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美味しかった食事の後は話がいきなり逆戻り。
元老寺の伝統おせちに文句をつけたジョミー君、ロックオンでございます。
ジョミー「お、おせちのことなら謝るよ! だから時効に…」
アドス 「いやいや、初詣は午後も続きますからなあ」
キース 「檀家さんも食事の御都合があるから、今が昼休みというだけで」
ジョミー「も、もしかして……まだこれから…」
ブルー 「そう、本堂の前で下足番! 坊主頭は免れたんだし問題ないよ」
ジョミー「だけど、ぼくだけ叱られ損だし! 濡れ衣だったし!」
肉まんは蕨だったんだから、と必死に叫ぶジョミー君。
座敷から見える外の雪は午前中よりも激しくなっております。
そんな天気に下足番では霜焼け、あかぎれ間違いなし。
アドス 「ふうむ…。確かに耳まで引っ張ったのはやりすぎでしたな」
ジョミー「そう思うんなら許してよ! 寒いのも坊主頭も嫌だってば!」
アドス 「しかしですな、因果応報、世の習い…とも申しまして」
キース 「そうだぞ、おふくろの心遣いを無にしやがって!」
ぶるぅ 「伝統おせちって大変なんだよ、下ごしらえも時間がかかるし」
ブルー 「食べたら一瞬の黒豆だって、煮るのはとても難しいんだ」
サム 「それをけなして時効はねえよな、今日一日は頑張っとけよ」
ジョミー「で、でも…。あそこ、本当に寒いんだよ!」
アドス 「裏山から吹き下ろしが来ますからなあ…。しかし…」
どうしたものか、と考え込んでいるアドス和尚。
ジョミー君を無罪放免とするか、午後も引き続き下足番を務めさせるのか。
そこへ…。
イライザ「差し出がましいようですけれど、未来に貯金は如何でしょう?」
全員 「「「未来に貯金?」」」
イライザ「お昼に作って下さいました、あのお料理。使えますわよ」
アドス 「使う…とな? 何に使うんじゃ?」
イライザ「元老寺の看板料理ですわ。レシピも教えて頂きましたし」
きっと役立つと思いますの、とイライザさん。
未来に貯金と言っていますが、それってどういう意味なのかな?
本物の肉料理もかくやという外見と味わいが凄い、中華の本場の精進料理。
肉まん事件で激怒していたアドス和尚も大満足です。
アドス 「いやあ、実に素晴らしいものを頂きました。御馳走様です」
ブルー 「凄かっただろう? 普茶料理なんて目じゃないよね」
アドス 「銀青様も御修行中には、あれを召し上がっておられたので?」
ブルー 「まさか。あんなの、この国のお寺じゃ御法度だってば」
肉が食べたくなったら高飛び、と生徒会長は澄ましております。
お坊さんの世界で高飛びと言えば、修行中にお寺を抜け出すことで…。
アドス 「銀青様ほどの御方が高飛びを? 信じられませんなあ…」
ブルー 「ぼくだって最初から高僧じゃないさ。下積み時代もあるんだよ」
キース 「あんた、当時の璃慕恩院のトップの直弟子じゃなかったか?」
ブルー 「そりゃそうだけどさ。仲間との付き合いも大事でね」
アドス 「朋輩は確かに大切ですな。後々、世話になることもございますし」
ブルー 「法類が友達だったりすると心強いよね、色々と」
シロエ 「なんですか、それ?」
キース 「法類か? 平たく言えば親戚付き合いしている寺だな」
ジョミー「親戚…じゃないわけ?」
アドス 「もちろん親戚もおりますぞ。それとは別に同じ宗派の寺ですな」
法類には二つの系統があるのだそうでございます。
住職の師弟、血縁のお寺が身附法類。
同じ宗派で御近所同士、何かと言えば助け合うのが寺附法類。
ジョミー「ミツキホウルイにテラツキホウルイ…? よく分からないや」
アドス 「なあに、追い追い分かって参りますとも。日々精進ですな」
ジョミー「え?」
アドス 「肉まんの件はお詫び致しますが、その前を思い出しまして」
ジョミー「何だっけ…?」
アドス 「そもそもはジョミー殿が伝統おせちに…」
ジョミー「ちょ、ちょっと待って! それって今更言いっこ無しだし!」
時効だよ、と絶叫しているジョミー君。
蒸し返された話の行方はいったいどうなる…?
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中華料理の本場のお坊さんが考えたという精進料理。
元老寺の座敷の大きな机に、それがズラリと並んでおります。
ブルー 「ほら、これなんかキノコなんだよ。見た目はイカだけどね」
ぶるぅ 「セロリと一緒に炒めてみたよ! 熱い内に食べてね」
アドス 「そ、そうでした。昼御飯用でございましたな…」
ブルー 「暖房が効いてる部屋で良かったよね。とにかく食べよう」
話の続きは食べながら…、と生徒会長。
肉まんで濡れ衣を着せられてしまったジョミー君の件も、とりあえず保留。
ブルー 「修行中じゃないし、食前の作法は省略で。いただきます」
全員 「「「いただきます」」」
料理を作った「そるじゃぁ・ぶるぅ」も両手を合わせて「いただきます」。
はてさて、気になる素材とお味の方は…?
サム 「すげえや、ホントにカニ味噌だ! 味は違うと思ったのに」
キース 「カニ味噌だな…。これの材料は何なんだ?」
ぶるぅ 「えっとね、お豆腐と塩漬け卵の黄身とニンジンだよ」
スウェナ「調味料に秘密があるのかしら?」
ぶるぅ 「ううん、中華の調味料。合わせ方が大事なの!」
シロエ 「この焼き鴨が絶品ですよね。本物の鴨に見えますよ」
マツカ 「皮つきの鴨を焼きました、って感じです。これが湯葉だなんて…」
キース 「湯葉なのか?」
アドス 「精進料理に湯葉は定番ですが…。こんな使い方はしませんな」
ブルー 「だよね。普茶料理には豆腐と山芋のウナギの蒲焼があるけどさ」
ジョミー「ウナギの蒲焼? それも凄いね」
アドス 「いやいや、この料理には敵いませんぞ。焼き豚も実に美味い」
ブルー 「焼き豚と中華ハムは豆腐が材料。干し豆腐だけどね」
ジョミー「それじゃ、こっちの鶏肉は? オレンジの中に詰めてあるヤツ」
ぶるぅ 「筍だよ? 柔らかく煮て、それから潰して炒めるの!」
キース 「これが筍…。信じられんな」
見た目も味も大満足の精進料理。
肉まん騒動はひとまず忘れて、楽しく食べるのが一番ですよね!
蕨粉で作られたという問題の肉まん。普茶料理と呼ぶ精進料理らしいです。
生徒会長曰く、普茶料理のルーツの中華な国では更に凄いそうで…。
ブルー 「なんたって五千年の歴史だからね。そう簡単に諦めないさ」
ジョミー「諦めるって、何を?」
ブルー 「食べたいという食への欲求! お坊さんでも肉は食べたい」
アドス 「普茶料理はその発想から出来た料理だと聞きますなあ…」
ブルー 「でも、普茶料理はこの国の国民性に合わせてアレンジ済みだよ」
ジョミー「アレンジ済み?」
ブルー 「うん。せいぜい肉まん程度かな。ウナギとかもあるけど」
キース 「それだけあれば充分なような…。が、この料理は違うようだな」
テーブルに並んだ中華料理はお肉満載でございます。
災いを呼んだ肉まんの他にも色々と…。
ブルー 「この国じゃ、坊主が肉なんて…って発想だよね。厳格なんだ」
アドス 「もっての他でございますからな、先ほどの肉まんもそうですが」
ジョミー「あれは蕨だったじゃない! …肉まんそっくりの味だったけど」
アドス 「間違えられるほどの味と見かけがいかんのです!」
坊主は黙って精進料理、とアドス和尚は主張しておりますが。
ブルー 「その考えが普茶料理にも入っているんだよ。もどきの限界」
シロエ 「限界……ですか?」
ブルー 「そう、限界。知らない人が見て、肉だと思うようならアウトさ」
キース 「ここにある料理は肉だらけだぞ。これが本場の底力か?」
ブルー 「本場のお坊さんたちの執念と努力の賜物かな。味もそっくり」
アドス 「本当に精進料理だと仰るので? イライザが証人のようですが」
イライザ「お肉は使ってらっしゃいませんわ。でも本物にそっくりですの」
焼き豚に焼き鴨、中華ハム。
鶏肉と野菜の炒め物を飾り切りしたオレンジの器に詰めたもの。
深めのお皿にたっぷり盛られ、スプーンが添えられたカニ味噌なんかも…。
見た目は普通に中華料理のオンパレードです。
これが本場の精進料理…?
ジョミー君に坊主頭の危機をもたらした肉まんは、もどき料理の精進料理。
精進料理はポピュラーですけど、もどき料理って何なのでしょう?
蕨が豚肉そっくりに化けるんですから、ホントに凄い料理ですよね。
ジョミー「ぼく、本物の肉まんだと思ってたもの。もどき料理って何さ?」
ブルー 「アドス和尚は知ってたようだけど、普茶料理」
ジョミー「ふちゃ…料理?」
サム 「俺も名前は知らなかったぜ。すげえなぁ、って見ていただけで」
キース 「普茶料理という名は聞いてはいるが…。食ったことはないな」
ブルー 「それほどメジャーな料理じゃないしね。食べる機会は少ないかな」
アドス 「アルテメシアには普茶料理のお寺はありませんしなあ…」
ブルー 「隣の市まで行かないとね。しかも郊外のド田舎だ」
シロエ 「観光地じゃないってことですか?」
ブルー 「うん。本場のお寺そっくりのお堂とかもあるけど、マイナーだよ」
どうやらローカルなお寺みたいです。
本場のお寺にそっくりってことは、中華風な建築なんでしょうけど。
ブルー 「普茶料理のお寺は他の地方にも幾つかあるんだ。何処も中華風」
マツカ 「それで中華な精進料理になるわけですね」
ブルー 「そういうこと。そして普茶料理の神髄がもどき料理さ」
ぶるぅ 「本物そっくりに作るんだよ。お肉がダメでもお肉そっくりに!」
ブルー 「お坊さんは肉や魚がダメだろう? でも食べたいと思うよねえ」
アドス 「ううむ…。そういうものですかな?」
ブルー 「君だって普段は食べるじゃないか。修行中は当然、禁止だけども」
キース 「修行中に肉など言語道断! 御本尊様の前でも同じだ」
ブルー 「でも中華料理の本場の国では、そういう発想じゃないんだなぁ…」
食べたいものは食べたいんだよ、と生徒会長。
中華料理の本場と言えばグルメの国でございます。
四足の物はテーブル以外、二本足の物も親以外は食べると言われるお国柄。
お坊さんでも修行中に肉を食べるとか…?
