君と、足が攣ったふりをしたジョミー君。
生徒会長の指摘にアドス和尚はカンカンで。
アドス 「練習不足もさることながら、誤魔化しは実に許し難いですな」
イライザ「お二人は0点でよろしいわね?」
ジョミー「…は、はい…」
シロエ 「反省してます…」
ブルー 「口ではなんとでも言えるものだよ、ここは態度で」
全員 「「「は?」」」
ブルー 「二人でテントとかを片付けるんだね、それにリンクも」
サイオンで雪を固めたリンク、放置しておくと三日間ほど融けないとか。
宿坊の営業開始に間に合うように氷を割って処分と言われても…。
ジョミー「シロエと二人で割って運ぶわけ、これ全部?」
ブルー 「うん、裏山の空地まで。途中の溝に捨てないように!」
シロエ 「あ、あのう、メチャクチャ硬そうですけど…」
ブルー 「アスファルトまで割らないように丁寧にね? 後はよろしく」
ぼくたちは優勝祝賀会だ、と生徒会長。
中華に洋風と各種おせちに寄せ鍋なんかもあるそうです。
アドス 「お正月ですしな、ひとつ豪華に」
イライザ「伊勢エビがたっぷり入りますわよ、味噌仕立てですの」
ぶるぅ 「わーい、美味しそう!」
サム 「温まりそうな鍋だよな! んじゃ、お先に!」
下駄スケートを提げたアドス和尚を先頭に庫裏へと引き揚げる面々。
ジョミー君とシロエ君はリンクに取り残されまして。
シロエ 「端の方から割りましょうか…」
ジョミー「バールと金槌じゃ、徹夜でも終わらない気がするよ…」
おまけに雪まで降ってきたし、と二人で嘆きつつコンコン、コツコツ。
裏山の空地に第一弾を運び出すのもいつになるやら分かりません。
アドス 「それでは皆さん、元老寺カップの開催を祝して!」
一同 「「「かんぱーい!!!」」」
いっただっきまーす、と響く歓声。
トロフィーを飾って豪華寄せ鍋、正直者は報われるようでございます。
一年の計は元旦にあり。今年もいい年になりますように~!
2013/01/31 (Thu)